【独自解説】“戦うリーダー像”をアピール!トランプ前大統領が党大会初日にサプライズ出席!勢いづくトランプ陣営にイーロン・マスク氏は毎月71億円の献金へ
次期大統領選の共和党の候補者として指名されたトランプ前大統領。7月15日に銃撃を受けましたが、耳にガーゼをつけ党大会初日に現れ、“戦うリーダー像”をアピールしました。大統領選のカギを握るのは“家族”と“副大統領”そして“United”…大統領選の行方を、「読売テレビ」特別解説委員・高岡達之が徹底解説します。
アメリカ大統領選 キーワードは”United(ユナイテッド)”
テレビご覧の皆さんもそうです。私も長いこと生きているとびっくりするニュースがあるものでして、14日からこのトランプ前大統領の暗殺未遂事件が世界をにぎわしていますが、トランプ前大統領が出てきました。耳にガーゼを当てた姿で、撃たれてまだ2日です。一歩間違えば命を失っていたというところからも、こうやって人前に出てくるというのは「アメリカだな、強さを見せるということが大事なんだな」と思います。
実は現地時間で15日からですけれども、トランプ前大統領所属の共和党が、もう決まっていますが「この方を大統領の候補にします」ということを正式に決める大会が開かれていまして、本当は初日に出てこなくてもいいんですが、やはり自身の無事な姿を見せたかったんだろうということで登場しています。
これから選挙戦どうなっていくのかということなんですが、今日はこの言葉で切ってみたいと思います。バイデン政権も連呼しています。トランプ陣営もこの言葉を何度も言うようになりました。”United(ユナイテッド)”。これは米国の正式の国名の最初にも出てきます。正式には「United States of America(ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ)」。この一番上ですね。日本で「合衆国」というふうに訳されますけれども、要は「団結しよう」とか「一つになろう」とかそういう意味なんですが、ここから先はこの言葉、アメリカ大統領になろうという人はものすごく“魔力を与える”と言われますので、今日はこの言葉がどういうふうにこれから出てくるのかということで分析をしようと思います。
共和党大会 トランプ前大統領の家族は誰が出てくる?夫人は疲れて長女は疎遠 新たに注目は二男の妻
一番大事なのは「最終日」なんですよ。最終日に本当はトランプ前大統領が出てきて、「そこまでみんな言ってくれるんだったら、僕は受けましょう」という演説をするんですね。だから、そこへ向けていろんなサプライズのゲストを入れたりして盛り上げるんですが、今回はちょっと注目をされたのは、ここです。「家族」。米国のメディアはずっとこんな言い方しています。「家族の“誰”が来ますか?」と。
8年前、トランプ前大統領が初めて大統領に挑戦した時のことを思い浮かべると、その時はトランプ一家って全員揃うのが大好きで、子どもたちも、その配偶者も、孫もみんな並んで「我々はもう一致団結して支える」ということが良かったわけなんですが、今8年経っていろんなことが変わっています。
まず8年経つと人は成長します。こちらが原寸大のトランプ前大統領です。身長190cmです。はい、このトランプファミリーの中で8年前とっても幼かった息子さんバロン氏です。可愛かったです。今、18歳だそうですが8年経つと成長しました。今、身長2m超え。父親を見下ろすくらいです。しかも男前、モテると思いますけれども、母親のメラニア夫人は「ちょっと政治からは距離を置きなさい」という風にして大事に育てておられると言われています。
年が明けてからトランプ前大統領は、ずっと予備選を戦っていますけども、その8年で変わったと言われているのが、全然姿を現さない二人、メラニア夫人と長女のイバンカ氏です。日本にも来ましたし、テレビをご覧の皆さんもこの二人の名前は分かるというぐらいの人です。妻のメラニア夫人、それから大統領の補佐官として後にホワイトハウスにも入ったイバンカ氏。この二人、全然出てこないです。その理由はいろいろ言われています。メラニア夫人は、世界中から注目されますから「ワシントン暮らし4年間で、もう疲れちゃった」と、政治と距離を置きたいといわれています。今回、三男のバロン氏を父親の応援に出すと陣営が言ったときもメラニア夫人は反対をした、というようなことが言われています。
そして、長女のイバンカ氏の方ですが、ガザ地区でイスラエルが戦争状態になっていることが影響していると言われています。もともと政権にいた時から父親と息が合わないということを言われていたんですが、父親は可愛くてしょうがないお嬢さんだったんですよ。ところが、ご主人がユダヤ教徒で、ユダヤ社会を象徴するエリートです。しかし、長女はですね、父親が大変な選挙と局面の時も、実はイスラエルに頻繁に出かけています。ユダヤ系ですから「イスラエルの応援をするんだ」ということです。ところが今回、大統領に再挑戦するためには8年経って事情が厳しいんです。アラブからの移民がアメリカで増えていますので、トランプ前大統領は今のところはっきり「思いっきりイスラエルだけを押します」という言い方していない。アラブにも配慮のある発言をしています。だから、なかなか距離を取って出てこないんだろうと言われてきたわけです。
その代わりに、この中で新たな応援団がララ・トランプ氏です。日本ではこれからもっと有名になると思います。ララ氏は、トランプ前大統領の二男の妻です。この方が、本当に応援演説の一番スターです。“十八番”はトランプ前大統領のモノマネをします。笑いもとりながら、「うちのおしゅうとさんはすごいのよ」というアピールをします。そして、このララ氏なんですが、話がうまいわけです。我々と同じ業界、元テレビのプロデューサーです。
かつですね、この人は、ずっとトランプ前大統領の横にいる意味があります。この人は、トランプ前大統領の所属政党・共和党の全国委員会のNo.2です。全国委員会は事実上共和党の選挙資金を全部管理しているというところなので、トランプ前大統領からすれば頼りになる息子の妻で、かつ資金面でもバックについているという人です。この人が今一番有名になっているわけです。
じゃあ、今回の暗殺未遂事件を受けてメラニア夫人とイバンカ氏はどうしたのか?久々にコメントが出ました。メラニア夫人は大変長文のコメントを発表しました。「モンスター(容疑者)は、夫の情熱や笑顔・想像力を消し去ろうとした。そして、ドナルドは幸せな時もつらい時も常に一緒にいた、寛大で思いやりがある男性」と、ものすごく夫婦仲がいいということを強調されています。
そして、長い間父親と不仲と言われた長女・イバンカ氏。トランプ前大統領は何度か離婚したり結婚したりしています。その中でイバンカ氏の母親は亡くなっているんですね。その「亡くなった母親が父親を見守ってくれたんだ」というようなことを言って、やはりここも、家族として心配をしていたという表現をしています。やはり、共和党の支持者からすると最高の盛り上がりになるためには、この二人が勢揃いの姿を最終日に見せたら、「もうトランプ前大統領の勢いは止められないよ」というので期待をされています。これがサプライズになるかと思います。最終日の演説も、バイデン政権を非難する言葉も全部やめて、この団結と”United”という言葉に集中する原稿に変えていると言われています。
副大統領候補 人選のワケはトランプ前大統領とバイデン大統領の自動車業界をめぐる争奪戦
もう一つです。これも予定通りというよりは、人選はしているけれども名前はなかなか明らかにしなかったんですが、「副大統領候補」を今回発表しました。正直申し上げて、トランプ前大統領は大統領になったら、全部自身が決めるので、副大統領というのは本当のNo.2になるかどうかということなんですけれど、やっぱり選挙戦を一緒にこれから戦いますので、大切なのは「どんな『物語』を持っている人ですか?その人をどうやって選んだんですか?」ということになるんです。
今回、副大統領候補に選ばれたJ・D・バンス上院議員ですが、まず年齢にご注目です。39歳。事実上40歳下の方を選んだということになります。もちろん良くない想像ですが、トランプ氏が大統領になってから、何かしら健康上の問題が発生して、大統領を続けられないという場合は、この人がもうその時点での選挙なしで大統領になります。次世代を象徴する年齢である。50代でもない。上院議員ですけども非常に若い。まだ1期目です。この人は、オハイオ州生まれです。オハイオ州には日本の自動車工場もありますけれども、“錆びついた地域”というあだ名で呼ばれて、昔からある製造業が儲からなくなって、白人の人たちも白人なのにアメリカでは非常に暮らしが辛いというところで生まれ、おじいちゃんおばあちゃんに育てられました。つまりご家庭にちょっと事情があったということになります。しかも、これアメリカの政治家になるために大事です。戦争に兵士として行った経験がある。そして、苦学してエール大学という大変優秀な大学を出て、経営のコンサルタントとして成功し、そしてこの地域で生まれた人たちの人生を描いた本でベストセラー作家になり、そしてトランプ氏の応援を得て上院議員になった。つまり、政治のおかげで白人で恵まれない境遇になっていた、つまりトランプ前大統領の一期目を支えた人たちの思いを、まさに“アメリカンドリームで跳ね返した”ということを共和党の大会で強調できるような人を選んだということになります。下馬票では、黒人を選ぶんじゃないか、女性を選ぶんじゃないかと言われていました。これは、アメリカの大統領選挙の戦い方の一つの方法ですが、その時点で「ここの票は弱いよね」というところは少し押したいと、そのためにこの方を副大統領候補にします。でもなったら大統領が万能で全部やるということもあります。
もう一つは、今回の事件の前から、「ちょっとトランプさんにしては得意な分野なのに苦しいかな」と言われたのは、車社会を巡ることです。トランプ前大統領は古くからの製造業を支持していますから、アメリカは産油国ですし、ガソリンを使うような、いわゆる「これから減っていくような車も応援します」ということを言っていました。ところが、バイデン大統領の現政権は、「もう全面的に電気自動車の社会がきます。だから電気自動車を応援します」と、ご自分も乗ってアピールしていました。ということで、全米の自動車の労働組合というのが、元々共和党派なんですけれども、バイデンさんも、「いや、私も推薦してもらうことになったよ」と言ったりして、取り合いをしいていたわけなんですが、そういう意味ではバンス上院議員はそういう“製造業の子どもたち”を代表する人だということもあって、少しこの車の票を取りたい。また、先ほどから話題に出ている今回の暗殺未遂事件があった途端に、この電気自動車を一番作っているメーカーの社長のイーロン・マスク氏が「いやもうこれはトランプさん勝つぞ」と思っているのでしょう。すごいですよ、「これから毎月71億円をトランプさん陣営に寄付し続けます」となりました。ということは、今はトランプ前大統領は電気自動車のことをあまり良く言っないんですが、トランプ前大統領は、その立場になったらどんどん言っていることを変えると言われます、これは、経営者の側からすると「柔軟性がある」というふうに言われたりするところもあります。
さあ、難しいのは、バイデン陣営で、正式の指名まであと1か月あります。トランプ陣営はもう選挙戦スタートしてしまいます。そうなると両方で、もうこの国名“United States of America”の言い合いになります。どっちがこの言葉の中の”United”という言葉に説得力を持たせて、11月のゴールで勝利を勝ち取るかということになります。“United”対”United”が始まります。
(「かんさい情報ネットten.」2024年7月16日放送)