【特集】いってらっしゃい、ミゾレ!日本初の人工哺育で育ったワモンアザラシ 人の手で命が繋がれた人気ものが、水族館の未来を繋ぐため新たな地へ…生まれてから出発までの日々
海遊館の人気者・ワモンアザラシの『ミゾレ』が、11月28日の朝、北海道・小樽市の「おたる水族館」へ引っ越しました。水族館の未来を繋ぐための“旅立ち”です。生まれた直後は低体温症で命の危険もありましたが、多くの人に愛され、すくすく成長した『ミゾレ』。生まれてから出発までの日々を振り返ります。
アザラシなのに泳げない!?日本初の「人工哺育」で育ったミゾレ
つぶらな瞳に、ムチッとした体。オスのワモンアザラシ『ミゾレ』は、愛くるしい姿で海遊館のアイドル的な存在です。
(ミゾレのファン)
「ミゾレ推しなので、ひたすらミゾレを追いかけていました。もう大好きだよと、それだけです」
ミゾレは2021年4月、海遊館で生まれました。すぐに低体温などの症状が現れ、危険だったため、ワモンアザラシとしては日本で初めて、飼育員が親代わりとなる「人工哺育」で育てることになりました。
(ミゾレ担当の飼育員・竹内慧さん)
「これが、水泳訓練を最初にやったときの写真じゃないかなと思うんですけど」
生後3週間のミゾレは緊張した様子で、生まれて初めてプールへ。そして…。
水に顔をつけたミゾレは、ビックリした様子。鼻からブクブクと泡を出し、この表情。この「初めて出会った水に驚く姿」が話題を呼び、動画は130万回以上再生され、一躍人気者になりました。
(竹内さん)
「すごく話題になって、ミゾレを知ってもらうきっかけになったんですけど、僕はこのとき逆に、アザラシなのに泳げないことにすごく衝撃を受けて、かつ不安を覚えました(笑)」
人懐っこく、多くの人に愛されてすくすく成長 しかし、“お別れのとき”が…
そんな心配も吹き飛ばし、愛情を注がれた『ミゾレ』は、すくすく成長しました。大きくなってからも飼育員にべったりで、水槽の掃除では、じゃれついて離れません。実は、こうした様子は、なかなか見られない光景なんだといいます。
(竹内さん)
「本来ワモンアザラシは、結構神経質だったり警戒心が強い一面があったりしますが、ミゾレに関しては本当に人にくっついてくるのが大好きなんです。本当に毎回来ます」
そんなミゾレも、2歳に。将来に向けて、パートナーを見つける年齢が近づいてきました。
(竹内さん)
「『おたる水族館』へ、引っ越しが決まりました。そこでうまく繁殖をしてくれれば、今後、ワモンアザラシの国内での展示を支えていく重要な役割を果たしてくれるのかなと思います」
国内でワモンアザラシが展示されている場所は、わずか4か所で、その数も10頭ほど。水族館同士で協力し、繁殖に取り組むことで、持続的な飼育や生態系を守るための研究を進めることができます。
(竹内さん)
「何かのきっかけで、すぐに国内で展示ができなくなってしまう状態にもなりかねないので、本当にこれが『大きな一歩』になってくれたらと思います」
いってらっしゃい、ミゾレ!未来への期待を背負って、いざ旅立ちのとき
28日、朝。旅立ちのときがやってきました。木箱に入れられて、台車で運ばれるミゾレは、箱の中から掘ったり隙間から鼻を出したりと、生まれて初めての「海遊館の外の世界」に落ち着かない様子です。竹内さんが、「大丈夫、大丈夫」と優しく声をかけます。
(竹内さん)
「やっぱり、ちょっと落ち着きがない感じがしています。このあと落ち着いてくれたら良いんですけど」
(飼育員)
「ミゾレ~」
飼育員に名前を呼ばれると、徐々に落ち着きを取り戻しました。職員だけでなくファンも駆けつけ、いよいよ出発の時を迎えました。
(ミゾレのファン)
「寂しいです」
「小樽に行きます」
「私も行きます」
人の手で命が繋がれた『ミゾレ』。水族館の未来を繋ぐための期待を背負った、新たな地での生活が始まります。
(「かんさい情報ネットten.」2023年11月28日放送)