【特集】交通問題解消へ「鞆未来トンネル」開通 住民の賛否が分かれた架橋計画から40年余り 広島・福山市
瀬戸内を代表する景勝地・福山市鞆町に、新たなトンネルが完成しました。まちの渋滞対策として、港を埋め立てて橋をかける計画から40年余り。全国的な景観を巡る論争を経て、鞆のまちづくりは大きな節目を迎えました。
福山市の南部にある港町で、景勝地として知られ多くの観光客が訪れる鞆の浦に、3月30日、まちの山側に建設が進められたトンネルが完成しました。その名も『鞆未来トンネル』です。
広島県の湯崎英彦知事などおよそ200人が出席し、「節目の日」を祝いました。
■広島県 湯崎英彦知事
「多くの皆さまが関わって、鞆の中がいろいろ揺れましたし。これから未来に向かって、鞆が発展する礎になればと。」
トンネルは、工事開始から2年余りで開通しました。片側1車線で全長はおよそ2.1キロ。総事業費は、およそ110億円です。県道が通る、鞆港の中心部を避けるルートです。
主な目的は、中心部の交通対策です。道幅は狭く、車のすれ違いは困難で、危険と隣り合わせ。長年の課題です。
42年前に広島県が打ち出したのは、港の一部を埋め立てて橋を架ける計画でした。
利便性か景観か。計画をめぐって、住民の賛否は分かれました。法廷闘争にまで発展し、2009年、広島地裁が県に命じたのは、埋め立て免許の差し止めでした。
鞆に長く滞在し、映画「崖の上のポニョ」のヒントをつかんだ宮崎駿監督も、判決を評価しました。
■宮崎駿 監督
「鞆の浦の問題だけでなく、今後の日本をどうするかという中で、非常に大きないい一歩を踏み出したんじゃないかなと。」
そして、2012年に湯崎知事が計画の撤回を表明し、山側へのトンネル建設へと舵を切ったのです。
■架橋反対派 松居秀子さん(当時)
「住民同士で話し合ったじゃないですか、1年半にわたって。その上での結果なので、ほっとしたのが事実ですね。」