【特集】クマ対策の最前線 危機的なハンター減少 初の試み「ハンターデビュー講座」新たな担い手確保へ
特集です。まずはこちらの数字。「4092人」。これは県猟友会に登録する会員数です。
1967年、今から58年前には「1万9450人」が登録していました。登録方法などが煩雑になっていることも影響し今ではおよそ4分の1にまで減少しています。一方で、野生鳥獣、主にクマによる被害や目撃件数は増加傾向にあります。こうした際に警察や市町村と対応に当たる猟友会。人材の確保に向けて県が新たな取り組みを始めました。
去年9月、長野市松代町のブドウ畑でネットに絡まった状態で見つかったツキノワグマ。
関昇一郎副知事
「先ほどツキノワグマ出没警報への引き上げを県下5地域で決定させていただきました」
去年6月から9月にかけてクマによる人身被害が相次いだことを受け、県内では初めてとなるツキノワグマ警報が県内5つの地域に出されました。
県によりますと、今年度のクマの目撃件数は6月に「347件」、7月は「273件」とやや減少しましたが、8月には「348件」と再び増加。12月末までに1422件で人身被害は13人に上っています。
2月13日、県は来年度のクマ対策に向けて対応を協議。専門家からは厳しい指摘も…。
信州大学農学部 竹田謙一教授
「今非常に危機的な状況にあるんじゃないのかと、この野生動物管理のを担い手は誰なんだというのをもういい加減真剣に考えていかなければならない」3605「まずこういった業務に関わられる猟友会の皆さんの待遇改善がまず大事じゃないか」
クマ対策の最前線に立つ猟友会。県内にとどまらず全国で課題となっているのが、担い手不足です。
県内の猟友会会員数は4092人。少子高齢化などが影響し、年々、減少傾向にあります。一方で、2008年度と2023年度の年代を比べると依然、60代以上が多くを占めていますが、30代は「9%」、20代は「3%」と若手も増えています。
ところが、県が去年、猟友会170支部を対象に行った実態調査では会員の確保が厳しいと答えた支部がほとんどでした。
長野県猟友会 竹入正一会長
「いろいろなところで少しずつ増えているというところもあるし若い人が興味を持ってくれているとは思うが、年配の人たちは辞めていく人も多いし、なるべくいろいろな取り組みをして世の中にある程度貢献できるような状況、趣味の狩猟なんだけどそういうものも含めて人数確保できるようなことはしていきたい 」
こうした中、県が今月23日に開いた「ハンターデビュー講座」。狩猟免許を持っていない人を対象に新たなハンターの裾野を広げようと企画したもので初めての試みです。
60人の定員に対しおよそ150人の応募がありました。
受講生の一人、信州大学3年生の石原隆聖さん22歳です。
石原さん
「普段は食べる方なんですけど、生産者の気持ちも知ってみたいなと思って。生産者の方がどういうふうな気持ちで狩って供給しているのか知りたくて参加しました」
愛知県出身の石原さんは進学で信州に来て、ジビエ料理が好きになりました。
狩猟の方法や注意点を学んだ後、長野市松代町の猟友会メンバーと実際にシカの解体に挑戦です。
石原さん
「どこがどこの部位か分からないのでどこを切っていいか…。それで削り取れなかったところがあっていいところが残ってシカに申し訳ないなと。やるのは楽しかったですけど生産者の視点に入ると猟することからやらないといけないなとここで楽しいで終わっちゃいけないなと思いました」
今回の取り組み、実際に現場で活躍する若手ハンターも期待を寄せています。
北佐久連合軽井沢猟友会 菊池哲也さん
「とてもいいことだと。先輩猟師さんから教えてもらうと間違っちゃったことがあったりとか危ないこともあるので、しっかりされている方に聞くというのが一番近道じゃないかなと。今後は若い人の力が大いに必要になってくる。自分がこの職業始めた理由がそこで、若い人たちが猟師という職業に喜んでなれるような土台づくりをしたいなと思って役場を辞めてこの会社を始めたので。一緒に地域から初めて若い世代を広められるように活動していきたいなと」
クマ被害は増える一方で、減少するハンター。人材確保に向けた試行錯誤が続いています。