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【フカボリ】注目される避難所運営のデジタル化 県が実証実験 岩手・久慈市

2024年9月20日 18:40
【フカボリ】注目される避難所運営のデジタル化 県が実証実験 岩手・久慈市

8月から9月にかけて台風5号や大雨で、岩手県内に大きな被害が出ましたが、住民が避難する避難所でいま注目されているのが「デジタル化」なんです。どういうことなのか、取材してきました。

18日、久慈市宇部町で行われた避難所運営の実証実験です。住民などおよそ50人が集まったのは、避難所に指定されている地元の市民センター。この日テーマになったのが、「デジタル技術を活用したスムーズな避難所運営」です。

記者「今回の避難所運営の実証実験では、QRコードを導入して作業の効率化を図っています」

これで入所手続きは完了。避難所にきて必要な情報を記入する手間が省けるので、混雑を軽減することができます。避難所は、僅かな職員で速やかに運営しなければならず、自治体にとって大きな課題となっており、この実証実験は、デジタル技術による効率化を検討していた県が初めて行いました。

岩手県復興危機管理室 田澤清孝総括危機管理監
「昨年度から県で復興防災DX研究会を立ち上げて、市町村の課題などを調査するなかで、災害時に大きな負担となってくるのが、避難所運営だということが見えてきた。何か効率化できるような取り組みをしようと思い着手した」

このシステムでは、県の公式LINEアカウントを活用して、名前や住所など避難所で受け付けの際に必要な情報を住民が事前に登録しておくと、二次元コードで簡単に受け付けができます。自治体にとっては、情報がリアルタイムで集計されるため、とりまとめや報告の作業がいらなくなります。

実証実験では、受け付けを従来の紙を使ったアナログ式とLINEを使ったデジタル式の2通りで行い、それぞれにかかった時間を測りました。参加した34人の受け付けにかかった時間は、紙での受け付けは1世帯につきおよそ3分かかったのに対し、スマートフォンでのデジタル式の受け付けは15秒ほどで済みました。

事前の登録さえすればデジタル式はアナログ式と比べて12分の1以下の時間で受け付けが済むことがわかりました。

久慈市防災危機管理課 工藤健二課長
「デジタルのスムーズさと人数把握の間違いの無さは非常に防災では大事で魅力的。受け付け業務の省略化にも非常に役に立つ」

岩手県復興危機管理室 田澤清孝総括危機管理監
「思った以上にスピーディーにできた。市町村向けの研修会なども開催しながら気運をさらに高めていければ」

一方、住民は便利さと同時に難しさも感じたようです。

住民 女性
「(デジタル化に)興味があっても緊張する。ガラケーからスマホに変えて1、2年くらいで十分に慣れていない」

住民 男性
「高齢者が多い地区なので研修の実施が大切だと思う」

デジタル早いですね!でも、スマホを持っていない小さい子どもやスマホに慣れていない高齢の方、スマホを持たないで避難した人はどうするのですか?

小さい子どもは、保護者などがまとめて手続きできますが、デジタルは苦手という人などは従来通り紙で受付できます。

県は11月にも遠野で実証実験を行う予定で、デジタル化を進めながらもアナログ式にも対応していきたいとしています。

今回の実験は県内初だけど、なぜ久慈市で行われたのですか?

国や県が4年前に公表した最大クラスの津波浸水想定で、久慈市は、犠牲者が県内の自治体で最も多い4400人と想定され、防災対策に特に力を入れている自治体だからです。こちらをご覧ください。

9月1日の防災の日に久慈市で行われた避難訓練です。久慈市では、県が公表した最大クラスの津波浸水想定を受け、去年、「命を守るために最低限たどり着く場所」として、新たに「避難目標地点」を設定。その上で、より安全な「緊急避難場所」を目指すという2段構えの避難計画を定めています。

参加者
「3.11経験者として、きちんと持ち出すものを準備して、どこに集まるかみんなで共有して、しっかり備えたいと思います」

東日本大震災や能登半島地震では、壊れた自宅や車の中など指定避難所以外に身を寄せる「避難所外避難者」もいて、自治体の支援が十分に行き届かないという問題が発生しました。そうした場合にもデジタルが力を発揮し、今回の実験では、「避難所外避難者」と県の公式LINEを活用してやりとりができることも確認されました。どこに避難しているのか詳細な位置情報を知らせることができるほか、必要な支援物資なども伝えることができます、

久慈市防災危機管理課 工藤健二課長
「ペットを連れてきている人はなかなか避難所に入りづらいという人も一定数いる。実際これまで過去の避難の時にも一旦避難所に顔を出すけどペットもいるから車にいるという人もいる。あるいは、親戚のところに避難している人とかも把握しやすいシステムなのでぜひ使えれば良いと思う」

東日本大震災の避難所では、避難した人や必要な物資の情報がホワイトボートに記入されていましたよね。

デジタルだと避難した人の持病や食物アレルギーの有無など把握漏れ防止にも効果があります。一方で災害時に通信と電力を確保する必要もあり、県は、各避難所にモバイルバッテリーを置いたり、人工衛星を使った通信サービスの活用なども検討することにしています。

災害時の避難でデジタルが、どのように活用されていくか、今後も注目しましょう。以上、「フカボリ」でした。

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