【福島第一原発】デブリ除去へ熊本から少しでも貢献したい 高専生の挑戦
2011年3月11日に発生した東日本大震災から14年。
原子力発電所がひとたび事故を起こすとどうなるのか。その恐ろしさを周辺の町が物語っています。
■緒方太郎キャスター
「福島第一原発がある福島県大熊町です。一部の地域では、発災当初からほとんど光景が変わらず手つかずの状況。鉄のバリケードで立ち入りも規制されています」
「廃炉」と呼ばれる福島第一原発の収束作業。完了まで30年近くかかり、世界でも前例のないものと言われています。その解決に挑戦する学生が、実は熊本にいます。熊本高等専門学校のロボット部の学生たちです。
■熊本高専ロボコン部・吉村勇太朗さん(4年)
「僕たちロボコン部が作っているロボットは、置いてあるデブリ、サンプルを回収するために無人で入って行って取って戻ってくるロボットです」
事故を起こした建屋では、棒状の核燃料を冷やせなくなり周りの金属を溶かしながら固まったものがあります。「燃料デブリ」と呼ばれる厄介なものです。燃料デブリは、人が近づくと死にいたるほどの放射線量を放ちます。回収はまさに廃炉作業の本丸。今は遠隔で操るロボットで試験的な取り出しが進められています。
熊本高専は9年前から廃炉作業をテーマにしたロボットコンテストに参加。2024年度は燃料デブリを回収できるロボットという難題に挑みました。
早速、太郎キャスターがそのひとつを見せてもらうと…。
■熊本高専ロボコン部・吉村勇太朗さん
「一回動かしてもいいですか?一回開いて?このようにさっきと形が違うと思うんですけど。置いてあるものを正確に取れるようになっている」
細かい砂利も掴めるという「ロボットハンド」。建屋の中の狭い配管を通れるよう、横幅も50センチ未満に。設計から完成までわずか7か月で手掛けました。さらに、このロボットは。
■熊本高専ロボコン部・財津太一さん(4年)
「がれきが散乱していたり、そもそも想定されている通路に穴があいていたりというのがあるので、ベルトを使って走破性を高める、プラス関節を使って登ったり下ったりをできるようにしてあります」
彼らはロボットを作るにあたってコンテストに出る全国の高専の仲間たちとあらかじめ、福島第一原発の構内を見学。感じ取った思いを斬新なアイデアに繋げています。
■ロボコン部の顧問・高倉 健一郎准教授
「廃炉に携わる原子力の分野で活躍する学生が巣立っていくのはすごく大きな意味がある」
東日本大震災から14年。熊本から思いを届けます。
■熊本高専ロボコン部・財津太一さん
「福島は放射能という一番の障害があって、僕たちが少しでも廃炉に携わることで早く土地を戻せる力になれるなら、できるだけ参加させていただきたい」
【福島・浪江町の請戸小学校から中継】
(緒方太郎キャスター)
回収する燃料デブリの重さは約880トン。去年試験的に初めて遠隔で取り出したのが、大きさ5ミリほど。重さは数グラムなんです。極めて高い放射線量を出すので、慎重に慎重を期して回収作業は続いています。その作業のスピード感の歩幅を少し広くしたい。熊本高専の学生のみなさんはロボットの開発をしています。
浪江町の請戸小学校の2階の教室に移ってきました。こちらは津波の被害を免れ、黒板には町民や、全国から応援にきた人たちのメッセージが書かれています。
大切な人を失った悲しみや、放射線の影響で、帰りたいけど帰れないもどかしさ。そうした複雑な感情が絡み合った福島は、熊本をはじめ全国からの励ましの声に勇気づけられてきました。15年目、熊本高専のチャレンジ精神が福島と熊本をつなげていきます。