【医療的ケア児】てんかん脳症の6歳の女の子 4月から新たな一歩を踏み出す 「守られる生活より広い世界へ」 家族の思いに迫る
広島市で暮らす6歳の女の子は、人工呼吸器など日常的に医療行為を必要とする「医療的ケア児」です。4月、小学生になりました。普段の生活と、地元の公立小学校に通う選択をした家族の思いを取材しました。
3月、卒園の日を迎えた半田凛佳(はんた・りんか)ちゃん6歳。「てんかん性脳症」という病気のため、生後8か月から人工呼吸器をつけています。凛佳ちゃんは特に重い病気で、薬でも発作が止まらないときもあり、担当の医師によると、同じような患者は世界で3人以下ということです。
■母・千寿さん
「ドキドキがきっかけで発作になって止まらなくなる。これが続くと強い薬を入れて発作を止めてあげないと、止まらなくなっちゃうんです。」
日常的に医療行為を必要とする「医療的ケア児」。広島市によると市内に250人ほどいるとみられています。
卒園式に向かう凛佳ちゃんを家族が見送ります。
■姉・宇海ちゃん
「頑張るんよ、りんちゃん。最後じゃけえ、しっかり頑張るんよ。頑張ったらケーキあるからね。お家でいっぱいケーキ食べようね。」
「凛とした人になってほしい」。両親はそんな願いを込めて名前を付けました。6歳上の姉と2歳下の弟がいます。凛佳ちゃんは、生まれてすぐ母乳の飲み具合が悪かったため、集中治療室に。さらに異変が起きたのは、生後2か月の時でした。
■母・千寿さん
「飲みがへたくそと言われて、それの練習だけと思ったら発作が起きてだめで、呼吸ができなくなってとか、そこで先生に『てんかん脳症です、治ることありません』という話をされて。面会が終わって家に帰るまでの道が真っ暗というか。帰って家の玄関開けた瞬間に泣き叫んでいました。」
凛佳ちゃんの病気は、半数が1歳以内に死亡し、残りは寝たきりになってしまいます。
■父・孝さん
「てんかん脳症って幅が広くて。まさかここまで重たいてんかん脳症にあたるとは思っていませんでした。」
毎日のように起こる発作。強い薬を使っても収まらない場合は、救急車を呼んで病院で処置してもらうことも、年に数回あるといいます。発作は3時間続くことも。
■母・千寿さん
「命の不安は24時間あるので、この子の場合。24時間気は休まらないし、夜もまともに寝られない。」
平日は毎日、看護師とヘルパーが自宅を訪れ、入浴を支援しています。その間、母の千寿さんは買い物へ。
■母・千寿さん
「買うものは基本(携帯の)メモ帳に入れておいて、買う前に『こう回ろう』みたいなシミュレーションをして、なるべく早くしますね。」
卒園のお祝いに用意されたケーキ。凛佳ちゃんの大好物です。
■母・千寿さん
「おいしい?(目が開く)甘いね。」
「こうやってほしいとき、手がかなり動くんです。声は気管を切開しているから出ないんですけど、この子なりの意思表示がこうやって出るので。」
噛むことができないため、固形の食べ物はつぶして、直接胃に流し込みます。
■母・千寿さん
「お腹に入っても匂いとかは(鼻に)上がるらしくて、わかるらしいです。甘い匂いとか。」
学校から帰った姉の宇海さんが、いつも絵本を読み聞かせしてくれます。そんな凛佳ちゃんは春から小学生。両親は、ある決断をしました。
■母・千寿さん
「教育委員会に就学相談でお話しして、地域の(公立)学校に行きたいと話して。」
広島市立の小・中学校に通う「医療的ケア児」はおよそ20人。凛佳ちゃんは、3月まで通っていた療育センターでも、いつもお母さんがそばにいましたが、4月からは離れて授業を受けることになります。
■母・千寿さん
「この子だけずっと守られた生活というよりも、この子も同じように今から広い世界に出ることで、いやな経験もするが、それがあるのが生きていけば当たり前のことなので。」
小学校の入学式。凛佳ちゃんは特別支援学級に入ります。授業は1日2時間で、看護師が付き添い、通常学級の児童とも、音楽や図工の授業を受けることになっています。
■母・千寿さん
「1年生のクラスも入ったんですけど、その間は恥ずかしくて、寝たふりしてたんよね。徐々に(家族以外との)関わりを増やして楽しめたらいいなと思います。」
親と離れての学校生活。凛佳ちゃんと家族は、新しい一歩を踏み出しました。
【2024年4月22日放送】