【詳しく】博多ストーカー殺人「待ち伏せは違います」 弁護側「恋愛感情はすでに失い怨恨の感情もなかった」 ストーカー行為を否認 殺害は認める 福岡地裁
JR博多駅近くで、元交際相手の女性をストーカー行為の末、包丁で刺し殺害した罪に問われた男の裁判員裁判の初公判が17日、福岡地裁で開かれました。男は起訴内容のうち、殺害については認め、女性を待ち伏せしたなどのストーカー行為については否認しました。弁護側は、包丁は「護身用」に持っていたとして、現場で会ったのは偶然だと主張しました。
殺人とストーカー規制法違反などの罪に問われているのは、住居不定・無職の寺内進被告(32)です。
起訴状などによりますと、寺内被告は2023年1月16日午後6時すぎ、JR博多駅近くで、勤務先から帰宅中の福岡県那珂川市の会社員、川野美樹さん(当時38)を待ち伏せし、胸や背中、頭や首を刃渡りおよそ24センチの包丁で10数か所刺して殺害した罪に問われています。
17日午前10時から福岡地裁で始まった裁判員裁判の初公判に、寺内被告は紺色のジャージに灰色のズボン、白いマスクをつけて法廷に入りました。坊主頭に近い短髪でした。
裁判員が入ってくるのを見つめたあと、証言台に移動し、裁判長に「おはようございます」と声をかけられると「おはようございます」と応えました。
検察は冒頭陳述で、寺内被告が現場近くで川野さんを3分間待ち伏せし、173メートル追従したと指摘しました。少なくとも17回突き刺したとして「禁止命令が出されたことに対し逆恨みし殺害した。悪質で動機に酌量する余地はない」と指摘しました。寺内被告は冒頭陳述の間、ほとんど動かず、聞き入っているように見えました。
そして罪状認否では、起訴内容について「刺したことは間違いないが、待ち伏せしたことは違います」と話し、殺害については認め、女性を待ち伏せしたなどのストーカー行為を否認しました。
その後、弁護側は殺害については争わないとしたうえで「待ち伏せしたのではなく、携帯電話の滞納料金を支払おうと偶然、博多駅にいた。川野さんに会ったのは思いがけないことだった。殺害直前に被害者と会話をして歩いたが、ストーカー規正法のつきまといにはあたらない。恋愛感情はすでに失い、怨恨の感情もなく、それを充足する目的もなかった」として、ストーカー行為について無罪を主張しました。
起訴状によりますと、寺内被告は川野さんへの好意、またはそれが満たされなかったことに対する恨みから、2022年11月23日午前4時すぎから午前9時半ごろまでの間に4回にわたり、川野さんの携帯電話と勤務先に電話をかけたとされます。川野さんからの相談を受け、警察は2022年11月26日、ストーカー規制法に基づき、つきまといを禁じる命令を寺内被告に出していました。
しかし、およそ1か月半後の2023年1月16日、川野さんの命は奪われました。当時、寺内被告は「おい」と言いながら川野さんがさしていた傘に自分の傘をぶつけ、その後、10分間にわたりつきまとった末に、川野さんを殺害したとされています。
争点は、寺内被告のストーカー行為が認められるかどうかです。
寺内被告が事件前、川野さんに繰り返し電話していた理由については「2人は同じグループの飲食店で働いていて、社内恋愛をしたことへの罰金100万円について相談をするためだった」としています。川野さんは平日は会社員として働き、週末は飲食店で接客の仕事をしていました。
弁護側は「事件はいろいろな偶然が積み重なって起きた」としてストーカーによる殺人事件ではないと主張しました。
また、午後から始まった被告人質問で、寺内被告は包丁を持っていた理由について問われ、殺人事件の前に起こしていた傷害事件の報復を恐れ「何があるか分からないのでバッグに入れていた」と述べました。
寺内被告は2022年8月に、福岡市博多区の路上で男性を殴ってケガをさせた傷害の罪に問われ、量刑を決めない「部分判決」ですでに有罪が言い渡されています。
公判では、この部分判決も踏まえて量刑を審理されます。
18日以降も被告人質問が続き、24日に結審したあと、28日に判決が言い渡される予定です。