【クイーンビートルの浸水隠し】JR九州高速船が改善報告を国土交通相に提出 再発防止に向け安全アドバイザー配置や全社員参加の「社員総会」 福岡
博多と韓国・釜山を結ぶ「クイーンビートル」が浸水を隠し、運航を続けていた問題です。親会社のJR九州の古宮社長は31日、子会社のJR九州高速船が国土交通相に対し、改善報告と、安全統括管理者と運航管理者の解任と選任を届け出たと明らかにしました。
改善報告ではまず、2023年6月に国土交通相から「輸送の安全確保に関する命令」を受けたにもかかわらず、2024年9月に再び命令を受け、全国初の「安全統括管理者と運航管理者の解任命令」を受けたことは「極めて深刻な事態」としました。
さらに「浸水が発生している状態のまま、報告や応急修理の措置をとることなく、旅客を乗せて長期間にわたり運航を継続したこと、この判断に社長以下の各管理者が関わっていた事実は、安全管理体制にかかわる重大な問題」としました。
その大きな原因として、2023年7月に提出した改善報告に記した「安全最優先の判断を行う抜本的な意識改革」が社長以下の各管理責任者がみずから行っていなかったためとしました。
その上で、二度とこのような事態に陥ることのないよう、安全管理体制を見直し、社員全員の安全意識の醸成と安全最優先の行動の定着・浸透を図り、信頼の回復に全力で取り組むとしました。
そして、再発防止のための施策として「安全意識の醸成と法令遵守の意識の浸透」「安全管理体制の機能強化」「報告と情報共有」「安全報告書の作成と公表」「JR九州によるガバナンス」の5つを掲げました。
具体的には、社員の行動規範として「安全の綱領」を掲げ、朝礼で唱和することや、今回の問題を風化させないためのパネルを設置すること、安全に関するアドバイザーを招き、外部の視点を取り入れること、コンプライアンス教育の徹底、全社員が参加する「安全に関する社員総会」を年2回開き、直近のヒヤリハット事例を振り返り議論すること、問題が起きた際の報告・連絡は速やかにグループチャットで行い、その訓練を行うこと、親会社のJR九州の非常勤取締役がJR九州高速船の会議に参加し現場に赴き、業務の実態を把握すること、改善が確認できるまで毎月JR九州が進ちょく状況をモニタリングすることなどを盛り込みました。
クイーンビートルはことし2月に浸水が分かったあとも、およそ4か月にわたり運航を続けていました。航海日誌に「異常なし」と記載したり、警報が鳴らないよう浸水センサーの位置を上にずらすなど隠ぺい工作を行っていたことも分かっています。また「検査の前日に元に戻した」とする証言も明らかになっています。
国土交通省は9月、輸送の安全の確保に関する命令を出すとともに、全国初となる安全統括管理者と運行管理者の解任命令を出しました。10月末までに改善報告書を提出するよう求めていました。
福岡海上保安部は船舶安全法違反と海上運送法違反の疑いで17日、クイーンビートルの船内と運航会社のJR九州高速船を家宅捜索しています。