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【物議】事業費2億7500万円に県民から賛否の声 奈良県が"K-POPの無料ライブ"を企画  計画の修正は?

2024年12月21日 9:00
【物議】事業費2億7500万円に県民から賛否の声 奈良県が"K-POPの無料ライブ"を企画  計画の修正は?
奈良県・山下真知事

 K-POPアーティストのライブに約2億7500万円。この支出は適正かー

  12月16日、奈良県議会で可決された2024年度の補正予算案に含まれる事業をめぐって、県議会可決後も県民からは賛否の声が上がっている。

 計画されているライブは、日韓国交正常化60周年と、奈良県と韓国・忠清南道(チュンチョン・ナムド)の友好提携15周年を記念して開かれるもの。奈良公園(奈良市)の春日野園地で、来年10月に「1日限り」で開かれるイベントで、約9000人が無料で観賞できる予定だ。

 県は事業費として約2億7500万円を計上し、今年度の補正予算案に、事業費のほとんどを占める約2億5500万円を盛り込んだ。奈良県の山下真知事が打ち出した事業案だが、県議会に提案されると、一部議員らから費用対効果などを疑問視する声が上がった。

 県民の賛否も分かれた。「ライブの開催を機にもっと奈良公園や奈良の文化遺産をアピールできたらよいと思う」といった賛成の声が聞かれた一方で、「生まれる経済効果も少ないだろう、なくてもいいのでは」といった反対の声も多く聞かれた。

■山下知事「両国の親善を担っていく世代同士の交流を深め、お金に代え難い価値が生み出される」

 開催の意義について山下知事は自身のXで「億単位の費用はかかるものの、お金のない日本の若者も大好きなK-POPアーティストに生で接することができ、これから両国の親善を担っていく世代同士の交流を深められる。そうしたお金に代え難い価値が生み出されると判断しました」と述べた。

 この「お金のない日本の若者」という表現に対してSNS上で批判が起こり、のちに知事は「日本の若者がお金がないという意味ではなく、『日本の若者も財布の中身を気にする必要なく』という意味ですので、誤解を与えた方にはお詫びして訂正します」と以前の投稿を訂正するに至った。

 そのうえで、財源については、過去に県内で開催された博覧会の収益分(基金)を活用する方針で、「税金ではない事業収益金が主としてあてられる」と説明した。

■一過性のイベントで多額の費用…反対県議ら「県民の理解得られない」かつての天平祭は"中止"に「自己矛盾」

 12月の県議会最終日となった16日には、自民党会派の5人の議員から、K-POPの無料ライブに関する事業費を削除する修正案が提案された。議員らは、文化振興や国際交流など日韓交流イベントは重要としつつも、他の友好提携先との交流事業や周年事業と比較すると、一過性のイベントで多額の費用を要するため、県民の理解を得られないと指摘した。

 修正案の提案理由を説明した若林かずみ議員(自民党・無所属の会)は、奈良公園でライブを実施することで、園内に生息しているシカの餌場が踏み荒らされてしまうおそれや騒音問題の懸念、平城宮跡でおこなわれていた「天平祭」を山下知事が「費用対効果」を理由に事実上中止したこととの整合性なども問題点として挙げた。

「費用対効果を重視して、多くの事業を執行停止されてきた山下知事からすれば、今回の音楽交流イベントのような費用対効果に疑問の残る事業を実施することは、自己矛盾。行財政改革を進めるというのであれば、真っ先にこの音楽交流イベントを見直すべき」だとして、県議らに修正案への賛成を訴えた。

 しかし、この修正案は反対多数で否決、県側の補正予算案が日本維新の会や自民の一部議員らの賛成によって可決された。

■知事「イベントの有料化も韓国側と協議」

 県側の補正予算案可決後、K-POPライブ事業の予算に反対していた永田恒(ゆづる)県議(自民党・無所属の会)は「修正案が通らず、本事業が開始に向けた入り口に入ってしまったことは非常に残念」と述べた。今後の対応について検討するという。

 また、県議会で県側の補正予算案に賛成した日本維新の会の県議らは、公明、新政奈良の県議らとともに、山下知事に対して申し入れ書を提出。イベントの有料化や寄付金の募集などを見直し、支出の削減に努めることなどを求めた。

 知事は補正予算案可決後の会見で、「日韓の友好親善、経済効果、奈良県自体のPRの価値があり、若い世代の交流が重要と考えている」と改めて開催の意義を強調。その一方で、イベントの有料化についても今後、韓国側と協議する方針を示した。

 はたして県民の理解は得られるのだろうかー。

最終更新日:2024年12月21日 9:00
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