警察官自殺訴訟「当直勤務も時間外労働」遺族の主張を認める判決 熊本地裁
熊本県警の男性巡査の自殺は長時間労働が原因だったとして遺族が損害賠償を求めた裁判で、熊本地裁は4日、熊本県に6100万円あまりの支払いを命じる判決を言い渡しました。当直勤務も時間外労働だとする遺族の主張を全面的に認めました。
この裁判は、2017年に24歳で自殺した玉名警察署の元巡査・渡邊崇寿さんの遺族が、長時間労働が自殺の原因として、熊本県に7800万円あまりの賠償を求めているものです。
渡邊さんは、2020年に公務員の労災にあたる「公務災害」と認定されました。この認定を元に、遺族は裁判で亡くなる前5か月の時間外労働が月平均157時間だったと訴えました。一方、県警側は「当直勤務は仮眠時間もあるため時間外労働に算入すべきではない」として月平均100時間を下回っていたと反論。業務が原因で精神障害を発症したとは断定できないと主張していました。
4日の判決で、熊本地裁の品川英基裁判長は、当直勤務の業務対応以外の時間も時間外労働にあたると指摘して業務と自殺との因果関係を認定。「警察の責務の特殊性等を踏まえても、業務の過重性を回避すべきだった」と述べ、県に6100万円あまりの支払いを命じる判決を言い渡しました。
判決の後、会見した原告で渡邊さんの母の美智代さんは、「判決が出て初めて真の名誉が回復されたものだと思っています。胸を張って仏壇の息子崇寿と主人に報告できる内容だった」と話しました。
【スタジオ】
(緒方太郎キャスター)
取材した花木瞳記者とお伝えします。遺族の主張を認める判決が出ましたね。
(花木瞳記者)
法廷で崇寿さんの母の美智代さんは下を向いて唇を噛みしめ、判決が言い渡されると涙をぬぐっていらっしゃいました。遺族の代理人弁護士は判決を次のように評価しています。
■原告側代理人 光永享央弁護士
「全面的に認められた、完全勝訴と言っても過言ではないと思います。当直勤務の労働時間を丸々認めるという、非常に先例的価値のある判断をいただいたというふうに言えます」
(緒方太郎キャスター)
熊本地裁が当直勤務も時間外労働に含まれると判断した点が画期的だということですね。
(花木瞳記者)
崇寿さんが亡くなった当時、県警では当直勤務は仮眠時間を含むため、時間外労働に算入しない「断続的労働」として運用していました。しかし、2020年4月に労働時間に算入される「当番勤務」という扱いに改めました。
(緒方太郎キャスター)
当直勤務の扱いについては各都道府県の条例で定められていますから、この判決をほかの都道府県警がどう受け止めるのか注目されます。
(花木瞳記者)
判決を受けて、県警の松見恵一郎首席監察官は、「判決文を確認し、今後の対応を検討して参ります。お亡くなりになった職員のご冥福をお祈り申し上げるとともに、ご遺族に対しましてはお悔やみ申し上げます」とコメントしています。