【特集】狩猟免許取得への道 銃の管理は?射撃の技術習得は?高齢化による課題も…
今シーズンの狩猟が、今月、解禁されました。
狩猟を始めるにはどんなルールがあるのか、進藤拓実記者が取材しました。
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【進藤拓実 記者】
今シーズンは1日にクマやイノシシが、カモなどの鳥類の狩猟が15日に解禁されました。
狩りは、趣味で楽しんだり動物の肉や皮を活用して生計を立てたりと目的は人によって様々です。
ただ、狩猟をするためには免許が必要です。
猟銃など、道具に関する知識のほか、視力や運動能力といった身体の適正検査、それに、狩猟が許されている動物を見分ける技能試験などをクリアする必要があります。
狩猟は、増えすぎた動物による農作物被害を防ぐことや、生態系の維持といった役割も担っています。
そのため、動物によっては、捕獲できる数や期間、それに狩猟できる場所も細かく定められています。
一般的に狩猟と聞くとまず思い浮かべるのが「銃」ですよね?
銃を持つためには、免許とは別に、警察から許可を受ける必要があります。
銃を扱うにはどういった手順を踏むのか。
また、管理をするうえでのルールはどうなっているのか。
取材しました。
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県内に6か所ある射撃場のひとつ、由利本荘市の県立総合射撃場です。
取材した日は、猟銃の所持許可を得るための技能講習会が開かれました。
受講したのは3人。
農作物に被害を及ぼす鳥獣駆除や狩猟目的のため銃の所持を目指しています。
「こういうふうな形でやると暴発した場合は、自分にはね、返ってくるか、脇の方に飛んでいく可能性も十分ありますので、これは必ず(体の)一部に固定して上を向けて」
指導員を務めるのは、警察から委託を受けた、三浦俊雄さん75歳。
20年以上、銃を扱っている、ベテランハンターです。
銃を扱う上で最も重要なのが、安全面です。
銃の向きに気を配るとともに、持ち運びの際に、中に弾丸が入っていないことを確認することも必要だといいます。
「実包装填なし」
「安全装置はあくまでも引き金が引けないという装置なんです。ところが、中の機構は動いてますので、弾が入って落とすと暴発するということもある。安全装置は必ずしも安全でない」
事故を防ぐためには、いち早く異常に気付く必要があり、そのためには、銃の構造を把握しておくことが大切です。
菊地隆宏さん
「イノシシが出て、その対策にと思って、のがきっかけで、それに対応できるような状況を作っていきたいなとは思うんですけど」
武田みどりさん
「主人と主人のお父さんがもうずっと長くやっているので、家族で共通な趣味を持てればいいかなと思って挑戦しました」
実際に、銃の管理はどうしているのか。
現役の若手ハンターを訪ねました。
4年前に免許と銃の所持許可を得た、芳賀駿太郎さん34歳です。
秋田市の猟友会に所属していて、毎年この時期に仲間と狩猟をしています。
持っている2丁の猟銃は、普段、自宅の専用ロッカーで保管しているといいます。
芳賀さん
「ロッカーの鍵なんかも自分しか分からない場所に保管したりして」
記者
「見せてもらっていいですか?」
芳賀さん
「それはちょっとできないんですよね」
記者
「あ、そうなんですか…」
芳賀さん
「そのロッカーの場所も、第三者にはなるたけ教えたくないので、もし悪い人が来てここに鉄砲あるんだっていうそういうふうなのもまた避けたいですし、それもまず自分と警察だけが知ってるような感じになります」
管理のルール上、明かせないことになっているため、保管している様子を絵で書いてもらいました。
芳賀さん
「ここにもうひとつ、こう南京錠の鍵がかかってて、まぁ安易には持ち出せないような感じになってます」
銃の管理には、ほかにも弾丸用のロッカーも用意して別々に保管しておくこと。
また、ロッカーは、それぞれ壁や床に固定するか重りを入れて、持ち運べないようにすることなどの決まりがあります。
適切に銃を管理して、先輩ハンターから知識や技術を学び、狩猟をしているという芳賀さん。
やはり安全面への配慮が最も重要だと話します。
芳賀さん
「当然だと思いますね。危険物なんで、やっぱりこのくらい厳重に管理しないと、やっぱりなんか事故あってからじゃ遅いですし」
「銃を持ってることがまぁ自分の中で抑止力になるというか、普段の生活気を付けるというか、そういう点ではやっぱり鉄砲持って(意識が)変わった点ではありますね」
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銃の取り扱いには様々なルールがあることをお伝えしてきましたが、県によりますと、今年度は、先月末までに160人あまりが新たに狩猟免許を取得しています。
県に届け出をしている狩猟者の年度別の人数を見て見ると、今年度は先月末時点で1763人と、10年前・2014年と比べると、100人あまり増えていますが、ほぼ横ばいで推移しています。
ただ、高齢化が課題となっています。
今年度の狩猟者を年代別にまとめてみると、県の集計方法により、60代以上はひとまとめになっていますが、この世代が全体の6割あまりを占めています。
芳賀さんのような若い世代のハンターは、1割にも満たないのが現状です。
年齢を理由に引退するハンターが増えると、農作物被害の軽減や生態系の維持といった狩猟が担う役割が将来的に果たせなくなることも懸念されています。
県と市町村は、免許の取得を促すために、猟銃や保管ロッカーの購入費を助成したり、勉強会を開いたりしていますが、生活スタイルとの兼ね合いなどで、若い世代の取得が進んでいないのが現状です。
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技能講習会では、銃の所持を認定する射撃試験も行いました。
銃の安全な管理はもちろんですが、猟銃を所持するためには、当然、射撃の精度も求められます。
弾丸は1人100発。
まずは感覚に慣れて、最終的に、的に命中させることが目標です。
三浦さん
「最初は反動、ちゃんと頬っぺたさつけて、反動を、いかに反動があるか分かってもらえば」
撃ち始めは反動に戸惑う場面も見られましたが、指導を受けながら回数を重ねると、徐々に命中するようになりました。
今回受講した3人は、無事に合格の判定を受けました。
三浦俊雄さん
「私も厳しいところ注意しましたけども、危険な行為はやっぱり注意して、もし事故等々につながると大変なことになります」
湯瀬佳和さん
「普段こう追うってことがないじゃないですか、目で追うってのがやっぱり体がついていかないですよね」
「頑張りたいっすよね、どうせ銃持つなら当てたいってか、やっぱり」
武田みどりさん
「(仲間と)みんなでこう回って足手まといにならないようにしていたいと思います」
菊地隆宏さん
「獣を撃ったりというほかに、今日射撃場でやってみて、スポーツとしての楽しみ方も十分あるなとは思っていて、そっちの方面でもスキルを伸ばすというところも含めてできたらいいのかなと思います」
何よりも安全が重要となる、銃の取り扱い。
自分はもちろん、周りの人も安全に狩猟を行うためには、手順をしっかりと守っていくことが必要です。
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【進藤 記者】
私は去年、市街地に出没するクマによる被害を取材する機会が多かったんですが、増えすぎたクマやイノシシなどを、狩猟によって適正な数に保つことは、私たちの生活環境を守ることにも繋がることだと感じました。
安全面に配慮した上で、若い世代が熟練の技術や経験を受け継いでいくことが、今後、ますます重要になってきそうです。