【2024年問題】残業規制から1か月 配送が2日に1回になるスーパーも 運転手「かえってしんどくなった」福岡
物流業界で時間外労働の規制が強化されて1か月、いわゆる2024年問題です。労働時間が短くなることで、これまで通りの荷物を運べなくなる恐れがあることから、現場では輸送力の確保のため試行錯誤が続いています。
こちらは、福岡県久留米市の安さで人気のスーパーです。
■買い物客
「なんでも値上げしていますよね。物価高騰で。」
「全体的に(値段が)上がってきていて、スーパーに行く頻度も少なくなってきています。」
加工食品や調味料などの値上げラッシュが続くなか、もう1つ懸念があるといいます。
■明治屋ジャンボ市 久留米インター店・神田 航児 店長
「きょう発注すると、あしたのところに上がるようになっていましたが、6月からは金曜日(2日後)に納品になります。」
これまで毎日配送されていた乳製品などの配送回数が、6月からは2日に1回に減ります。
■神田店長
「ドライバーさんの残業問題もあるので、いままで遠方からトラック便が出ていたのが出ない。いままで通りにすると価格が上がると言われていたので、1日延びても同じ価格でとお願いしています。」
配送回数が減ることで欠品の恐れがありますが、食料品の値上げが続く中、配送料の値上がり分を価格に転嫁することも難しく、苦渋の決断です。
物流の「2024年問題」が、私たちの生活に影を落とし始めています。
労働基準法の改正により、4月1日からトラックドライバーの時間外労働が年間960時間に規制されました。ドライバーの長時間労働を軽減するための措置です。
福岡県内の運送会社に勤める林田さん(仮名)は、九州を中心に食料品などを運んでいます。
■林田さん
「かえってしんどくなりました。荷物の量は変わらず、配達先も変わらず。時間だけを短縮しろということで。」
4月下旬、ある倉庫に向かった林田さん。これから運ぶ荷物を1つ1つ手で積み込んでいきます。「手積み」と言われる作業です。
多い時で1000個以上の荷物を1人で積み込み、1回で3時間以上かかることもあるといいます。さらに配送先でも、荷物を降ろすのに同じくらいの時間がかかります。
この「手積み」の作業時間は変わらないまま、労働時間だけ制限されたことから、必然的に運転できる時間は減ってしまいました。
■林田さん
「動ける時間が何時間しかないから急いでくれと言われても、変えようがないんじゃないか。労働時間が減ったから、もうおたくの荷物を運べませんというのもできないだろうし、仕方ないこととして受け止めないといけない。」
労働時間が限られる中、国が力を入れているのが、荷物を積むときの土台「パレット」を標準化し、効率化を図る取り組みです。
荷主と配送先が違う規格のパレットを使っている場合、パレットから荷物を降ろしてトラックに積み込み、配送先で再び、別のパレットに積み直さないといけません。
一方、荷主と配送先が同じ規格のパレットであればフォークリフトを使ってパレットに荷物を載せたまま積み降ろすことができて、作業時間の短縮につながります。
国土交通省は「11(いちいち)型」とよばれる1.1メートル四方のパレットにそろえるよう呼びかけています。
こちらの福岡県古賀市の倉庫では、3年ほど前から「11型」のパレットの導入が進み、荷降ろしにかかる時間が8割以上減少しました。
■九州商運・能勢博之さん
「積み込み・荷降ろしの時間が短くなることで、休息時間・運転時間の組み立てがやりやすくなる。」
ただ、一部の企業では設備投資のコストが大きいことなどから、パレットの標準化が進んでいないのが現状です。
物流に詳しい専門家は、運送会社だけではなく荷主企業を含めた業界全体で対策を進める必要性を指摘します。
■福岡大学・村上剛人教授
「今の物流の品質を維持するためには、どうしても前のコストではできない。多少、価格を上げてでもそれを守っていかないと自分のビジネス自体が危ないという見方もできてくると思います。荷主企業が早く気づかないと、本当に荷物が運べないことが起こってしまう。」
物流業界で始まった時間外労働の規制。物流が滞れば、私たちの生活にも大きな影響を与えるだけにその対策は待ったなしです。
※FBS福岡放送めんたいワイド2024年4月30日午後5時すぎ放送