大麻の購入に月20万円「無くなると不安で」検挙数は過去最多 8割が20代以下 乱用防止プログラムで支援 福岡
大麻に関する事件が後を絶ちません。去年、福岡県内の大麻の検挙者数は過去最多でした。その多くを占めているのが、20代以下の若者です。福岡県は、少年に特化した独自の大麻乱用防止の取り組みを始めています。
この日、話を聞いたのは、16歳の時に大麻を始めたという、ゆうと(仮名・30)さんです。仲の良い先輩に誘われ、好奇心で手を出しました。
■ゆうとさん(仮名・30)
「何人かですると、なにをしゃべっても面白い話に聞こえるみたいな。それで、ずっと爆笑しているみたいな感じですね。それが面白くてやめられなかった。」
大麻にのめり込んだゆうとさんは、多いときで月に20万円を費やしていました。
■ゆうとさん
「(吸った回数は)何千・何万と数え切れないです。やめたかったけど、やめたいという気持ちはあったけど、じゃあ、いざ手元に無くなってやらないという状態がくると、不安でしょうがなくなるんですよ。」
しかし、続けるうちに自分の異変に気づき始めます。
■ゆうとさん
「ずっと続けていたら、だるさみたいなのが出てくるんですよ。これまで、ちゃんとしよったことを適当にやり出したり。」
大麻に依存し続けておよそ10年がたった26歳の時、ゆうとさんは大麻取締法違反の疑いで逮捕されました。執行猶予付きの判決を受けたのを機に、大麻とは縁を切りました。
九州厚生局麻薬取締部、通称マトリ。薬物犯罪を取り締まる厚労省の専門組織です。取締官の顔や捜査場所を明かさないことを条件に取材が許可されました。
この日、麻薬取締官が行っていたのは、SNSの監視です。
■麻薬取締官
「大麻のこと、隠語で“草”っていうから、“草”って入れると…これ全部そうですよ、全部。」
SNS上には、カラフルな絵文字があふれていました。
■麻薬取締官
「ブロッコリーのマーク、これ大麻のことなんですね。隠語みたいな。ストロベリーとかチェリーパイとかは、品種の名前を表している。」
麻薬取締官は、SNSで誰もが簡単に大麻とつながることができる状況を危惧しています。
■麻薬取締官
「一般の学生さんとか主婦とか、普通の会社員みたいな人が興味本位で手に入れることができるような土壌ができちゃったので。薬物使用者の裾野が広がっていることは実感する。」
福岡県警によりますと、去年1年間の大麻による検挙者は、過去最多の478人です。その8割を占めたのが、20代以下の若者でした。
若者へのまん延を受け、福岡県は、2021年から少年に特化した大麻再乱用防止プログラムを行っています。
これに参加している10代のみなみさんは、福岡市・天神の警固公園で知り合った人から大麻を勧められ始めました。
■みなみさん
「危険だなっていうのは、使っていて思っていたから。」
危険を認識しつつも、やめられなかった理由があります。プログラムで使っているワークブックには、その心の内が記されていました。
■みなみさん
「つらいことを忘れたいから。やめられなかった。楽しさが勝つ。」
複雑な家庭で育ったみなみさんは、孤独感を感じていました。現実から逃れるためにたどり着いたのが大麻でした。
■福岡県警 少年育成指導官・金田律子さん
「今まで自分の気持ちを素直に表現したりとか、共感してもらったりとか、あるいは慰めてもらったりとか受け止めてもらったりとか、そういうふうな経験が乏しい人が多い印象なので。やっぱり受け止めてあげることは大事かなと思います。」
このプログラムで支援した少年は、開始から2年あまりで延べ25人です。
■プログラムを終えた元 少年
「当たり前すぎて考えないところをもう一回ちゃんと教えてもらった。いろんな人が悲しむし、いろんな人に迷惑がかかるので、やめた方がいいと思います。」
指導官たちは、少年が大麻に走る前に孤独や悩みを受け止める場所が、まだまだ足りていないと感じています。
FBSでは、広がる大麻の実態を取材したドキュメンタリー番組を制作しました。目撃者f「手をのばせばそこに若者にまん延する大麻」は3月3日(日)の深夜放送です。