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【解説】県産品のPR?それともおねだり?斎藤知事パワハラ疑惑の行方…カギを握る“職員アンケート”対象は約9700人

2024年7月21日 11:00
【解説】県産品のPR?それともおねだり?斎藤知事パワハラ疑惑の行方…カギを握る“職員アンケート”対象は約9700人
兵庫県の斎藤元彦知事(19日)

 兵庫県の斎藤元彦知事の“パワハラ”や贈答品などの受領疑惑が告発された問題で、斎藤知事はワインを受領を認める一方で「産業振興の仕事として大事なこと」だと語りました。果たして県産品の“PR”だったのか“おねだり”だったのか、告発されたようなパワハラ行為はあったのか―。元幹部の男性職員が死亡する中、約9700人の県職員らへのアンケートや証人尋問など、真相の解明を進める百条委員会の今後の行方が注目されます。(報告:神田貴央、牧野天稀、上野巧郎)

■斎藤知事「産業振興につなげる仕事として大事なこと」

 今年3月に斎藤知事のパワハラ疑惑などを告発し、7日に死亡しているのが見つかった元西播磨県民局長の男性職員は、「死をもって抗議する」という趣旨のメッセージとともに「ワインをちょっとまだ私は飲んでいないので、ぜひまた」「また折をみてよろしくお願いします」などと話した会話の音声データや陳述書を残し、遺族が百条委員会に提出。19日の百条委員会では、この音声データと陳述書の採用・公開が決まりました。

 この音声に対し、斎藤知事は19日、2022年11月に上郡町で行われた意見交換の会合での発言だと認め、その1週間後に上郡町長らが県庁を訪れた際、2本のワインを受け取り、自宅で飲んだことを認め、以下のように釈明しました。

 「いろんな方が知事に機会があれば食べてほしいと、差し入れを頂くことはこれまでもあった。産業振興につなげ、その魅力を伝え、施策につなげていくのは、仕事として大事なこと。素直に頂いていたのは事実」

 斎藤知事は告発されたような“おねだり”ではなく、知事としての「仕事」だとの見解を示しました。

■吉村氏「PRは知事の業務」 ワイン渡した町長「公の場の発言だったので」

 この日、大阪府知事を務める日本維新の会の吉村洋文共同代表は、音声データとワインの受領をめぐる報道について、以下のように疑問を呈しました。

 「知事が県産品のことをよく知ってPRするっていうのは知事の業務の一つだと思う。僕らの感覚でいくと、ワインの名産地がワインを広めたいから、その知事にワインを飲んでもらって知ってもらってPRしていこうというのは普通のことだと思います」

 吉村氏はその上で、斎藤知事に対し「官僚的な言い回しをするのではなくて、自分の記憶に基づいて背景を含めてしっかり発信すべき」と語り、具体的な事実関係を百条委員会で明らかにすべきとの見解を示しました。

 一方で、県庁に同行した町職員を通じてワインを渡した上郡町の梅田修作町長は19日、「おねだりとは感じなかった」とした上で、「公の場での知事の発言だったので、多少は影響した」と当時の心境の心境を明かしています。

■「ロードバイク」「アイアンセット」も?「叱責、罵倒」元幹部の陳述書公開

 斎藤知事への贈答品の受け取りが指摘されているのはワインだけではありません。

 死亡した男性職員の告発や残した陳述書には、ワインのほかにも「コーヒーメーカー」「ロードバイク」「ゴルフのアイアンセット」などが挙げられています。実際、丹波市の廃校活用施設を訪れた際に、斎藤知事が「ぜひ知事室で使いたい」と語り、受け取った木製のいすは、倉庫に眠っていたことが判明しています。

 受け取ったワインに関して、斎藤知事はこれまでにSNSなどで発信はしていなかっと認めていますが、こうした贈答品が、本当に県のPRに活用されていたのか、それとも私的に消費されていたかが重要なポイントになります。

 さらに、公開された男性職員の陳述書には、「職員に対するハラスメントは県政に関する重要事項とか政策遂行上の問題といった次元ではなく、『知らなかった』『気に入らない』『配慮が足らない』『生意気だ』『自分より目立った』といった知事個人にとっての不都合、不満が原因となった叱責、罵倒である」などと記載されていました。

 斎藤知事は告発後、「ウソ八百」などと疑惑を真っ向から否定していましたが、告発ではこのほかにも「知事選で県職員が投票を知人に依頼」「政治資金パーティー券の購入を強要」「阪神・オリックスの優勝パレードをめぐり信用金庫への補助金を増額し募金としてキックバック」など7項目の疑惑があげられています。

■カギを握る約9700人の職員アンケート 証人尋問は約50人

 真相の解明でカギをにぎるのが、知事だけでなく、県職員をはじめとした関係者がどう受け止めていたかです。

 19日の百条委員会では、職員約9700人にアンケートを実施することを決めました、また、8月下旬から8回にわたって関係者の証人尋問を行うスケジュール案が示され、証人尋問は約50人前後になるとみられています。

 ただ、死亡した男性職員は百条委員会の奥谷委員長に対し、亡くなる約1週間前に「プライバシーに配慮して進めてほしい」というメッセージを送っていたことが分かっています。実際に、百条委員会の一部議員が押収した情報について「一切を開示すべき」と主張していたことを知ると、代理人弁護士を通してプライベートに関する情報は開示しないよう申し入れていました。

 告発者が死亡するという痛ましい事態を受けて、百条委員会でもプライバシーや守秘義務をどこまで守るかで、委員の意見が分かれました。

 百条委員会は年内をめどに調整報告書をまとめるとしていますが、どこまで疑惑の真相に迫ることができるのか、その動向が注目されます。

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