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“0歳から120歳まで通える”おむすび専門店!週5でおむすびを無料配布、車椅子やベビーカーの移動もラクラク

2023年11月1日 18:00
“0歳から120歳まで通える”おむすび専門店!週5でおむすびを無料配布、車椅子やベビーカーの移動もラクラク

「子供たちが“おむすび1個”食べられる状態を作りたい」という思いから、週5日に握りたてのおむすびを無料で配布。その試みは、店のお客さんや地元の人たちの“ある行動”によって支えられていた。

具材は50種類以上!車椅子やベビーカーも利用しやすい空間

愛知県半田市にある、おむすび専門店「おむすびカフェにこり」。店内で味わえる、おむすびの種類はなんと50種類!梅やしらす、昆布など定番の具はもちろん、キーマカレーや塩さばと甘酢生姜を合わせた“変わり種”など、お店ならではの具も人気を集めている。おむすびは、すべて“握りたて”。お店を営む森脇友里さんは「ランチがないという時でも、ここに来たら、いつでも“握りたて”のおむすびが食べられると思っていただけたら嬉しい」とおむすびへのこだわりを語る。米粉を使用した「ガトーショコラ」など体に優しいスイーツメニューにも注目だ。

おむすびだけでなく、店内の設計にも森脇さんのこだわりが満載。お店のコンセプトは、“0~120歳まで、どなたでも通える”こと。店内の通路やトイレ・個室の入り口は、ベビーカーや車椅子がゆとりをもって移動できるように幅広く設計。入店から席への着席、トイレの行き来など、店内をスムーズに移動することができる。

トイレは、子どもから高齢者までおむつ替えなどができる「ユニバーサールシート」を配置。個室もベビーカーや車椅子に人を乗せたまま入っても、ゆったり過ごせる広さが用意されている。

通常メニューを“嚥下食”に変えられるサービスも実施

幅広い人々が利用できるよう、様々な配慮が行き届いている店内。そこには、森脇さん自身の“実体験”が活かされていた。2児の母でもある森脇さん。小学1年生の7歳の息子・蒼葉くんには、脳に重度の障がいがあるという。生まれた当初は寝たきりの生活だったこともあり、「小さい頃はみんな一緒だった」と蒼葉くんと同年代の子供たちの様子を振り返る森脇さん。しかし、蒼葉くんが成長していくなかで、“あること”を感じる機会が増えたという。当時の様子について、「(蒼葉くんの)体が大きくなるにつれて、移動がしづらいな、お店って入りづらいなとか色んなことを考えるようになってしまった」と話す森脇さん。このカフェには、森脇さんが“蒼葉くんの母”として、“欲しかったもの”が反映されているのだ。

また店内では、飲み込む力(嚥下)が弱い人に無料でミキサーを貸し出し。さらに、一緒に料理が楽しめるよう、通常メニューを嚥下食(えんげしょく)に変えられるサービスも実施している。

ミキサーや嚥下食のサービスについて、「(嚥下食を食べる子供たちは)普段は親が食べている姿を、見ているだけということが多い。だからこそ、自分の目の前に料理が運ばれてきて、その料理がミキサーにかけられている様子を見ていると、“これが、私が食べるものなんだ!”と笑顔になってくれる。みんなで同じ御飯を共有できることは、お母さんたちにとっても嬉しいことなんです」と話す森脇さん。親目線のアイディアと配慮は、同じ境遇の家族たちにとっても大きな支えとなっている。

週5日に“おむすび1個”を無料配布!

去年から、新たな取り組みにも挑戦している森脇さん。それはなんと、「週5日、子どもたちにおむすび1個を“無料”で配ること」。おむすびをもらいたい人は、カフェのスタッフに“元気のよい挨拶をすること”がルールだ。取材時も、店内にはおむすびをおいしそうに食べる子どもたちの姿がいっぱい!週に3回来ていたり、「昆布が一番おいしい!」とお気に入りの具を見つけていたり、子どもたちの憩いの場となっている。

取り組みのキッカケについて森脇さんは、「今の子どもたちって、学校が終わった後も塾や習い事がある。家に帰って御飯を食べる時間が、午後9時~10時になってる子も。そんな子供たちがいつでも“おにぎり1個”を食べられる場所を作りたかった」と話す。実は無料配布のおにぎりに使用されているお米は、お店のお客さんや地元の人からお店に寄付されたもの。地域全体がチームとなって、この取り組みにチャレンジしているのだ。

そんな地域の人々の想いは、子供たちにもしっかり伝わっている。お店の壁には、おむすびを食べた子どもたち寄せられた感謝のメッセージがびっしり。“おいしかかった”、“いつもありがとうございます”など、葉っぱをモチーフとしたメッセージカードには様々な言葉が手書きで伝えられている。

「子供達の笑い声って、元気がもらえるし最高なもの。“手と手“、“心と心”が結ばれる、ということで「おむすび」と名付けた。みんなが結ばれたらいいなと思います」と店名の由来を語る森脇さん。

握りたての“おむすび”が繋ぐ地域と子供たちの絆は、子供たちの“おいしい”笑顔とともに、これからも続いていくことだろう。