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【見送りのかたち】葬祭業者が主催した海洋散骨の体験クルーズ 寺の住職も参加 墓じまいのニーズ背景に 福岡

2024年8月16日 18:22
【見送りのかたち】葬祭業者が主催した海洋散骨の体験クルーズ 寺の住職も参加 墓じまいのニーズ背景に 福岡
見送りのかたち

遺骨を海にまいて亡くなった人を供養する「海洋散骨」が、福岡で広がりをみせています。少子化が進む中、「墓じまい」のニーズの高まりや、供養の仕方の多様化が背景にあります。

福岡市内の船着き場を出発しておよそ15分。到着した海の上で行われたのは。

■縁・堤 裕加里 社長
「今回は残念ながら船に乗船できないという方から、3名の遺骨をお預かりしています。」

鹿児島県の葬祭業者が企画した、海洋散骨の体験クルーズです。この日は、福岡市博多区にある寺の住職などが参加しました。粉にした遺骨を水に溶ける袋に入れて海に流し、亡くなった人を供養します。この日は、病気などで船に乗れない人に代わり、業者が海洋散骨を行いました。

国内で行われた海洋散骨は、2018年には1000件あまりでしたが、その数は年々増加し、去年は2611件と2倍以上に増えています。

■堤 社長
「墓じまいが増えてきていたり、亡くなった後も、故人の希望を叶えたいという。例えば、釣りが好きだったからお父さんのお骨を散骨してあげようとか、海が好きだったからとか新婚旅行の思い出がここの海だったからというような気持ちで海洋散骨される方が増えてきています。」

海洋散骨が広がりを見せる背景には、少子化に伴って「墓じまい」する人が増えていることや、供養の仕方が多様化し、亡くなった人の思いを尊重するニーズが高まっていることがあります。

体験クルーズの参加者は、遺骨を細かい粉にする作業を見学しました。遺骨から異物を取り除き、粉骨機に入れていきます。

粉になった遺骨は、少しだけ手元に残すこともできます。

■体験クルーズに参加した光薫寺の住職
「墓じまいとか、墓が維持できないとか、ネガティブなニーズとも合致しているところがあるのかなと思います。弔いの選択肢を広げるというのは、すごく大事なこと。」

■体験クルーズに参加した光薫寺の僧侶
「神聖なものにちゃんと儀式化されていた。我々、儀式のプロですから。プロから見ても、ちゃんと故人に対して敬いをもって接しているのはよく分かりました。」

海に遺骨を撒くことについて、法務省は「祭祀として節度を持って行われる限りは、遺骨遺棄罪には違反しない」との見解を示しています。

ただ、海洋散骨についての法的なルールはなく、日本海洋散骨協会はトラブルを防ぐため、陸地から1海里以上離れた海上のみで散骨を行うことや、一般の乗客がいる船では散骨を行わないなどのガイドラインを定め、業者に徹底を呼びかけています。

■堤 社長
「こうしなければならない、こうするしか手段がないというような気持ちで選ぶのではなくて、私たち業者のような存在が、こういう方法もありますよとか、こういう方法をとったら、より安心いただけるのではないかという、いろんな選択肢がある中で、ご自身が一番、安心いただけるような方法を選んでいただくのが一番かなと思っています。」

亡くなった人と、残された家族。双方に寄り添った新しい供養の形は今後も広がっていきそうです。