「言葉を最後まで聞いてほしい…」 吃音に悩んだ高校生 カフェでの接客に挑戦
言いたいことがあっても言葉がなかなか出てこない吃音。2月、その当事者たちが接客するカフェが金沢市内に1日限りでオープンしました。カフェに参加した高校生の思いを取材しました。
「えっと、こちらのお・・お好きな席にお座りください」
「し・・失礼します。ご注文はここの中で選んでくれると」
ここは、少しだけ、注文に時間がかかるカフェ。
その理由は…
北川 白朋 さん:
「注文に時間がかかるカフェのスタッフは全員、吃音者です」
吃音のあるスタッフが接客するカフェなんです。
吃音とは、言葉がなめらかに出てこない発話障害の一つで、国内には約120万人、100人に1人いるといわれています。
今回、北川さんは、ユーチューブで全国で開かれているこのカフェが石川県で初めてオープンすると知り、自ら応募しました。
北川 白朋 さん:
「自信がなくていろんなことを避けてしまったので、やっぱり自分に自信を付けたいというか」
北川さんが、自分のしゃべり方に違和感を覚えたのは小学生2年生の頃。言葉が詰まることで周りからからかわれ、学校に行きたくない時期が長く続いたと話します。
北川 白朋 さん:
「号令で『これで国語の授業を終わります』が全く言えなくて、周りに笑われて、先生も笑っていて、そのとき…味方がいない、頼る人がいないというかそういう感じで」
吃音があることを隠そうと、話すのを止めた日々。
北川 白朋 さん:
「夜になるとなんか泣いちゃって、そのいじめを思い返してしまって、すごいきつかったですね」
そうした状況に変化があったのは高校に入学してからでした。
クラスメート:
「しゃべるまで待ってほしい人おるやん。北川どうなん?」
北川 白朋 さん:
「俺は、どもっとったら待っといてほしい派なんやけど」
なんでも打ち明けられる友人ができたのです。
クラスメート:
「最初、私そうやってなんか先に察してそして言葉を出してたんですけど、なんかやっぱり待ってほしいっていう人もいるし、私はもう普通に自然と話してますね」
北川 白朋 さん:
「みんながいてくれたから、みんなが自分の話を聞いてくれたからっていうのがあるんで、本当に感謝しかないですね」
体育祭の選手宣誓や、文化祭では、自主制作のドラマで主人公を熱演。
そして今は…
北川 白朋 さん:
「いらっしゃいませ。1284円になります。3番でお願いします。ありがとうございます」
より多くの人と話すことに慣れようとアルバイトも始めました。
そんな北川さん。次に挑戦しようと思ったのが…
吃音者がスタッフを務めるお店「注文に時間がかかるカフェ」で接客することでした。主催するのは自身も吃音を持つ奥村安莉沙さんです。
注文に時間がかかるカフェ 発起人・奥村 安莉沙 さん:
「やっぱり私たち吃音当事者って、やりたいことがあっても、でもあなたは吃音だから無理じゃない?とか言われることが多くて、吃音でもやりたいことに挑戦できるって思ってほしいなって思ってます」
1日限定のカフェがオープンするこの日。
「失礼しますって言ったほうがいいですか」
「どっちでも」
「失礼します。ホットコーヒーです」
飲食店での接客は初めてとあって、緊張の面持ちでアドバイスを受ける北川さん。
「どういった方がいいですか?」
「最初になんか吃音クイズしますか?とか」
「吃音クイズしませんか?」
「します」
「ありがとうございます」
すると奥村さんからこんな提案が…
奥村 安莉沙 さん:
「エプロンにシールを貼ります。自分のしてほしいこと、やってほしいことをペンで書いてください」
北川さんが伝えたかったのは…
北川 白朋 さん:
「最後まで聞いてくれるとうれしいですって書きました。楽しみと緊張がすごいんですけど、自分らしく接客したいと思います」
できればじっくりと話を聞いてほしい。そして、何よりも自分らしくありたいー。
いよいよカフェがオープンしました。
「言葉がうまく出ませんが、他の人と同じように接してもらえると嬉しいです」
「失礼します。ご注文こちらになるんで。もしお決まりでしたら教えてほしいです」
「オレンジジュースです。失礼します」
「吃音のクイズみたいなのがあるんですけど、やります?」
「やります」
「ありがとうございます。吃音がある人が話すのに時間がかかっている。どうしますか」
「話し終わるのを待つ」
「正解です。吃音があっても話を聞いてもらいたいです」
すると…
「プレイリストなんかで流して、でも大体、ミセス(グリーン・アップル)」
「あ~ ミセスですよね。ミセスだとどの曲が好きですか?」
「ソランジ好きです」
「僕も好きですよ。ソランジが好きです」
会話も弾むようになってきました。
北川 白朋 さん:
「改めて人と話すのが好きだなって、今までは吃音だからやめることがあったので、それは自分らしさじゃないと思うので。吃音に負けずに乗り越えて、やりたい道を諦めずに進んでいけたらいいなと思います」
もっといろんな言葉を交わしたい。もっと吃音について、知ってほしい。そこには、自分らしくありたいと願う北川さんの姿がありました。