「ベントス」って何?准教授の調査に同行 海の変化に気づくヒント
4月中旬、日本三景・松島湾に広がる干潟を訪れたのは石巻専修大学の阿部博和准教授。
阿部さんが調査・研究するのは「ベントス」。
「ベントス」とは水の底で暮らす生き物のこと。その調査に同行させてもらった。
石巻専修大学 阿部博和准教授
「珍しい奴ですねウミカニムシ撮れますか?レアなやつです」
早速、出会えたのは北海道や宮城などでのみ確認されているという「ウミカニムシ」
海岸に生息する珍しいカニムシで松島湾は貴重な生息地なんだそう。
青木秀尚アナウンサー
「カニみたいなハサミ2つありますよね」
石巻専修大学 阿部博和准教授
「この辺…希少な巻貝小さいの分かりますかカワザンショウの仲間」
わずか数ミリの「カワザンショウ」の仲間。
護岸工事による環境変化などで全国的に生息地が減少していて、宮城県の絶滅危惧種・レッドリストにも多くの種が掲載されている.
研究室の学生たちも干潟の泥につかまりながら、それぞれ調査対象のベントスを探していた。
カニ類もベントスの1つだ。
大学院修士課程1年 小田晴翔さん
「クラブハンター調査の時はこの気持ちでどんなカニでも捕まえてやる。この研究室に入ってベントスという底生動物の世界と出会ってどんどんカニのことを知っていったら魅了されてカニにどっぷりはまっていった」
日中に潮が引く4月からの時期はフィールド調査に最も適した時期。
阿部さんは学生時代からゴカイの研究に没頭してきた。
それがこちら。伊豆大島で発見したゴカイ類の新種。
ホヤから出ている〝ウニョウニョ〟これが新種で「ホヤノポリドラ」と名付けた。
ホヤ類の殻に穴を掘りその中に生息していてホヤ類の「ろ過」機能に伴う水の流れを利用して餌を取っていることをゴカイ類として世界で初めて報告した。
石巻専修大学 阿部博和准教授
「こういう生き物自体がいることが自然の豊かさの現れ。こういった生き物が住める環境を残していくことが大事」
1985年、仙台市生まれ。小さい頃から水辺にいる生き物に熱中していた。
石巻専修大学 阿部博和准教授
「もともと変な生き物が好きという所からスタートしている。海底にすごくたくさん変な生き物がいるのでそこに興味を持って調べれば調べるほど変な生き物が出てくる」
大学では博士課程まで10年間ベントスなどを研究し、2年前から石巻専修大学で自らの研究室を持った。
私たちがよく知っている〝おなじみのエビ〟も実はベントスの1つで、そこには海の変化に気づくヒントが隠されているという。
石巻専修大学 阿部博和准教授
「ウシエビスーパーではブラックタイガーもともと宮城からは全く知られてなかったんですけど南に住んでいるエビなのでどんどんと北上してきているんじゃないか」
Q どういうことが考えられる?
「今年・去年ぐらいから海水温の 上昇が急激に上がっていまして黒潮に乗って一緒に入ってきて いる可能性があるかなと思う」
先ほどのウミカニムシやカワザンショウなどは生息できる環境の範囲が狭いベントスの希少種。
その数が減ったり、元の場所からいなくなることは生態系が崩れ始めていることの合図になると考えられている。
海の変化を知らせるベントスという存在。
環境を守るためにはこのベントスへの関心を高めることが近道になるのではないかと阿部さんは考えている。
石巻専修大学 阿部博和准教授
「ここにこんな珍しい生き物がいるんだとかこの生き物こんな面白い生き方しているとかそういうことを知ってもらうことで自然に目が向くようになって回り回って自然や環境の保全につながっていくと思う。自然の価値を見出していろんな人に面白いと思ってもらえるようなここの自然大事なんだなと思ってもらえるような研究をしていきたい」