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旧優生保護法めぐる裁判で賠償命ずる判決 県内の反応は

2024年7月5日 20:12
旧優生保護法めぐる裁判で賠償命ずる判決 県内の反応は

かつての優生保護法の下、不妊手術を強制された人たちが国に損害賠償を求めた裁判で、最高裁大法廷は3日、この法律の立法行為そのものが憲法違反として国に賠償を命じる判決を言い渡しました。この歴史的判決に、富山県内で被害者救済を訴えてきた人たちからは安堵の声が聞かれました。

河上千鶴子さん「判決聞いて、除斥期間を認めないと言うから、良かった、うれしいと思いました」
四十物和雄さん「これをきっかけに(新たな被害者の)声が出てくれば、もう少し(社会が)良くなるんかな」

富山市の河上千鶴子さん(71)と夫の四十物和雄さん(72)です。幼いころから脳性まひがあった千鶴子さんは、和雄さんと共に県内でも強制不妊をさせられた被害者がいないか実態解明を県に求めるなどしてきました。

旧優生保護法は「不良な子孫の出生を防止する」ことを目的とし、障害などを理由に本人の同意がなくとも不妊や中絶の手術を行うことを認めた法律で、28年前までこの国に存在していました。

全国で分かっているだけでおよそ2万5千人に強制不妊手術が行われたとみられています。

2018年に被害者が初めて提訴してから6年。3日に最高裁大法廷は旧優生保護法を違憲とする判決を下しました。

裁判では、国が主張してきた不法行為から20年で損害賠償を求める権利が消える「除斥期間」を適用するかどうかが最大の争点でした。最高裁は「著しく正義・公平の理念に反する」として、これを認めませんでした。

全国で裁判が始まったころ、千鶴子さんは「自分も被害者になっていたかも しれない」と打ち明けました。健常者の和雄さんと結婚し妊娠。診察に行った産婦人科で医師は信じがたい言葉を放ちました。

千鶴子さん「どうせ生まれてもいい子生まれるわけないと言われて」
和雄さん「(医者が)診察室から 処置室かなんかそういう所へ連れて行こうとしていた。おめでたという感じじゃない」
千鶴子さん「(医者から)逃げて…」

医者は私たちの子をおろそうとしたのではないか。千鶴子さんの脳性まひはこの法律の対象外でしたが、不良な子孫は排除すべきという「優生思想」が社会に根付いていたことを実感したといいます。

その後、別の病院で無事、男の子を産んだ千鶴子さんは、周囲の協力を得ながら子育てをし、孫にも恵まれました。

千鶴子さん「周りがフォローしてくれたら生活ができるんだから、そういう世の中になっていけばいい」

「戦後最大の人権侵害」を断罪する歴史的司法判断に、自身の心の変化を感じた人がいます。富山市の中村薫さん(66)です。

中村薫さん「あってはならんことだから、もし何か言わんなん事があれば、ちょっとずつ苦しくない程度に発言していこうかなと」

脳性まひのある中村さんは、8歳から石川県の障害児施設に入所していました。思春期になり、生理が始まると職員から執拗に責め立てられたといいます。

中村薫さん「介助のときにやっぱり“赤ん坊も産めないのにこんなもの(生理は)いらない”と言われたし」

耐えかねた末、中村さんは親の反対を押し切って「子宮を摘出してほしい」と申し出、手術を受けました。

中村薫さん「子どもを産めるとは自分でも思っておらんかったし、今でいう洗脳だね、きっと」

自分の人生をこれからも自分らしく生きたい。趣味で描いた花の画を見せてくれた中村さん。自身の経験をもとに、差別や偏見を生まない社会には教育が大切だと話します。

中村薫さん「障害があったらかわいそう、じゃなくて、同じ人間なんだよと言うことを、小さい時から一緒の場で学び合っとったら、そんなことは思わないと思うので、そういう世の中になったらなって思います」

河上千鶴子さんは、被害にあっていても訴えることができなかった人が他にもいる、国には責任を取ってほしいと話していました。

判決を受けて政府は原告らに直接謝罪し、問題解決に向け新たな補償の仕組みを検討する方針を説明しました。

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