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【ナゼ】『狙われる日本の腕時計』中国籍の男は3日前に来日、スキンヘッド“変装”中国行き航空券も…大阪・心斎橋貴金属店強盗殺人事件

2024年8月17日 9:00
【ナゼ】『狙われる日本の腕時計』中国籍の男は3日前に来日、スキンヘッド“変装”中国行き航空券も…大阪・心斎橋貴金属店強盗殺人事件

 大阪・心斎橋の貴金属店で6000万円超の高級腕時計が奪われ、男性店員が腹を刺されて殺害された事件。逮捕された中国籍の男は、事件の3日前に来日して包丁などを準備した上、事件直後には中国行きの航空券を持って関西空港へ行くなど、「ヒットアンドアウェー」の計画的犯行だったとみられている。なぜ日本の店が狙われたのか。背景には、腕時計市場の“高騰”と日本で販売されている“信頼”があった―。

■外国人観光客でごった返す心斎橋で“白昼堂々”の犯行

「いらっしゃいませ」

 8月7日の午後1時半ごろ、外国人観光客などでごった返す大阪・心斎橋筋商店街の貴金属店「トキオカ」に、1人の男が客を装って入ってきた。ガッチリとした体型にスキンヘッド、サングラス姿の男の名前は、中国籍の后馭波(コウ・ギョハ)容疑者(27)。

 后容疑者は中国語を話せる女性店員の対応で、店の奥の商談スペースに。そこで「見たい」と言ったのが、スイスのパテックフィリップ製で6280万円相当の高級腕時計だった。

 女性店員がケースから腕時計を取り出すと、后容疑者は、突然包丁を取り出して奪った上、立ちふさがった別の店員の弘中辰弥さん(30)の腹を包丁で刺して逃げた疑いがもたれている。

 弘中さんは意識不明の重体で病院に搬送され、その後死亡が確認された。司法解剖の結果、刺された痕は1か所だけだったが、脊椎の手前まで到達する12cm以上の深い傷で、死因は出血性ショックだった。

■スキンヘッドのゴムマスク変装に当日の航空券所持…計画的犯行か

 后容疑者は警察の調べに容疑を認めていて、捜査関係者によると、当初から、事件後すぐに中国へ逃亡する「ヒットアンドアウェー」の犯行を計画していたとみられている。

 后容疑者は事件3日前の8月4日に「短期滞在ビザ」で来日。その後、包丁などを準備したとみられている。事件当時のスキンヘッド姿は、実はスキンヘッドのゴムマスクをかぶった“変装”で、事件直後には、現場近くの空き地にゴムマスクや包丁を投げ捨てる様子が防犯カメラに映っていた。

 さらに后容疑者は南海のなんば駅から特急「ラピート」に乗って、関西空港に向かっていて、事件から約2時間半後に国際線出発フロアにいるところで警察官に緊急逮捕された。

 身柄が確保された際、店から奪った腕時計を所持していた。さらに、后容疑者は、中国行きの航空券を持っていたといい、犯行後に急いで出国しようとした様子がうかがえる。

■“本物を販売”狙われる「日本の腕時計」 価格が高騰

 なぜわざわざ海外から日本に来て、腕時計を狙うのか。ある捜査幹部は「日本の商品に対する信頼が高いからだ」と話す。

 近年、腕時計市場は 貴金属の価値の上昇とともに需要が高まる一方、高級品は「職人による手作り」のものが多いため供給が追いつかず、価格が高騰している。取材をした別の腕時計販売店によると、ロレックス(デイトナ)などの高級品の販売価格は価格の2倍以上、パテック・フィリップ(ノーチラス)は4倍以上になっているという。

 犯罪ジャーナリストの石原行雄氏によると、腕時計は金や宝石に比べて、プレミアがついて値段が高騰していることに加え、腕時計の場合は、空港の税関でも3本程度なら所持していても違和感はなく、チェックをすり抜けられるという側面があるという。

 さらに、海外では盗難品かどうかより、本物か偽物かを調べるため、簡単に売れる傾向があるとされている。偽物も多く流通する海外に比べ、日本の店舗では、箱や保証書がしっかりついていて、傷モノが少ないため、日本で販売されている商品は「本物だという信頼感」があるというのだ。

 捜査関係者によると、今のところ后容疑者の共犯者をうかがわせる情報はないということだが、過去には組織的に「ヒットアンドアウェー」を繰り返した海外の犯行グループも存在し、さらなる防犯対策が求められている。

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