「私達は生きてるよ」 存続への一歩…出張輪島朝市 開催までの2か月に密着
地震による火災で甚大な被害を受けた輪島朝市。
地元で失われたにぎやかな光景が、この週末、金沢市内で復活しました。
「朝市の灯を消さないために」
地震から2か月あまり奮闘し続ける姿を追いました。
1000年以上の歴史を持つ輪島朝市。
およそ300メートルの通りには長年、活気あふれる声が響き渡っていました。
南谷さん:
「これが先月買ったばかりの真空の機械なんですけど、これが倒れて壊れて使い物にならなくなりました」
「発送待ちの商品がこの冷蔵庫の中にあったんですけど、それが全部落ちてしまってだめになりましたね」
「再開のめどはまだ全く立っていません」
「何年かかるか想像もつかないですね」
長女の美有さんが将来、跡継ぎとなることを決断し、親子での経営を始めた矢先の地震でした。
加工場を支えていた地盤も崩落し、祖母の代から受け継いできたいしるなどの調味料も、ほとんどを失いました。
南谷さん:
「つらいですよね、つらすぎますよね。本当に苦労して作り上げてきたものなので」
「一緒に作ってくれた家族にも申し訳ないし、心待ちにしてくれたお客さんもたくさんいるので…ちょっとなんて言っていいかわからん」
あの地震から2か月。
朝市組合のメンバーたちが金沢市内に集まっていました。
その中には、南谷さんの姿も。
新たに計画するのは、輪島から100キロ以上離れた金沢市の金石港で露店を出す、「出張輪島朝市」の開催です。
この日は、1回目の開催に向け地元の関係者や場所を提供してくれる県漁協金沢支所なども集まって話し合いました。
しかし、今回出店するのは、組合員の半数にも満たない30店ほど。
高齢で金沢まで来られない人や、商品が被災した人など、出店したくてもできない人が多くいるのが現状です。
南谷さん:
「本当はやっぱり輪島のあの場所で輪島朝市をやりたいっていう思いが強いですけど、でもやっぱりみんな生活していかなくてはいけないというところで」
「商売をするっていう気になれてない人も多い。私たちが先に、皆さんがいつでも来れる場所、商売できる場所をまず作っておいていって」
「私たちは生きているよっていうのを見てもらえる場になればなって思います」
今月上旬。
金石港に加工場が完成し、本格的な準備が始まりました。
輪島港は隆起が激しくまだ漁に出られないため、販売する商品は、金沢産が中心ですが、それでも…
二木さん:
「地震で道具とか全部燃えてしまったからもう朝市はダメかなと思っていたがお客さんとの対面販売が楽しみ」
翌週。
南谷さん親子も準備を始めました。
(Q.いま作業何日目ですか?)
「1日目。初めての作業」
(Q.間に合うんですか?)
「ねー(笑)きょうと明日はここ使える」
出店する人全員が1つの加工場で作業するため譲りあいながらの作業。
急ピッチで進めます。
解凍していくのは、震災を免れた輪島産の真イカです。
南谷さん:
「去年、年末にとれた輪島産の真イカ」
「みなさん停電する中、この商品を預けとった冷凍室が停電しなかったもんで本当に奇跡。皆さん商品がなくなってしまった中で唯一生き残ってた商品なんで結構貴重ですね。」
親子3人での作業。
こうして仕事ができるのは、大晦日以来です。
輪島のイカと和えるのは、地震後に作られた能登の塩。
地元の思いが詰まった、南谷さん自慢の看板商品、塩辛を作ります。
南谷さん:
「お客さんの待ってるねっていう声がなかったら、多分できてなかったかもしれない」
「あと、美有が継ぐって決めたから美有が継ぐときに一番いい姿で継がせたいって思うし、そのためには今まで以上に一生懸命やらんと追いつかないなっていうのがあります」
そして、いよいよ当日。
出店する人も、お客さんも、会いたかった人がたくさんです。
南谷さんも慌ただしく準備を進めています。
南谷さん:
「お客さんの顔見るのが一番楽しみです」
「楽しみです。きょうどんなんなるのか」
あいにくの雨となりましたが、それでも県内外から多くの人が訪れました。
客:
「ぼく朝市小学3年生くらいの時に初めて行ったんかな、それからほぼ毎年夏には欠かさず行ってたので」
「こんなんでも支援になればと思って」
「よく輪島の朝市で買い物してて」
「やっぱり顔見たらうれしいですよね。安心しました」
「うれしいです」
南谷さん:
「3つ買ったら2000円やよー!ははは」
「ねーうれしい」
「みなさんから生きとったかって元気な顔見られてよかったって泣いてくださる方いっぱいいて、私も何回も泣いてしまった」
「やっぱり人生って人と人なんかなって思いますね」
「必ず輪島に帰って、また出張ではなく輪島朝市をできる日を夢見ながらこうやって頑張っていきたいと思います」
輪島朝市の存続へ一歩を踏み出した朝市組合のメンバーたち。
いつの日か、また、大好きな地元に全員がそろい、元気な声が響き渡りますように。
そう願いながら、この先も、それぞれ歩みを進めていきます。