「税金で動いている限り試行錯誤できない」 名だたる大手企業が熱視線を送る“尾鷲の森” 衰退する林業の“起死回生の一手” 木を切らずに森の価値を高めた方法とは…? 三重・尾鷲市

「税金で動いている限りは、行政の仕事は試行錯誤ができないんですよね」
こう語るのは、市役所の課長。企業活動の一環として組み入れられれば、何百年先の林業の新しいアプローチになるかもしれないと、前例のない挑戦を率いることになりました。失敗が許されないチャレンジで、森に再び価値を見いだすことはできるのでしょうか。
かつての栄えた姿を取り戻す…林業復活のカギは「脱炭素」
人口1万5524人の三重県尾鷲市。山と海に囲まれ、面積の92%を森が占めます。今、この“尾鷲の森”に興味を持つ人が、全国各地、さらには海外からも、ひっきりなしにやってくるのです。
案内するのは、尾鷲市役所水産農林課の芝山課長です。林業の厳しい現状を、訪れた人たちへ訴えます。
尾鷲市水産農林課 芝山有朋課長:
「木を切って植えようという人が減ってしまうんですね。価値なんです。そこにどう価値をつけていくのか。僕らの一番の最終的な課題は、そこになります」
かつて林業で栄えていた“尾鷲の森”。その姿を、今はもう見ることはできません。樹齢約60年の木を売っても1本7080円にしかならず、間伐した木は運べば赤字になるからと残されたまま。林業の立て直しが尾鷲の行く末をも左右します。
さらに、日本有数の漁場で魚種の多さが自慢の尾鷲の海でも、ある異変が起きていました。「極端に言うと水揚げ量が半分以下になった」と話す漁師。原因は特定されていませんが、海水温の上昇や黒潮の蛇行、さらに、森と海の関係を指摘する声も。
尾鷲では、山の栄養分が海に流れ込むことで、豊かな漁場を作ると考えられています。以前は毎年、漁業関係者が山に入り、植林活動をするほどでした。森の整備が行き届かなければ、海にも影響が及ぶ恐れもあるのです。