「地元に愛されるまちの酒屋として…」 創業127年の老舗酒店が“生き残り”懸けてリニューアル 岩手・奥州
創業127年という岩手県奥州市水沢の老舗酒店がこのほど、店舗の大幅なリニューアルを行いました。酒類販売の規制緩和やコロナ禍で、『まちの酒屋さん』が次々廃業していく中、生き残りをかけた取り組みを、北上支局・熊谷記者が取材しました。
奥州市水沢にある、1897年・明治30年創業の『まちの酒屋さん』、小林商店です。2024年3月、店内を大幅に改装してリニューアルオープンし、木材とシックな色合いの棚などを組み合わせた、明るくモダンな店に生まれ変わりました。
常連客
「きれいになってびっくり。酒も見やすくて広く感じる」
リニューアルを決断した店の5代目、小林大祐さん35歳です。県外にある食品と酒の卸売り会社での修行を経て、2019年12月、家業を継ぐため戻ってきた小林さんは直後、コロナ禍という大きな逆風に見舞われます。
小林商店の5代目 小林大祐取締役(35)
「地元の飲食店や常連さんが買いに来てくれた。本当に地元のお客さんのおかげでなんとか生き残ったというのがあるので、その恩返しとしてリニューアルオープンがひとつの軸になっている」
小売酒店への逆風は、コロナ禍だけではありません。
県小売酒販組合連合会によると、2003年に行われた酒類小売業免許の規制緩和による価格競争の激化や、後継者不足などにより、全国的に廃業を決断する小売酒店が増えています。小林商店を含む胆江地区の小売酒店でつくる水沢小売酒販組合だけでも、規制緩和のあとから、これまでに133軒が廃業、または組合から脱退しています。
この中、小林さんはこれまで、全国の酒蔵にいる同世代の経営者らとの交流を深め、仕入れルートの開拓に取り組んだほか、今回のリニューアルに合わせて地元の酒蔵・岩手銘醸の協力を得て、小林商店でしか買えない特注の酒の販売も始めました。
岩手銘醸 及川順也 専務取締役(37)
「我々の業界はどちらかというと暗いニュースが多くて、コロナもそうだったけれど、ふたりで飲んでいると将来こうしていきたいなど語り合える仲間は少ないので、唯一話せる存在というか、いい意味でふたりで成長していければと思う」
リニューアルではこのほか、土曜日限定で開く無料の試飲コーナーを作りました。小林さんが全国から取り寄せた客に勧めたい酒を試しに飲んでもらい、購入につなげようというねらいで、この日、SNSを見て来た人が、店の特別限定酒を試していました。
無料試飲したひと
「ものすごくすっきりしていて、飲んでいて気持ちいい酒だなと」
小林商店の5代目 小林大祐 取締役
「売り上げはもちろんだけれど、代々つないでいくということが酒屋の生き残りと言うか、地元に愛されて『酒屋と言えば小林商店だよね』と言ってもらえるのが成功なのかなと思う」
岩手銘醸・及川専務
「2023年産のコメは堅くて、味がのりづらかった。そのなかでもなんとか味を乗せようとがんばった酒で…」
試飲客
「去年の猛暑って酒米にも影響がでるんだね」
及川専務
「影響はすごいです。とくに東北の…」
記者
「お客さん楽しんでくれてますね」
小林商店の5代目 小林大祐 取締役
「そうですね、ありがたいです。まちの酒屋はひとと触れることに価値があるのかなと…そういうコミュニケーションが大切なんだなと、いま見て思った」
地元に愛される、『まちの酒屋さん』であり続けるために…生き残りを懸けた小林商店の取り組みは続きます。