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140年余の歴史に幕を下ろす「目視観測」 広島地方気象台にワケを聞いてみた

2024年3月21日 19:23
140年余の歴史に幕を下ろす「目視観測」 広島地方気象台にワケを聞いてみた

ここからは、気象予報士の塚原さんが気象観測での新たな動きを伝えます。

気象台はさまざまな観測機器を使って天候を観測していますが、その内のひとつで間もなくなくなるのが「目視観測」です。

「目視観測」とは、担当者が実際に屋外に出て肉眼で観測して判断すること。明治時代から続けてきましたが、間もなく終了します。「目視観測」の廃止で何が記録されなくなるかと言うと…。

あられやひょう・黄砂・虹、音だけの雷・光だけの雷、快晴・薄曇など…。終了のワケを探りました。


広島市中区にある広島地方気象台を訪ねました。

■広島地方気象台 坂原幹敏 技術専門官
「先ほど11時は2割ほど雲がありましたけど、今は1割を切っています。もう文句なしに誰が見ても快晴という雲です」

これが、気象台の職員が実際に目で見て天気を判断する「目視観測」です。
観測員が、毎日3時間ごとに庁舎の屋上に上がり、天気のほか、ビルや山の霞み具合などから見通しのきく距離などを観測しています。

明治時代から140年以上にわたり続いてきましたが、3月25日で終了します。その背景を聞きました。

■広島地方気象台 實重博司 主任技術専門官
「気象衛星や気象レーダーの高性能化ということで、いろいろな情報が細かく分かるようになってきた。目視観測の重要性がそれほど高くなくなってきたということです」

機械化の波は日進月歩です。全国の気象台では「目視観測」を既に廃止した所も多くあり、4月以降に続けるのは東京と大阪のみとなります。

機械化に伴い、今や天気の判別は気象衛星や計測器などによるものが大半…
見通しのきく距離は、気象台付近の水滴やちりの量などを元に計算しています。

■広島地方気象台 實重博司 主任技術専門官
「目視観測で観測しているもののなかで、例えばひょうとか防災上重要なものもあるんですが、そういったものは例えばレーダーとかでとらえることが今できるようになってきています」

一方で「目視観測」には機械では補えない熟練の技術が受け継がれています。

■広島地方気象台 坂原幹敏 技術専門官
「きょうなんかは下層の雲っていうんですが、大体見ると1000メーター
から1500メーターくらいの間の雲ですね」

これまで、観測員は雲の種類や高度なども判断し記録してきました。更に、空に浮かぶ雲の量から、その日の天気が「快晴」か「晴れ」かを判別してきましたが、それらは機械の手には負えません。

そのため、特に災害の危険が迫るような時には、記録しなくても職員による「目視観測」を続けるとしています。

■広島地方気象台 坂原幹敏 技術専門官
「(雲の)形だけではなくてそういう高度とかでも判別できないと、要は災害に結びつくような顕著な雨とか判定するのはもう目で見ないとということなんですよね」

機械にもある限界…。だからこそ「目視観測」が残るものもあります。

■實重さんと塚原気象予報士
「水の入った容器、ここに氷がはるかどうかの観測と、あと霜の方は、こういった炭とかタイヤを用意して、霜が出たかどうかをちょっと分かりやすいようにしています」
「黒い物だったら・・・」
「目立つので、ということで」

冬の訪れを告げる初霜・初氷・初冠雪の観測です。

■広島地方気象台 實重博司 主任技術専門官
「季節の変わり目のシグナルとして結構ニュースにも取り上げていただいていますので、そういったニーズも考えて継続となっています」

観測機器の進化は続きますが、気象台は「目視観測の技術は継承し、守りたい」としています。

(2024年3月21日放送)