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【能登半島地震】発災から半年…被災地の復旧復興への取り組みが進む一方で静岡へ移住し再起を目指す人も

2024年7月1日 17:24
【能登半島地震】発災から半年…被災地の復旧復興への取り組みが進む一方で静岡へ移住し再起を目指す人も

能登半島地震の発生から、7月1日で半年です。被災地で復旧復興が進む一方、静岡県内に移住し、再起を目指す人の姿もいます。浜松市には石川県能登町から栗農家が移住し、和栗の発展と能登の復興を目指し、懸命に活動を続けています。

6月、掛川市の栗園に県内外から約30人の栗農家が集まりました。

栽培方法の指導していたのは、石川・能登町で、18年間、栗農家を営んできた松尾和広さん50歳。松尾さんの作る「焼き栗」は、独自の製法によって糖度が30度を超え、そのおいしさから大人気。全国から注文が来るほどです。しかし、今回の地震で、作業場や自宅が大きな被害を受け、事業を続けることが出来なくなり。2024年3月。家族を連れて浜松市へ移住してきました。

(松尾栗園 松尾 和広さん)
「家の中のもの全部、冷蔵庫やテーブルとか全てのものが倒れていたので」「玄関を開けてみたら、自分たちがいた居住地部分だけ崩れていなくて、作業場と家の併用住宅だが、面積でいうと6~7割が作業場部分で、そこがぺしゃんこに潰れていた」

松尾さんの自宅がある輪島市では最大震度7を観測。多くの建物は倒壊し、道路はひび割れや陥没するなど、広範囲にわたって甚大な被害を受けました。

松尾さんの作業場も倒壊し、全てを元に戻すためには1億円以上の費用がかかると言われたといいます。松尾さんは、再建は難しいと判断し、手塩にかけた栗園をたたむ決断をしたのです。今後について悩んでいたところ、あるプロジェクトへの協力依頼が舞い込みます。

それが、静岡県内の企業や団体などが取り組む「遠州・和栗プロジェクト」。2022年7月に発足したこのプロジェクトは、和栗の価値を高め、需要の拡大や、後継者不足の解消などを目指して活動しています。栗を使った特産品を開発するにあたり、専業の栗農家として成功を収めた松尾さんの力を借りたいと、事務局がプロジェクトへの参加を依頼したのです。

(遠州・和栗プロジェクト事務局)
「栗を貯蔵・熟成していくことによって、糖度が上がるというところにこだわりをもってやっていて」「日本を和栗の国として広めていくために(松尾さんは)欠かせない人かなと思っているし」「プロジェクトで一緒に、栗を通じて、日本、地域を変えていけるような共創をしていければと思い、こちらに来てもらった」

また、プロジェクトでは、能登の復興の力になりたいという松尾さんの思いをくみとり、新商品開発の一部に「能登栗」を使うことを決定。今後、松尾さんが、静岡と能登の架け橋となり、能登栗の仕入れの調整などを任されることになりました。能登への復興にもつながるこのプロジェクトを成功させたいという強い思いから、松尾さんは、2024年3月、家族全員で浜松市に移住したのです。

(松尾栗園 松尾 和広さん)
「静岡で私たちが能登の栗を買えば」「利益がでて独自の栽培をずっと続けていける。そういう生活を保障してあげるのも、このプロジェクトの大事な仕事なので」「ちゃんと利益が出る形で応援してあげたい」

この日は、会議。

プロジェクトでは栗の自家栽培も目指していて、木を植える場所について話し合いました。松尾さんが候補地選びから土壌分析まで、各地へ直接足を運び調査をしています。

(松尾栗園 松尾 和広さん)
「(土地は)フラットで条件も良くて日当たりも良くていいなと思い、ぜひやりたいと思っていたが、結論から言うと無理だということが分かった」「40センチぐらいの木材チップが被せてあって、その下の土を取ろうと思ったら土がなかった。石しかない」「果樹はまず無理だなという場所だった」

条件に合う土地が見つかった後は、松尾さんが栗農家として再起する場所になります。

指導にも力を入れています。この日は、掛川市内の栗農家に向けて、夏のせん定作業の指導を行いました。通常、栗のせん定作業は、木の休眠時期である冬に行うのが適切だといわれていますが…。

(松尾栗園 松尾 和広さん)
「夏期せん定をやるべきだとは言われてたことはないと思うが」「目的は2つ。ことしの果実に養分をあげたい。来年以降使うものにもう少し養分を分配する。その養分をどこに送るのかということをより明確にするのが夏季せん定」

松尾さんは、栗を大きく育てるためには、夏のせん定作業も重要だと説明。参加した経験豊富な栗農家も、初めて知る知識に驚きの表情です。

( 参加した栗農家)
「夏期せん定は初めてだったが、かなり効くことが分かったので良かった」「本当に色々と勉強になった」

( 参加した栗農家)
「これだけ人のために尽くされていることは見習っていかなければいけないと思うし、教えてもらったことは生産者が生かしていかなければならないと感じている」

松尾さんは、「栗」を通じて、新天地である静岡から能登の復興を支える新たな人生を歩み始めました。懸命に前を向き、一歩一歩、進んでいます。

(松尾栗園 松尾 和広さん)
「(能登を)見捨てることだけはしたくなかったので、自分にできることは栗しかない。静岡で能登の栗園のことを見捨てなくていい、あきらめなくていいと言ってくれたのが一番大きい」「静岡の栗のために力を貸してくれ、発揮してほしい。それが静岡だけではなくて、ゆくゆくは日本のためになるための役割で呼んでもらったので」「静岡を栗の産地にするために、もっともっと勉強していきたいなと思っている」

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