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シリーズ「こどものミライ」発達障害の未就学児の受け皿が足りない 特性に合った専門家の支援を 福岡

2024年5月25日 7:47
シリーズ「こどものミライ」発達障害の未就学児の受け皿が足りない 特性に合った専門家の支援を 福岡
子どもの特性に合った支援…受け皿が足りない
シリーズ「こどものミライ」です。今、全国的に発達障害と診断される子どもが増えているといいます。発達障害とは、自閉症やアスペルガー症候群、注意欠陥多動性障害など、発達に関係する脳機能の障害の総称です。福岡市でも10年前に比べ2倍に増えていますが、課題なのが、発達障害の診断を受けた未就学児の受け皿不足です。

福岡市に住む濱田なおきくん(仮名・6)には、自閉症と軽度の知的障害があります。

■なおきくん(6)
(お魚好きなの?)
「う~~ん。」

■母親
「小さい頃からお魚好きで、最初に言ったことばがマンボウ。」

食事の時は、お気に入りのぬいぐるみなど10個をテーブルに並べて食べ始めます。

■母親
「寝る時も持って行きます。絶対ないと、ないないって捜し回っちゃうので。」

こだわりが強いのが自閉症の特徴の一つです。

■なおきくん
「おいしい。」

母親の濱田あきさん(仮名)が、なおきくんの成長に違和感を持ったのは、なおきくんが1歳の時でした。

■濱田さん
「1歳くらいで 一言二言出ると思うが、それがなかった。2歳になっても発語が全く無くて。」

今、5歳8か月のなおきくんは「精神年齢」が3歳10か月と診断されています。会話が成り立たなかったり、時には手づかみで食事したり。気持ちの切り替えも苦手です。

■濱田さん
「今(大変なの)はパニック。嫌なことが突然あった時に、火がついたように泣き叫んで。恐怖心を感じるくらいだった。」

なおきくんが自分たちに何を伝えたいのかわからない。途方に暮れた濱田さんが頼ったのが、理学療法士などが在籍する児童発達支援施設でした。

障害のある未就学児を受け入れる児童発達支援施設は、洋服を着るなど日常の動作や言語の訓練、集団の適応訓練など一人一人に合った支援を受けられる場所です。

去年の春まで北九州市に住んでいたなおきくんは、自宅近くの施設に週5日通っていました。

専門家にみてもらうことで、なおきくんの特性に合わせた育児をできるようになり、濱田さんの精神的な負担が軽くなったといいます。

しかし、去年春に夫の転勤で福岡市に転居したところ。

■濱田さん
「福岡市に引っ越してきてから(発達障害の)未就学児を預かって頂ける療育の施設がすごく少なくて。いまは糸島市の施設に預けています。(福岡市の)児童発達支援施設の数をもっと増やしてほしい。」

障害のある未就学児を受け入れる事業所の数は、北九州市の164施設に対し、福岡市は23施設です。

福岡市とほぼ同じ人口の自治体と比較しても、福岡市の事業所数が少ないことがわかります。

このため、福岡市では多くの事業所で、保護者が「順番待ち」の待機をしている状況です。

■事業所LITALICO・吉田さん
「今、待機としては150人お待ち頂いています。全く新規(の施設)が開設されなかったとして(この教室は)3年待ち。それだけ困っている方々が多いということなのかな。」

事業所数が少ない背景には、福岡市が支援の「質」を重視してきた事情があります。

一般的に「児童発達支援」を行う施設は設備や人員など専門機能が整った「センター」と、民間などが担う小規模の「事業所」があります。

福岡市は2年前まで発達障害の未就学児の対応を11か所の「センター」にだけに集約し、民間の事業所はありませんでした。市が全体を把握することで、よりきめ細かな支援を目指していたからです。

ところが、発達障害児の数が急増し対応が難しくなってきたため、おととし7月から、ようやく民間事業所での受け入れを始めました。

支援の「質」を優先してきたことで、その「数」への対応が遅れてしまったのです。福岡市は支援を求める「数」に対応する取り組みをすでに始めています。

■福岡市 子ども発達支援課・米岡史子課長
「今からの3年間で23(事業所)増加する計画です。令和7年度(2025年度)には南部療育センター(仮称)の新設で対応していく。ほかの自治体のように一気にたくさんは難しいけれど、内容も踏まえた上で増やしていきたいと思います。」

全国の児童発達支援事業所は、10年前からおよそ4倍に急増しています。数が増えるとともに「遊ばせて見守るだけ」など、適切とは言いがたい運営実態も一部の事業所で指摘されています。

■九州大学病院 児童精神科医・山下洋 特任准教授
「専門性の高さをすべての事業所に求めるとなると難しい。人が足りない。ニーズとサービスのミスマッチの状況は常に1年ごととか再検討しながら、急ぐ必要があれば、人を増やす手だても考えていかないといけない。」

なおきくんには2歳の妹がいます。妹も発語がなく、4月、医師から「自閉スペクトラム症はほぼ確定」と診断されました。

■濱田さん
「この子もいずれは(児童発達支援施設に)通わせたいと思うけど、今から入れるかなって不安があります。」

急増する発達障害児。子どもたちが生きやすく成長していけるよう、数と質の両輪で受け皿を整備していくことが求められています。