【わたしらしく生きる】栄養が不足しがちな高齢者のためにつくられた「アイス」
私らしく生きるプロジェクト。今回は栄養が不足しがちな高齢者のためにつくられた、栄養満点の「アイス」を紹介します。どうやったらお年寄りに食べてもらえるか…アイスには考案した若者のアイデアが詰まっていました。
「いーち、にー」
広島市佐伯区のデイケア施設です。「要介護」の認定を受けた70代から90代がリハビリに励んでいます。
■アイス渡す
「アイスクリームどうぞここおいときますよはいありがとう」
昼食の時間。デザートで配られたのは「アイス」!
実はこれ、高齢者のための「栄養補助食品」なんです。
■食べた人
「アイスだからちょうどいい」
「ああよかった、アイスはぺろって食べられちゃいますよね」
緊張の面持ちで感想を聞くのは…
このアイスを考案した杉村佳南さんです。
■会議
「薬剤師さんの目線でいうとこれ溶けなくてたんぱく質とれてビタミンD入っているんですけど」
杉村さんは医療機関に医薬品などを卸す会社に勤めています。高齢者の栄養不足を補う「栄養補助食品」の営業担当として病院や施設を回るなかで、見えてきた課題がありました。
■杉村佳南さん
「病院で栄養補助食品のゼリーとかドリンクを食事があまりとれていない方にはつけられているが結局出されても残されているケースが多かったので」
厚生労働省によると、65歳以上の「低栄養」の割合は男性が12%、女性が22%にのぼり、高齢者の栄養不足が深刻な課題になっています。
一般的な「栄養補助食品」は少量で高カロリー。糖質や脂質を多く含み「甘すぎる」という声が高齢者から寄せられています。
「食べること」を「辛いこと」にさせたくない…。管理栄養士の資格を持つ杉村さんが注目したのが「アイス」でした。
■杉村佳南さん
「患者さんが栄養をとらないといけないから補助食品をがんばって食べている辛いのに食べている現状を知ってアイスだったら甘ったるいのもさっぱり食べられるんじゃないかなって」
杉村さんが協力を仰いだのは、広島の老舗乳製品メーカー・チチヤスです。
■チチヤス商品開発部 太田志穂 部長
「食べることは人間生きていくうえでだいじなことだと思っていたので、私たちが何かお役にたてることがあればということで」
「アイス」の栄養補助食品は、商品化されているものはほとんどありません。溶けてしまうため、病院食と同時に提供するのが難しいこと。誤嚥の危険もあることなどが理由です。
そこで、開発では「溶けにくさ」を重視。冷凍庫から出して20分ほどたっても水っぽくならず、ほどよいやわらかさになるよう研究を重ねました。さらに、たんぱく質の量を通常のアイスの2倍、「5グラム」含むなど栄養素にもこだわりました。
■乾杯
「アイスクリームで乾杯」
「酸味が強い気がする出来立ての方が」
「触感がやわらかいから味がしっかり感じると思います」
「おいしい」
チチヤスヨーグルトならではの、さっぱりしたアイスが完成しました。
■薬剤師の説明
「溶けにくいのが特徴で食事とれない方とか」
アイスは、広島市と尾道市の2つの薬局で試験販売することになりました。薬剤師が説明したうえで、施設の職員や高齢者に一つ250円で販売しています。
整形外科クリニックに隣接するこちらの薬局では、骨を丈夫にする栄養素に注目します。
■キララ薬局五日市北口店 植野卓磨さん
「こんなのあるのってチラシを持って帰られる方も多い。骨折予防でビタミンDも入っているので、そういうところでおすすめしていきたい」
デイケア施設も、アイスを試験的に食事に取り入れてくれました。
■平尾メディカル 丸野文 代表取締役
「これだけ今在宅の患者さんがたくさんいらっしゃる中で栄養と運動がとても必要なことなので、ぜひ協力したいと思った」
利用者たちの反応は・・・
■男性
「おいしかった!人の分までほしくなる」
■女性
「食べられないときとかちょうどいいなって思って、溶けないからね時間たっても」
普段より食が進んだ人も多く、アイスは大好評でした。
■杉村佳南さん
「おいしいって言葉を直接耳にすると、やってきたことは間違いじゃなかった。栄養補助食品は栄養が足りていない人が足りないから仕方なく食べなきゃいけないものだが、おいしいから食べたいって自分で手に取っていただけるような製品になったらすごくうれしい」
(2025年2月27日放送)