【特集】お寺の本堂でボクシングエクササイズ!?教えるのは異色の肩書と経歴を持つ男性 秋田市
ボクシングのエクササイズ教室の会場は、なんとお寺の本堂です。
熱心に指導していたのは、元プロボクサーの男性。
子どもたちに「お寺を心のよりどころにして欲しい」と願う異色の肩書を持つ男性を取材しました。
秋田市浜田にある徳圓寺で毎週火曜日に行われている「ボクシングエクササイズ」。
小学生やその家族など、多い時には30人ほどが集まり、汗を流しています。
朝倉建吾さん
「よっしゃ、次はスタンス広げてワンツーね、50ね」
指導するのは、朝倉建吾さん、46歳。
元プロボクサーです。
中学校を卒業して上京、19歳でプロテストに合格し、スーパーライト級のプロボクサーとして、約2年、リングに立ちました。
現役を退いてから20年以上経ちますが、瞬発力はいまだ衰えません。
そんな元プロボクサー・朝倉建吾さんが開くエクササイズ教室の会場は、なんとお寺の本堂。
朝倉さんは、この寺の「住職」を務めています。
日本海にほど近い寺の長男として、朝倉さんは生まれました。
朝倉さん
「中学校ぐらいから、長男なので、無言のプレッシャーはありましたけども」
「いろんなことに縛られることがすごく嫌だったんでしょうね。 自分で何かつかみ取りたいってい うか、確かな自分って何だろうみたいな。そういうので飛び出したって感じですかね」
関向良子アナウンサー
「(お父さんは)快く送り出してくれたんですか?」
朝倉さん
「いやいやいや、もう親父とは仲良くなかったので、もうスパルタでやられていましたから。くそーという気持ちで、いまに見てろよみたいな、 俺だって!みたいな。だからもう家出同然ですよ。16で家を出てジムに入って、寮に入って新聞配達をしながらボクシングをするっていう生活を」
自分の夢を追いかけた、朝倉さん。
プロテストに合格すると、ボクサーとしてめきめき頭角を現します。
いま唯一手元に残るプロ時代の朝倉さんの写真は、”格闘技の聖地”とも呼ばれる東京の後楽園ホールで迎えたデビュー戦。
見事、勝利を飾りました。
朝倉さん
「(成績は)4勝1敗ですね。 これからっていうときに辞めてしまったので。全部で5戦です 」
関向アナ
「なんで辞めたんですか?」
朝倉さん
「生意気だったので、ジムの会長の息子さんともめてしまって、試合に出られなくなっちゃった」
「絶望的でしたね、本当にもう。そのあとに父の勧めで大谷大学に行って、 仏教を学んで来いと」
ボクシングで頂点に立つ、その夢を諦めざるを得なかった時、新たな道を示してくれたのは、かつて反発した父と、仏教でした。
朝倉さん
「若い頃は何者かになりたいっていうのがあるじゃないですか。 そうしなければ自分自身が納得できないし、幸せになれないっていうふうな考えだったんです けど。(仏教の)先生は、なんでそんないいものになろうとするんだ、お前はお前でいいじゃないかと。そういうことから気持ちが晴れていったというか」
朝倉さんは、結婚して子どもが生まれたのをきっかけに、秋田に戻って、寺を継ぐことを決めました。
朝倉さん
「いまの現時点の自分というのをちゃんと受け止めて、大事にして、それから一歩一歩進んでいくんだっていう。その失敗だったりとか苦しみがあったからこそいまがあるんだなと」
「すべてが今に繋がっている」。
朝倉さんの信念です。
お寺を、心のよりどころにしてほしい。
その思いから、本堂で子どもたちを指導しています。
関向アナ
「思ったよりもボクシングですね 」
朝倉さん
「ですね、最初はボクササイズにしてたんですけど、みんなの体力もあがってきたので、いつの間にかレベルが上がっちゃいまし た」
1時間みっちり体を動かしたあと、みんなで掃除をするまでが、朝倉さんのボクシングエクササイズです。
関向アナ
「お寺っていうのはあまり特別な場所では?」
朝倉さん
「ないですないです。気軽に自分らしく素の自分でいられる。あなたがどんなあなたであっても、あなたを受け入れるっていうのが、仏様の要の教えですから」
「強くなるというよりも、精神的なところを子どもたちにすごい伝えたいのはあります。辛い時に自分の力を発揮できる、それが一番大事。一歩踏み込める力、伝えたいです」
朝倉さんと仏様が優しく見守る中、子どもたちの心と体が磨かれています。