北陸新幹線の延伸ルート 年内決定を断念「地元同意が最優先」京都で地下水への影響懸念 仏教会も反発
北陸新幹線の新大阪までの延伸をめぐり、与党の整備委員会は20日、「地元への説明が最優先」などとして、今年中のルートの決定を断念しました。
与党プロジェクトチーム・西田昌司 委員長
「地元合意ができないと工事が進められないわけですから、最短で行うためにも、まずは地元の同意が得られることを最優先でやりたい」
新大阪駅と敦賀駅の間を結ぶ北陸新幹線の延伸計画。この日、与党の整備委員会は年内のルート決定を見送る決断をしました。
検討が行われていたのは敦賀駅から福井県小浜市を経由し、その後、京都駅方面を目指す「小浜・京都ルート」。
これまで3つのルート案が示されていましたが、JR京都駅の東西方向を通る案を排除し、京都駅の南北方向、もしくはJR桂川駅近くを通る案の2案に絞ることに。
京都側から、工事による地下水への影響が懸念されると指摘を受けたことなどから、影響が最も大きいとみられた「東西案」を排除し、反発を少しでも押さえたい考えです。
これに対し、京都では根強い反対の声も。
京都で150年以上続く、黒染めを専門とする染屋。独特な風合いを生むのに欠かせないのが「京都の地下水」だと言います。
馬場染工業 黒染師・馬場麻紀さん
「この井戸水に微量な鉄分が含まれていることによって、染めもすごくいい色が出るので、心臓である水がなくなってしまうのは、伝統産業をやらなくていいという命令かなと」
京都にとって地下水は、市民の暮らしにも深く関わっています。
(Q:他の水と違いますか?)
「まろやかな。味が優しいです」
「料理屋で地下水を使っていて、くみに来させてもらっています。町のみんなが使える水なので、貴重な資源だと思います」
19日は、京都仏教会が計画の見直しを求める申し入れを行いました。
京都仏教会・宮城泰年 常任理事
「はっきり申しまして、再考してくれではなく、これでよいのかという問いかけでございます」
地下水への影響だけでなく、工事に伴う膨大な量の残土の処理を巡り、市民生活への悪影響が出るのではないかと訴えています。
ルートの最終決定は来年以降に持ち越されましたが、果たして、地元に納得のいく説明ができるのでしょうか。
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(中谷しのぶキャスター)
改めて今回検討されていた3つのルートですが、敦賀から新大阪までの間、京都で3つの案がありました。詳細はこちらでです。
京都駅を「南北に貫く案」と、「東西案」、そして「桂川案」の3つがあって、今回、「東西案」はなしで、「桂川案」と「南北案」に絞った。つまり、1つの案には絞れなかったということです。
それで、今月中にルート決定することを断念して、再来年3月末までに着工することも困難、との見方が出てきたということです。
今回、与党のプロジェクトチームの西田昌司委員長は、このように話しています。
「地下水への影響に強い懸念があった東西案を今回、外しました。地元からの懸念は非科学的な根拠もたくさんあって、科学的知見に基づいて説明していかないといけない。地元の同意を最優先でやりたい」ということです。
では、科学的知見とは何か、と見たときに、来年8月までに示される環境影響評価書、これが8月までに公表されるということです。
地元・京都の皆さんからも、このような声が上がっています。
京都仏教会からは「千年の愚行」「京都が京都でなくなる」トンネルが地下水を途絶えさせ、地盤沈下を起こすことなどを危惧されています。
染物業にとっても「水は心臓であって、この水がないと仕事ができなくなる」という声が上がっています。
地元の皆さんの同意というのが必要になりますよね。
(横須賀ゆきの解説委員)
そうですね。特に地下水などの影響は、トンネル工事なども含めてリニアでも問題になっているので、改めて検証がすごく重要だなと思います。
本当に必要だったら、こんな長い年月かけなくても、急いで着工して他のルートを探すことになるんですよ。ただ、整備新幹線もそうですが、リニアも着工してて、そもそも東海道新幹線が元々あってという中で、この北陸新幹線の延伸が、どのくらい人口減少が進む中で必要なのかどうなのか、ルートの再検討も含めて改めて、未来を描くときに検討するのも一案じゃないかなと思います。
(中谷キャスター)
総合的に考えていかないといけないですね。