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南海トラフに広島でも備え "みんなの防災倉庫"とは?

2025年3月11日 19:32
南海トラフに広島でも備え "みんなの防災倉庫"とは?

東日本大震災から14年。いつ起きてもおかしくないと言われているのが「南海トラフ巨大地震」です。発生すれば、広島にも大きな被害が出ると予測されています。

南海トラフ地震は日本の南のプレート境界を震源とする地震で、過去、100年から150年の間隔で繰り返し発生しています。前回から80年が経ち、近い将来、再び発生すると予想されています。30年以内に発生する確率は、これまで「70%から80%」とされていましたが、今年に入り、政府の地震調査委員会は「80%程度」に引き上げました。

広島県内では最大震度6強の揺れが予想されていて、最悪の場合、1万4000人余りの死者が出ると想定しています。大半が津波によるものですが、建物の倒壊による死者も1000人ほどいる見込みです。

■広島地方気象台南海トラフ地震防災官 内田祥一さん
「耐震評価がされていればおおむね大丈夫だと思うが、やはり6強という揺れはかなり強いものなので倒壊してもおかしくないと考えている」

去年8月、日向灘での地震発生後初めて発表されたのが「南海トラフ地震臨時情報」の「巨大地震注意」です。これは、大規模な地震発生の可能性が相対的に高まったとみられるときに気象庁が発表するものです。「警戒」か「注意」、関連がない場合には「調査終了」が発表されます。

■広島地方気象台南海トラフ地震防災官 内田祥一さん
「『巨大地震注意』の場合には通常よりも(発生確率が)2~3倍は高まるのではないかということで注意を呼びかける情報となる。『巨大地震警戒』として発表する場合は、通常時より100倍程度(発生確率が)高まった形になったとみなしている」

国は、南海トラフ地震の新たな被害想定を3月末に発表する予定となっています。近い将来に予想される大規模地震に対して個人の備えはもちろん、地域の取り組みも欠かせません。そこでご紹介するのが「みんなの防災倉庫」です。いったいどんな倉庫なのか、取材してきました。

■寺本気象予報士リポート
「廿日市市の公園にやって来ました。みんな集まっていますね。あれが『みんなの防災倉庫』でしょうか」

廿日市市の公園に置かれている「みんなの防災倉庫」です。

■みんなの防災倉庫普及協会技術責任者 宮地寛将さん
「最大のポイントは、災害時に誰でも無料で開けられるというところです」

仕組みは、あらかじめ無料通信アプリのLINEで登録しておくと、災害が発生した際、暗証番号を発行することができます。通信障害が起きた場合でも赤いシールをはがすと鍵を取り出すことができるようになっています。防災倉庫の中に入れるものは選ぶことができます。この町内会では別の防災倉庫に水や非常食を入れているため、主に非常用のトイレやブルーシートを保管しています。

■大野第八区 横田光男区長
「あくまでも災害は起きたらいけないが、地域の安全・安心のためになればいい」
Q.倉庫の費用は地域の人が払っている?
「地域は防災倉庫の管理だけを任せていただいて、実は隣に工場があるやまだ屋さんが地域の貢献のためにと設置していただいた」

「みんなの防災倉庫」のもうひとつの特徴が地域の役に立ちたいと考える企業が設置を支援し、地域の人々が活用するという仕組みです。両者を結び付け普及させる試みは広島でちょうど1年前にスタートしました。

■みんなの防災倉庫普及協会技術責任者 宮地寛将さん
「企業というのは地域に暮らす人たちとの共存関係であり続けないといけないと思うが、企業が地域住民のためにこういった物資や倉庫を提供していただくことが共存につながるのではないかと期待している」

提供を受ける住民側も、いざという時に誰でも使えるよう、回覧板で公式LINEへの登録を促したり、使い方を教え合ったりと日々備えに励んでいます。

■大野第八区 横田光男区長
「スマホがこれほど発達しているわけですから、みなさんと一緒になって利用しながら、ひとつの防災倉庫だけじゃなく、地域のコミュニケーションができていくんかなというふうには思います」

「みんなの防災倉庫」の中に入れる防災用品の費用を負担しているのは企業です。地域の人々は管理と、災害が起きた時に利用することができます。県内では3か所あって、福岡、大阪、高知などでも設置が進んでいます。地域と企業をマッチングしている普及協会では今後は自治体とも連携することで、より多くの人にとって備蓄環境が充実することを目指したいと話しています。

【2025年3月11日放送】

最終更新日:2025年3月11日 19:32