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南海トラフ地震臨時情報に危険な暑さ…異例のよさこいを振り返って見えた今後の課題とは【高知】

2024年8月13日 19:06
南海トラフ地震臨時情報に危険な暑さ…異例のよさこいを振り返って見えた今後の課題とは【高知】
第71回よさこい祭りは、8月12日の後夜祭で4日間の日程を無事終えました。
南海トラフ地震の臨時情報、熱中症警戒アラートが出る中での異例の開催を振り返ります。

よさこい祭り開幕の前日、8月8日の午後5時前、日向灘を震源とするマグニチュード7・1の地震がありました。
宮崎県日南市で震度6弱、宮崎市などで震度5強を観測したほか、高知県内でも宿毛市で震度3、黒潮町・高知市・安芸市・南国市で震度2を観測しました。

この地震を受けて気象庁は会見を開き、南海トラフ地震が起きる可能性が普段よりも高まっているとして臨時情報を発表しました。

■気象庁会見
「南海トラフ地震臨時情報『巨大地震注意』を発表している。南海トラフ地震の想定震源域では新たな大規模地震の発生の可能性が平常時と比べて相対的に高まっていると考えられます」

もし、大規模地震が発生すると、 強い揺れや高い津波を生じると注意を呼びかけました。
これを受けて翌9日、よさこい祭り振興会は急遽、臨時会を開いて対応を協議。安全に配慮したうえで予定通りの開催を決めました。

競演場の中でも津波発生時に浸水被害が予想されているのが梅ノ辻競演場です。本祭初日の10日の朝、運営側の商店街メンバーなど20人以上が集まり、対応を協議していました。

■服部一浩代表
「踊り子チーム関係は全部筆山へ逃げてもらうようにしようと思う。(避難経路の)入口まで5~10分かかったとしても、一番上まで上がるにしても15分くらいで上がれるので歩いてでも十分余裕がある」

梅ノ辻競演場付近の津波避難場所は潮江中学校と土佐中学高校ですが、南海トラフ地震が発生した場合、住民などが避難するため、収容人数に限界があります。

このため、踊り子は筆山へ逃げてもらうことにし、本祭開始前に運営側のメンバーが登り口までのルートを実際に歩いて確認しました。

■経路確認メンバー
「1メートル沈んで(地盤沈下)、10メートルの津波、一番最悪の場合」

競演場に近い登り口から順に頂上広場までそれぞれの登り口からの経路を確認しました。

■服部一浩代表
「浸水地域になってるので、まず津波避難が第一ということで避難用の地図にどこへ逃げるかということを書いている。今回よさこいが重なってしまったもので、県外の方とか地域外の方はなかなか(避難先が)分からないと思うので周知徹底していきたい」

津波の到達予測時間は40分から60分で、競演場から歩いてでも十分間に合うことが共有されました。

そして正午過ぎ、梅ノ辻では踊り初めが開始。南海トラフ地震の臨時情報が発表される中での異例の本祭がスタートしました。梅ノ辻競演場の踊り初めは地元・梅ノ辻の町内会チーム「梅乃連」です。

コロナ禍を経て5年ぶりの参加で、チームのテーマは「再宴」です。
子どもから大人まで86人の踊り子とスタッフが地元・梅ノ辻で艶やかな踊りを披露しました。

■踊り子
「めっちゃ楽しかった。久しぶりなんですけど、やっぱよさこい最高だなって感じ」
「1発目やっぱり地元の梅ノ辻の地域の人たちが温かく送り出してくれるので。暑い中、仕事の合間をぬって会場や地方車とか準備してくれたからこそ、梅乃連が踊ることができてるので、そこに対する感謝を忘れずに2日間がんばっていきたいと思う」

梅乃連の踊りを地元の人たちも応援していました。

■住民
「お父さんお母さん、子供さんとか三世代で踊ったり、うちも娘が小さい時ここで踊った。(梅乃連復活は)すごくうれしい。鳥肌が出る」

日向灘を震源とする地震から3日が経った本祭2日目。
華やかな舞が競演場を魅了する一方で、運営側は巨大地震に備えて受付にきたチームの代表に地図を渡して、避難経路を説明していました。

■チームの代表
「本祭2日目は梅ノ辻と予定してたので、心配はあるけど大丈夫かなと。地理はだいたい知ってるとこだし、踊り子を誘導することは可能」

運営側の服部委員長
「1日目何とか地震が起こらずほっとしているが、2日目もこれからあるので気を引き締めてスタッフ一同避難所のルートも確認しながら、まだまだがんばって見守っていきたいと思う」

南海トラフ地震臨時情報発表中の異例の開催となった今年のよさこい。運営側が懸念していた大きな地震は本祭期間中、発生せず、梅ノ辻競演場ではのべ187チームが無事、踊りを披露することができました。

一方で、巨大地震への注意が発表されたことで 今年出場を予定していた188チームのうち4チームが出場を見送りました。

その1つ、愛知と大阪のメンバー60人で構成する「鳴子連 梵天」は踊り子やスタッフのリスクを考え、今回、チームとしての出場を見合わせました。
しかし、県内出身のメンバーなど30人が高知入りし、個人の判断で市民憲章よさこい踊り子隊として参加しました。

また、東京から参加した中央大学のよさこいチーム「一期一笑」は、参加を個人の判断に任せることにしたところ、総勢115人のうち参加は60人程度と半減しました。宿泊していたのが海の近い場所だったため、学生たちは自主的に高台まで避難訓練を行い、祭りに臨んだということです。

■踊り子
「古い宿だったので、地震が起きたり津波が来たら、つぶれたり流される心配があったので避難訓練を山に登る訓練をした」

それぞれが南海トラフ地震を念頭において臨んだよさこい祭り。一方、今年は他にもさまざまな課題が浮き彫りとなりました。

今年のよさこい期間中は連日、気象庁から熱中症警戒アラートが発表され、危険な暑さの中での開催となりました。開催の時間帯について濵田高知県知事は、今後検討の余地を示唆しました。

■濵田高知知事
「いろんな世間の流れであったり熱中症の危険性の増大であったり、色んな状況を踏まえて将来的には検討されるべき選択肢」

迎えた本祭初日。祭りは通常通り、昼から開催、危険な暑さの中で行われました。

■井手上キャスター
「午後2時すぎの升形競演場です。容赦なく日差しが降り注ぐ中、それに負けないくらい熱い演舞が続いています。ただ手元の気温計では42度を超えました」

升形商店街ではかき氷を買い求める人の姿が。
追手筋本部競演場と高知城演舞場の間にある丸ノ内緑地では踊り子などが日陰で休む姿がみられました。

この場所には毎年、大型のミストが設置されていて踊り子や観光客などが途切れることなく涼みにきていました。

よさこい祭り期間中は熱中症患者が増加するため高知市消防局では、毎年本署・出張所に加えて総合あんしんセンターにある消防局でも救急隊を編成し、いつでも出動できるよう備えています。

■救急課・山本義仁さん
「しっかり対応させていただきたいと思う。(よさこい)期間中高知市におられる方が不安なく過ごせるように助けになればいいかなと思う」

行政の体制に加えて、それぞれの競演場も工夫を凝らしていました。
梅ノ辻競演場では町内会の女性部が今年も大きな梅干を手作りし、踊り子に振るまいました。

追手筋では有料のパラソル席も。家族連れなどが利用していました。

炎天下、熱中症警戒アラートが発表された厳しい環境下でも、踊り子たちは沿道の観客に笑顔を振りまきながら4日間、演舞を披露しました。高知市消防局によりますと、13日午前11時現在、よさこい期間中に踊り子や観客など熱中症の疑いで搬送された人は25人に上っています。

今後も昼からの開催を続けるのか、それとも気温の上がる時間帯を避けるのか、検討が必要なほどに環境は変化しています。

南海トラフ地震の臨時情報に熱中症警戒アラート。課題が集中して見えた今年のよさこい祭り。より安全に楽しめるよさこい祭りとするために何ができるのか。

来年に向けての検討がはじまります。
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