×

「なぜ株価下落がこんなに大きなニュースになるの?」大学生が経済部記者にきいてみた

2024年8月16日 6:00
「なぜ株価下落がこんなに大きなニュースになるの?」大学生が経済部記者にきいてみた

株価の乱高下がなぜこんなにもニュースになっているのだろう…日本テレビで働く大学生が、株価が下がった原因や株安の影響、これからどうなるのかについて、経済部・金融担当の渡邊翔キャップにききました。

■株価が安くなるとどんな影響があるのか

8月5日、日経平均株価が、前の日と比べて4451円安と過去最大の下げ幅となりましたが、翌6日は一転して3217円高で過去最大の上げ幅を記録するなど、乱高下しました。

──株価が安くなると、どんな影響があるんでしょうか?

渡邊:一般的には株価が大きく下がると、景況感の悪化、つまり「景気が悪くなるのではないか?」という見方につながります。また、株価などの資産価格の上昇・下落は、個人消費を増加・減少させる、「資産効果」を生むとされています。 株価の下落は、どの程度かは場合によりますが、消費が冷え込むリスクになると言えます。 

──つまり、株価の乱高下が与える影響は日本にとって悪いことですか?

渡邊:株価にしろ為替にしろ、急激な変動は決して良いことではありません。株価は市場による企業価値の評価です。株価が急激に変動すると、企業活動の不確実性が高まり、国民生活に悪影響を及ぼす可能性もあります。  

──それにしても騒ぎすぎでは、と思ってしまうのですが…

渡邊:確かに市場関係者は、株価の乱高下が実体経済以上の振れ幅に なったと指摘しています。5日の暴落について市場関係者に取材すると、投資家の中でも「投機筋」といわれる、短期的な売買で儲けようとする一部の人たち、それから一旦利益を確定させようという人たち、これはいずれも海外投資家や機関投資家の人たちですが、こうした動きがかなり大きく影響したのではないか、という見方が出ています。こうした一部の人たちが大規模に日本株を売ることで、もちろん株価は大きく下落します。それが他の投資家の心理にも「みんな売っているから自分も損をしないために株を売らないと」と波及して、売りが売りを呼ぶ「パニック安」の様相を呈してしまったとみられます。 

■“日本だけ”見ていては予測できない株価下落

──株価が下がったのはなぜなんですか?

渡邊:暴落の要因は大きく2つ。一つは、アメリカで経済指標が市場予想を下回ったことをきっかけに、アメリカの景気後退への懸念が急速に広がってアメリカ株が下落し、その影響が日本株にも波及したこと。もう一つの理由は、日銀が追加利上げを決め、今後のさらなる利上げにも前向きな姿勢を示したことが、アメリカの利下げ期待の高まりと相まって、歴史的円安が急速に修正されて円高に進んだことです。

──アメリカ経済への不安が関係するんですか?

渡邊:アメリカで経済指標が市場予想を下回ったことをきっかけに、「これからアメリカの景気が悪くなるんじゃないか」という懸念が急速に広がってアメリカ株が下落し、その影響が日本株にも波及しました。

──なぜ、アメリカ株が下落すると日本株も下がるんですか?

渡邊:要因のひとつとして指摘されるのが、日本株の売買金額の7割近くをアメリカなどの海外投資家が占めていることです。そのため、アメリカ経済が好調な時は、日本を含むさまざまな海外市場でも活発に株を売買するなど取引を行いますが、逆にアメリカ経済が悪化すると、アメリカの資産を守るために日本株を一旦手放す=売る形になりやすいと考えられます。  

一方で、これまでの歴史を見ると、つねに日本株とアメリカ株の動きが連動してきたわけではありません。例えば日本はバブル崩壊後、落ち込んだ株価がバブル当時の水準を回復するのに30年 以上を要しましたが、アメリカの株価は、この間長期的に見ると右 肩上がりで推移してきました。短期的に見ても、日本株とアメリカ 株の動きが一致しないことは比較的起こります。

■“パニック”いつまで?株価が安定するタイミングはアメリカ次第で…

──株価はいつ頃安定すると考えられますか?

渡邊:日経平均株価は13日に1200円以上値を上げて取引を終え、5日に大暴落する前の水準、3万6000円台を1週間で回復しました。ただ、短期的な乱高下が収まっても、株価の不安定な値動きが落ち着くにはまだ時間がかかるのではないか、との見方もあります。というのも、今回の株安は、アメリカの景気後退への懸念をきっかけに起きているので、情勢はアメリカ経済の行方次第、という側面が大きいのです。今後、アメリカの経済が予想以上に下ぶれ、不景気になるという不安が高まれば、ドル安・円高がさらに進みさらなる日本株の下落につながるリスクもあります。 

株価は過去にも、大きく下落した後、いったん株価が戻って安心したところで、もう一回大幅下落が来るという、いわゆる「二番底」を何度も経験しているんです。なので市場関係者はいま、この「二番底」が来るのか、来るとしてどのタイミングなのかというのをかなり警戒しています。

さらにアメリカは11月に大統領選を控えて「政治の季節」のまっただ中なので、ハリス氏とトランプ氏、どちらが大統領になるかによって、政権の経済政策も変わってきます。そもそものアメリカと世界の経済の行方が、かなり不確実性が高いと言えそうです。