輪島高校の卒業式は100キロ離れた金沢で…母からのサプライズ演奏で旅立ちの日
きょう、地震で被災した輪島高校の卒業式が100キロ以上離れた金沢市で行われました。その卒業式の裏には、あるドラマがありました。
金沢市内のスタジオでサックスの練習をするこの女性は田中一美さん。きょう、輪島高校の卒業式に出席する琉惟さんの母親です。
輪島市で被災した、田中さん親子は現在、2次避難先の金沢市で生活を送っています。
そんな田中さんが、この日練習していたのが”輪高讃歌”。高校に代々伝わる応援歌で輪島高校の生徒にとっては特別な曲です。
この曲を新たな一歩を踏み出す息子たちに向けて、卒業式でサプライズ演奏しようと必死に練習してきました。
田中さん :
「みんなの心に響くといいな」
「どうかな反応が少し心配」
「みんなの未来が明るくなるように演奏したい」
一方、けさ輪島市内のパン屋には、商品を選ぶ女子高生の姿が。
田屋里桜さん :
「花束買って渡そうと思ってたけど、できないので」
「状況にあっているなと思いました」
その商品は、花束を持つクマがデザインされたかわいいクッキー。
輪島高校の近くでパン屋を営む古川さんがきょう、卒業式を迎える3年生たちをなんとか笑顔にしたいと考案したものです。
輪島市では今も断水が続く影響で市内の花屋はほとんど営業していません。
また、物流も滞っているため、市外から花束を手に入れることも困難な状況です。
それを知った古川さんが花束の代わりになればとつくったのがこのクッキー。
花束を持つクマの横には、卒業生に向けた言葉も添えました。
古川まゆみさん:
「きのう夜遅くまで、姉とつくったんですけど」
「卒業生のもとに届くと思うと、本当にうれしい」
田屋里桜さん
「最後にホームルームがあると思うので、その時に渡そうと思っています」
そしていよいよ始まった、輪島高校の卒業式。
この卒業式が行われたのは、輪島市から100キロ以上離れた県立音楽堂です。
現在、輪島高校の校舎は、多くの避難者たちが集まる避難所として使われているため、卒業式はおろか、授業もできない状況。
今も各地で避難生活を送る生徒もいるなか、きょうは104人が門出の式に出席しました。
思い出の校舎での卒業式とはならなかったものの卒業生の顔はみな、しっかり前を向いていました。
卒業式も終盤に差し掛かったころ会場には、緊張の面持ちで準備をする、田中さんの姿が・・そして、ついに舞台に上がります。
一美さんの気持ちのこもった演奏を聴いた、息子の琉惟さんは
「曲を最後にやるのは知っていたけど、まさか母がいるとは」
「本当に感動しました」
「後はこの子を応援するだけです」
そして式を終えた会場にはけさ、輪島市で花束のクッキーを選んでいた田屋さんの姿もありました。
様々な困難に直面しながらも、たくさんの思いがつまった卒業式となりました。