【特集】厄介者の大型魚“シイラ” 価格急騰で一転、漁師「シイラ様」に 海外では高級魚、円安で輸出増加 温暖化で県内漁獲量も増加
ちょっと見た目が特徴的な魚「シイラ」。県内でも水揚げされていますが、定置網漁の妨げになり、価格も安いことから、かつては漁師から“厄介者”として嫌われてきました。ところが近年価格が急騰し、一転して漁師からも喜びの声が上がっています。その背景を取材しました。
サクッと揚げた魚のフライに、特製のタルタルソース。高浜町の飲食店で提供している、その名も「マヒマヒバーガー」です。
■うみから食堂 店主
「あんまり使われていなかった魚、低利用魚だった。(身は)淡白ですけど、脂が乗っていて、すごくおいしい魚なので、これをみんなに食べてもらえたらと(商品化した)」
このハンバーガー。近年、県内で漁獲量が急増している「シイラ」が使われています。
■リポート 櫻井幹大記者
「平べったいのに、結構重たいです。10キロぐらいありそうです」
「シイラ」はハワイでは「マヒマヒ」と呼ばれ高級魚として人気ですが、県内ではほとんどなじみがなく、大型で網に入ると他の魚介類を傷つけてしまうことから、漁師の厄介者でした。
しかし…、その状況に変化が起きているというのです。
9月から10月はシイラの水揚げが最も多いシーズン。この日もシイラを目当てに、3キロほど沖の定置網に向かいます。
網を巻き取ること1時間。すると円を描くように泳ぐ魚の影が。漁師が総出で網を引っ張ります。
■リポート 櫻井幹大記者
「金色の魚体のシイラ。アジやサバなどに交じって、たくさん水揚げされています。 非常に活きが良いです」
■船の組合員
「(Q.シイラって入ったらうれしいですか?)うれしいですね」
「(Q.どうしてですか?)お金になるから」
この日も200キロの水揚げがあり、セリ値も数年前の倍近くだったということです。
■(有)宇久定置網 浦谷俊晴代表取締役
「シイラは足で蹴飛ばすぐらいの感じの魚だった。この船に満杯になった時があって、その時(約20年前)は1キロ20円ぐらい。本当に労力がかか って、あほらしかった。以前に比べたらずいぶん高い」
漁師の厄介者から手堅い収入源となったシイラ。なぜ価格が上昇しているのでしょうか。
■福井県漁業協同組合連合会 小浜支所 加藤祐二支所長
「円安の状況が続きますと、シイラは輸出において有利」
県漁連によりますと、シイラ1キロあたりの平均価格は、円安が始まった2年前から急激に高くなっています。
また、地球温暖化で県内近海の海水温が上がり、暖かい海を好むシイラの漁獲量が増えたことで安定供給が可能になりました。
海外からすると、安く買える日本のシイラは魅力的な魚となっているようです。
■福井県漁業協同組合連合会 小浜支所 加藤祐二支所長
「日本では刺身なんかには不向きだけど、海外ではマヒマヒと呼ばれて、高級魚扱いの魚だから、これから需要に関しては増えていくと思う」
■(有)宇久定置網 浦谷俊晴代表取締役
「世間では円安で経済状況が悪くなってる。けど、漁業界のシイラにおいては、円安の影響で高値が続いておりますので、シイラ様と“様”をつけるぐらい、本当に良いお魚です」
消費者の魚離れや燃料費の高騰など漁業を取り巻く環境が厳しさを増す中、金色に輝くシイラの存在が今、“一筋の光”となっているようです。