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【密着】「TSMC効果を地元企業に」進出企業との橋渡しに奮闘する地元銀行員

2024年2月21日 19:20
【密着】「TSMC効果を地元企業に」進出企業との橋渡しに奮闘する地元銀行員
TSMCの進出は熊本の経済にとってもビッグチャンスです。しかし、地場企業がその恩恵を受けることができるのかが課題となっています。TSMC効果を県内に広げようと奮闘する地元の銀行の取り組みに密着しました。

去年、熊本事業所を開設したジャパンマテリアル。TSMCの第1工場建設の際には、半導体生産に使う特殊ガスなどを供給する配管の設置にも携わりました。

2月、事業所を訪れたのは熊本銀行のプロジェクトチームのメンバーです。TSMCを契機に熊本に進出する企業の情報収集や融資の相談など、幅広い業務を担っています。特にチームが力を入れているのが、マッチング支援です。

マッチング支援とは、熊本進出を検討している企業のニーズを聞き取り、ニーズに合った地元の企業を探し、2つを結びつけるというものです。
■熊本銀行新地域開発推進チームリーダー 桐原健さん
「私たちは知っている企業も多いので、うまく紹介ができて、どちらもウィンウィンというか、御社の仕事もスムーズに進む形で出来ればと思っています」

こうした取り組みの背景にあるのが、活発化する半導体関連企業の存在です。熊本県や市町村との立地協定は、TSMCの工場建設が発表された2021年度は過去最多の22件。今年度は去年末時点で18件に上っています。大きな工場を必要としない企業は立地協定を結ばないケースもあり、実際はこの数倍の企業が進出しているとみられます。

TSMC第1工場建設に伴う県内への経済波及効果は6兆8500億円。しかし、企業進出の増加だけで地元の企業が潤うわけではありません。進出前から取引先が決まっていたり、進出企業と地元企業の規模が大きく違ったりして契約に至らないケースがあるからです。

「TSMCの波及効果を熊本の企業に」。そんな思いでマッチング支援は始まりました。熊本銀行では、これまでに数十件のマッチングをサポート。例えば、ジャパンマテリアルの場合、倉庫などの許認可申請を行う行政書士や、スタッフが工事現場に行くための送迎バスを確保することができました。

■ジャパンマテリアル熊本事業所 田中宏典所長
「忙しければ別かもしれないが、地場企業からしたら進出企業は顧客の一つとなり得る。地元企業にもメリットがあるし、我々としては地元の方の助けがなくては立ち行かないことがあるので、利害が一致する」

TSMCの第2工場進出が決定し、事業の拡大を目指すジャパンマテリアル。人材確保や事業所設備の拡充を検討する中で、再びマッチング支援を活用する考えです。

一方、台湾から進出した企業「North Engineering」。半導体製造に不可欠なクリーンルームの設計や施工などを手がけています。TSMCから工場立ち上げの協力要請を受けて日本法人を設立しました。

今回、熊本銀行のマッチング支援で出会ったのは、熊本市東区の24Service。大手スーパーマーケットの冷凍・冷蔵設備の管理から始まり、クリーンルームの設置や開発も行う企業です。

■North Engineering 冨永隆幸取締役
「いきなりNorth Engineeringと申し上げても、名前も知らない会社とはなかなか膝を交えて話してもらえない。今回、熊本銀行の紹介で24Serviceに協力してもらえる機会をいただいた。非常にありがたい」

地元の24Serviceも、得意分野で新たなビジネスチャンスをつかむ手ごたえを感じていました。
■24Service 元田和信代表
「私たちの規模に応じたものをちゃんと見つけてくださって、North Engineeringが要求されることに随時対応していってぜひお役に立てれば」

熊本銀行のプロジェクトチームのリーダー、桐原健さんは、地元企業に恩恵をもたらすのが地方銀行の役目だと話します。
■熊本銀行新地域開発推進チームリーダー 桐原健さん
「熊本のことを知らない企業も多いので、そこは地元の金融機関の役目。悩んでいるところを地元企業が手伝いすることが大事だと思う。熊本もそうだし、九州全体の事業拡大のチャンスにお手伝いができれば」

千載一遇の好機をつかむために…。動き出した新たなビジネスは未来の熊本を築く一歩となりそうです。

【スタジオ】
ジャパンマテリアルは、送迎バスを依頼する事業者を自分たちでネットで探してみたものの、運転士不足もあってなかなか契約には結びつかなかったそうです。熊本銀行の情報網でバス業者を紹介してもらったということです。マッチングしたのは、シーズンによって仕事量に波のある観光バス業者で、送迎バスという安定した収入を得られる仕事はとても助かったそうです。

県内への経済波及効果は10年間で6兆8500億円との試算も出ている中、熊本県内にとどまらず県境を越えた新たな取り組みも始まっています。経済波及効果を九州全体にも広げようということで、肥後銀行や福岡銀行など九州・沖縄の11の地方銀行が連携して半導体関連企業の誘致に取り組むことになりました。