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【詳報】廣瀬爽彩さんの苦しみが克明に…旭川いじめ問題 再調査報告書公開で具体的な内容判明

2024年9月14日 7:11
【詳報】廣瀬爽彩さんの苦しみが克明に…旭川いじめ問題 再調査報告書公開で具体的な内容判明

3年前、北海道旭川市の公園で女子中学生の遺体が見つかった問題で、再調査委員会の報告書が13日に公表されました。

クラスで居場所を無くした生徒が上級生につながりを求め、さらなるいじめに苦しむようになった過程が事細かに記されています。

「いじめ被害が存在しなければ廣瀬爽彩の自殺は起こらなかった」

13日公表された367ページにわたる再調査報告書は、ひとりの女子生徒が自ら命を絶った理由についてこう結論付けました。

旭川市の中学校に通っていた廣瀬爽彩さん・当時14歳。

2021年3月、市内の公園で凍死した状態で発見されました。

廣瀬さんは2019年4月に中学校へ入学しましたが、直後から体の不調を訴え、学校に行きたがらないなど、様子が変わっていきました。

再調査報告書は廣瀬さんに対する7件のいじめを認定しました。(※原稿末尾に詳細内容あり)

新たに認定されたのは「クラス内でのいじめ」です。

入学直後、クラスで悪口や真似されるなどのいじめを受けたといいます。

クラスでの居場所を失った廣瀬さんは、上級生らのグループにつながりを求めるようになりました。

▼学校内でのいじめを訴える廣瀬爽彩さんの投稿

「前の学校でクラスに馴染めなくてクラスが怖い」

「クラスではいつも浮いていました」

「1人になりたくなかった。だから先輩たちから離れられませんでした。何より何より1人が怖かったから。でも先輩たちといることによって私は誇りも失うことになります」

こうした中、上級生は廣瀬さんに対し、SNSなどを通じて性的な動画を要求。

廣瀬さんは必死にこれを拒もうとします。

▼廣瀬爽彩さんが送信したメッセージ

「動画とりたくない」

「動画が嫌なんです」

「動画やだ」

「動画ってなんか怖い」

「動画無理です」

しかし、上級生らが廣瀬さんを公園で取り囲み、性的な行為を強いるなど、いじめはエスカレート。

廣瀬さんは「もう死にます」と話して近くの川に入り、中学校の教員に自ら電話しました。

▼廣瀬爽彩さんと教員の電話でのやりとり

(教員)「もしもし、〇〇中学校です」

(廣瀬爽彩さん)「1年〇組の廣瀬さあやです…」

(教員)「お!さあや!どうしたの?」

(廣瀬爽彩さん)「…」

(教員)「ん…?〇〇先生かい?」

(廣瀬爽彩さん)「死にたい…」

(教員)「え、どうしたの?いまどこにいるの?」

(廣瀬爽彩さん)「川です…死にたいです…もう生きたくない!!死にたい死にたい死にたい!!!」

(教員)「さあや?さあやっ!?」

その後、別の教員が電話を替わり、廣瀬さんは少し落ち着きを取り戻しました。

(教員)「寒くない?」「どこの川にいる?」

(廣瀬爽彩さん)「公園」

(教員)「どこの公園かな?」

(廣瀬爽彩さん)「〇〇小学校の裏」

(教員)「そうか、わかったよ」

この電話のやりとりの後、教員数人が現場へ向かい、川から引き揚げたあとに車内で廣瀬さんの体を温めました。

その後、廣瀬さんは別の学校に転校しましたが、家に引きこもるようになります。

そして、2年後の2021年2月。

「ねえ、きめた。今日死のうと思う」

廣瀬さんは知人にこう告げて消息を絶ち、翌月、公園の雪の中から凍死した状態で見つかりました。

廣瀬さんの死後、旭川市教育委員会はいじめの疑いがある「重大事態」として、第三者委員会による調査を開始しました。

しかし、第三者委員会の最終報告書では上級生らによるいじめが認定された一方、クラスでのいじめは認定されませんでした。

さらに、自殺の背景にいじめがあったか明言を避けたのです。

これに対し遺族側は反発。

「理解に苦しむ内容であるのみならず無責任とのそしりを免れない」

遺族側の訴えを受け再調査委員会が立ち上がり、13日にいじめと自殺の因果関係を認める報告書を公表したのです。

認定結果が覆った決め手。

それは、廣瀬さんがネット上で発していたSOSでした。

「いじめを受けてから1年がたちそうなのに私は何もできません。何もかもが怖くて怖くてたまりません」

転校したあと、廣瀬さんはSNS上にいじめの記憶を綴っていました。

また、インターネットでライブ配信する男性に自ら相談もー

(廣瀬爽彩さん)「いじめを受けていたんですけれど、そのいじめの内容が結構きつくて、自分のほうでなかなか納得がいかないというか処理できないという気持ちになってしまっていて」

失踪直前まで廣瀬さんがつづった「死ぬ」「怖い」などの言葉。

こうした言葉の分析などから、より踏み込んだ調査結果が導きだされました。

いじめの記憶が自殺の要因となったとする今回の報告書。

公表を受け、旭川市の今津寛介市長はー

(今津寛介市長)「同じことが二度と繰り返されないよう、関係者ひとしく取り組みを進めていくことこそが、爽彩さんが生きてきた証になると思います」

廣瀬さんが受けた苦しみを記した今回の報告書。

遺族は「今後同じことが繰り返されないよう、そして同じような悩みを抱える方にも役立てていただきたい」とコメントしています。

▼再調査によって認定されたいじめ7項目

①廣瀬爽彩さんの特性を背景として、クラス内の人間関係から疎外されていると感じさせ、孤独感を抱かせるに至ったこと

②廣瀬爽彩さんの特徴的な行動を取り立てて指摘したり、(自分たちとの)「違い」を、略語・隠語で言ったり、クールダウンのために教室を離れる廣瀬爽彩さんの行動を「私もう帰る」といった言葉とともに真似をして笑いをとったりしたこと

③性的な写真を送付させたこと、体を触ったこと

④ジュースなどをおごらせたこと

⑤LINEで性的行為を見させたこと、性的な話題を続けたこと、写真などを送らせたこと

⑥公園で性的行為をさせたこと

⑦生徒が廣瀬爽彩さんの真似をしてからかったこと、廣瀬爽彩さんに対して死ぬつもりもないのに死ぬなどと言うなといった趣旨の発言をしたこと

再調査委員会は報告書で「いじめは廣瀬さんの自殺の主要な原因であった可能性が高い」と結論付けています。

同じ悲劇を生まないために、廣瀬さんのいじめ問題を教訓に再発防止が求められています。

▼厚生労働省や自殺の防止活動に取り組む専門家などは、悩みを抱えていたら自分だけで解決しようとするのではなく、専門の相談員に話を聞いてもらうなどして欲しいとよびかけています。

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