“ママべったり”だった5歳の女の子が変化したワケ 子どもを輝かせる“特別な舞台”が開演 仕掛け人は有名劇団出身の俳優たち
顔も隠して、ママにべったりくっついていた女の子。ところが2日後、ミュージカルの舞台に立てるほど、動きが一変していました。元有名劇団の俳優が仕掛けるプロジェクトとは…?
子どもたちに表現する喜びを… 俳優らが名古屋初の表現ワークショップ開催
ステージ上には、車椅子の子や小さな女の子の姿も。劇団四季や宝塚歌劇団出身の俳優らが所属する「心魂(こころだま)プロジェクト」が企画したこのミュージカル、ある子どもたちを集めて行われた特別なステージだったのです。
ミュージカル上演の2日前、全国を回る「心魂プロジェクト」は、病気や障害のある子どもと、その兄弟を対象に、名古屋で初めて表現ワークショップを開催しました。
そこで「1、2、3…」というかけ声と共に、リズムに合わせてライトを光らせていたのは、18歳の歌子ちゃんです。わずかに動く足でスイッチを押していました。それぞれが自分のできる表現方法を探していきます。
ワークショップ後には、「こころだまさいこう」と自分で文字を打ち込み、想いを伝えた歌子ちゃん。「できると思った?」というお母さんの問いにも、目の動きで「うん」と返事をします。
そんな姿を見た歌子ちゃんのお父さんとお母さんも「すごく自信をもてたんで手応えを感じています」とワークショップの効果を感じているようでした。
心魂プロジェクト 寺田真実さん:
「病児だけに限らないですよ。疎外感を味わっている人は世の中にたくさんいるので、みんながそこの違いを見るのではなくて、みんな同じ方向を向いて進んでいけたらいいよね、パフォーマンスを作ることで」
お母さんに抱きついて離れない… 姉を病気で亡くした5歳の女の子
参加者の中には、おねえちゃんを病気で亡くした子も。神谷和日子(わかこ)ちゃん、5歳です。おねえちゃんの十和子(とわこ)ちゃんが脳幹に腫瘍ができる病を患い、和日子ちゃんが1歳半の時に天国へと旅立ちました。
おねえちゃんが入院中、和日子ちゃんはおばあちゃんに預けられることも多く、一時退院でお母さんが帰ると、べったりくっついて離れなかったそうです。
それから3年余りがたち、和日子ちゃんはおねえちゃんの年齢を超える5歳になりました。お母さんも「無事に長女の年齢を超すかと思うと感慨深い」と話します。
ですが、ワークショップが始まっても、和日子ちゃんはお母さんに抱っこされたまま離れようとしません。
そこで、心魂プロジェクトの寺田さんが「自分たちも一緒にパフォーマンスをしよう」と提案。人前で表現することに慣れていない和日子ちゃんの心情を察したのです。いろんな状況の子と接してきた経験を生かし、子どもに合わせて寄り添います。
心魂プロジェクト 寺田真実さん:
「見られることよりも、自分が見ることにベクトルを移す必要があるなと思ったので、徐々に変えていきました」
さっそく功を奏したのか、ついに和日子ちゃんが動き出しました。見よう見まねで手足を動かします。でも、表情はかたいまま…。果たして本番は、笑顔を見せてくれるでしょうか?
いよいよ本番! 自分の足でステージへ…
こうして迎えた本番当日。会場に到着すると、プロジェクトのメンバーたちが和日子ちゃんの気持ちを盛り上げようと明るく接しますが、お父さんに抱きついて顔を隠してしまいました。
それから30分後、いよいよ開演の時間。
心魂プロジェクトの有永さんが「今日一緒に力になってくれる人がいませんでした?」とステージ上から呼びかけると、なんと和日子ちゃんは自らお父さんの膝から降りて、ステージへ向かいました。お客さんではなく、出演者として舞台に上がります。
ソーラン節を堂々と踊りきると、最後はかっこよくポーズを決めました!
無事に踊りきり、和日子ちゃんに笑顔が浮かびます。
この達成感こそが、プロジェクトの狙いだといいます。
心魂プロジェクト 有永美奈子さん:
「緊張するんですよ、出るって。その緊張する時間を過ごすのがゴールデンタイムだよ。何か自信になったり、何かヒントになったりしてくれる」
人前で表現する楽しさを、ミュージカルを通して感じることができたようです。こうした取り組みが全国に広がれば、難しい状況に置かれた子どもたちもいろんな経験ができるかもしれません。