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天国へ届け!全国の足音 守護神を支えるもの

2021年12月22日 16:15
天国へ届け!全国の足音 守護神を支えるもの

12月28日に東京・国立競技場で開幕する『第100回全国高校サッカー選手権』。愛知県代表の中部大第一は、29日に大津(熊本県代表)との初戦を迎えます。中部大第一のチームの特長と注目選手を紹介します。

■どん底から頂点へ

『県3部から全国へ』。これを合言葉に中部大第一は今季を戦ってきました。選手権では無失点で愛知県の頂点に立ち、見事、有言実行。しかし、ここまでの道のりは順風満帆ではありませんでした。夏のインターハイでは県大会の初戦で敗退。「自分たちで崩れていく場面が多く、何も良いところがなかった」と伊藤裕二監督は当時を振り返ります。

監督から「最弱世代」と言われた選手たちは、この試合をきっかけに持ち味の笑顔が消え、“どん底”に落とされました。「“チームを上手くまとめられなかった”と責任を感じていたキャプテン・大嶽匠矢選手(3年)の姿に、周りの3年生が大嶽選手をサポートするようになった。そこからチームにまとまりが生まれ始めた」と伊藤監督。“チームのため”に走り、“チームのために”戦う。まさに“For the team”精神が中部大第一に根付きました。「急坂ダッシュ」の過酷なメニューでは、足が止まりそうでも、嘔吐してしまうことがあっても、脳裏によぎるのは“チームのために”。この思いで厳しい練習を乗り越えてきた中部大第一は、優勝経験のある愛工大名電や刈谷、東邦といった強豪を相手に、試合終了のホイッスルまで走り抜く“全員サッカー”を繰り広げ、創部54年で初めて愛知の頂点に輝きました。

「最弱世代と言われてから“すべて”が変わった。別のチームになったのではないかと思うくらい、練習の質や試合の意識が変わった」とDF北村昌樹選手(3年)。どん底を経験したチームの初めての全国。プレミアリーグ所属の“超超格上”大津という強豪相手でも彼らの足が止まることはないでしょう。

■天国へ届け 全国の足音

初の全国切符を“無失点”で掴んだ中部大第一。やはり守護神・GK下村駿季選手(2年)の存在が欠かせません。県大会で格上相手に何度もビッグセーブを見せてきた下村選手は「小学1年生から始めたサッカー人生のなかで“自分の一番が出た大会”だった。格上選手からのシュートを止めるたびに自信に繋がった」と振り返りました。

いつも明るく、ピッチ全体に響く大きな声でチームを引っ張る印象が強い下村選手ですが、彼を支えるのはある特別な思いでした。2年前・中学3年の時に父・栄司さんが肺がんを患い、この世を去ったのです。「ショックだったし、今後サッカーを続けられるのか悩んだ。家族があってのサッカーなので、まずは家族を大事にしたい思いが強くなった」と高校の進路を決める時期と重なり、悩んだといいます。「でも自分はやっぱりサッカーが好きで、自分にはサッカーしかない。サッカーで家族を元気にしていきたい」という思いで中部大第一高校サッカー部に入部。試合当日は必ず自身の一番のサポーター・父に手を合わせ出発。また、調子が良くなかった時は天からの父の声に耳を傾けるなど、一緒に戦ってきました。県大会“優勝”で終えた下村選手は「お父さんありがとう。お父さんの力もあったと思う。これからケガをせず練習して、大津高校戦を迎えられるようにお願いします」と父の遺影の前に金メダルを捧げました。

「サッカーで家族を元気にすることは、チームを盛り上げることにも繋がる。お父さんも一緒に全員で戦いたい」――苦しい時もいつも父の存在を感じながら乗り越え掴んだ夢舞台。大津の超高校級のシュートを止める姿を父・栄司さんは天国から見守ります。

※写真はGK・下村駿季選手

(取材・文:高校サッカー選手権民放43社/中京テレビ放送)

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