【宇宙から】熊本地震のデータを学習した人工衛星が災害時に被害を推定 県とJAXAが協定
6434人が犠牲となった阪神・淡路大震災から17日で30年です。地震が起きた午前5時46分、神戸の街は、静かな祈りに包まれました。
「姉がいなくなって30年も経ったんだなぁ。 歳もとりましたけどね、みんなも。でも、なぜかここに来ると涙が出るんですよね、30年も経っても」
日本中が祈りに包まれた17日、熊本では。
■緒方太郎キャスター
「阪神・淡路大震災の発生から30年です。この日に合わせ、きょう多くの報道陣が集まる中、ある協定が結ばれます」
2016年に熊本地震を経験した熊本県が協定を結んだ相手は、宇宙航空研究開発機構・JAXAです。
■JAXA第一宇宙技術部門長 瀧口太さん
「阪神・淡路大震災から30年という大事な節目の時に、重要な被災データをJAXAがお預かりさせていただきまして、解析の質の向上をやらせていただけるということでありがたく思っております」
JAXAは、災害が起きた際に人工衛星から被災地の撮影をしています。今回の協定で、熊本県はJAXAに熊本地震で被災した家屋の被害に関するデータを提供します。16市町村が判定した「全壊」や「大規模半壊」など20万件のデータを人工衛星に「学習」させます。
そうすることで、新たな災害が起きた際、どこで被害が大きいのかを人工衛星がすぐに推定できるといいます。
■JAXA第一宇宙技術部門 川北史朗さん
「どこで被害があるか、集中しているか、なさそうか、対応する方の優先度を、まずは色々とサポートできるんじゃないか」
この協定に期待しているのが、熊本地震で被災した県民です。
■甲佐町の菊農家 作本浩志さん(44)
「結構な被害が大きかったんですけど、行政が把握して動き出すまで1週間~2週間近く経過したと思うんですよね」
甲佐町で菊を育てる作本浩志さんは、熊本地震で自宅や作業場が全壊しました。同じ地区にある住宅の多くが全壊しましたが、発災直後は情報が錯そうし、行政の支援がほとんど無かったといいます。
■甲佐町の菊農家 作本浩志さん(44)
「自治体が把握している状況と、実際に起きている状況って若干違う可能性があると思うんですよ。その差が少しでも埋まれば、1時間でも1分でも支援の要請、実行につながるんじゃないか」
阪神・淡路大震災から30年。助けが必要な地域や人をすぐに判断できる社会へ、熊本から一歩を踏み出します。
■熊本県危機管理監 橋本誠也さん
「被害の救助・救援を取りこぼすことなく、的確に対応することができるということなので、そういった意味でもプログラムの意義は大きいなと思っています」
【スタジオ】
今回の協定は、南海トラフ地震のリスクが高まっている中、熊本地震のデータをもとに人工衛星がすぐに被災地の全容をとらえるという画期的なものです。実用化には数年かかる見通しですが、全国の防災力の向上へ、熊本の教訓が生かされます。