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「東アジアハイテク産業の中心」菊陽町の今後は?"半導体の第一人者"語る展望

2024年5月13日 19:46
「東アジアハイテク産業の中心」菊陽町の今後は?"半導体の第一人者"語る展望
熊本県立大・黒田忠広理事長(右)

“半導体の第一人者”として知られ、4月に熊本県立大学の理事長に就任した黒田忠広さんとお伝えします。

黒田理事長は、東京大学工学部卒業後、東芝で半導体の設計などに従事。退職後はカリフォルニア大学教授などを経て、半導体分野の調査研究などを行う東京大学大学院工学系研究科付属システムデザイン研究センターのセンター長を務めていました。

(緒方太郎キャスター)
TSMCの進出以降、熊本には半導体関連企業などが相次いで進出しています。今の熊本をどのように見られていますか。

(黒田理事長)
TSMC創業者のモリスチャンさんは、2月に行われたJASM第1工場の開所式で、「日本の半導体のルネサンスの始まりだ」と日本の復活・再生へのエールを贈りました。私もTSMCの幹部から「熊本県が行政と民間で力を結集して素晴らしい仕事をしていることを高く評価している」と聞いています。

(緒方キャスター)
こうした中、菊陽町では変化が表れ始めています。

【VTR】
台湾の大手半導体メーカーTSMCの工場がある菊陽町。TSMCの進出以降、関連企業の進出や工場の増設が相次いでいます。

近くの駅にも変化が。JR豊肥線の原水駅です。朝の通勤時間帯、列車からは多くの人たちが。TSMC近くにあり企業が集まる「セミコンテクノパーク」行きの通勤バスに乗り込みます。町によりますと、運行が始まった2015年度は利用者は1日平均90人でしたが、今では1500人以上が利用する日もあるといいます。

また、交通渋滞の解消に向け、県道では多車線化の工事が行われるほか、JR豊肥線には2027年度に新しい駅の開業が予定されています。

さらに、新たな動きも。町は原水駅と開業予定の新しい駅付近の沿線北側の約70ヘクタールで、大規模な土地区画整理事業を行う方針です。計画しているのは、「知の集積エリア」の整備です。

■菊陽町 吉本孝寿町長(「吉」の字は「土の下に口」)
「ここでは従来の土地区画整理のような住宅地メインではなく、JASMが立地する町として、商業施設やホテルマンションのほか、大学や企業の研究サテライト施設の誘致など知の集積を図り先進的な町づくりをしたい」

区画整理事業では、所有者がいる土地に町が道路や上下水道などのインフラを整備。大学や企業の研究施設のほか、商業施設やホテル、マンションなどを誘致し、交流人口の増加を目指します。

一方、このエリアは、農地などを守るため開発が制限される市街化調整区域です。町は店舗などを建設できる市街化区域に編入する都市計画の決定をする予定です。地権者への説明を行い、2028年度からの事業開始を目指します。

■菊陽町 吉本孝寿町長
「70ヘクタールの区画整理事業をどのようにするのかが、今後の菊陽町を左右すると思うので、若い方々もご年配の方々も、全国的にも世界的に注目される町づくりをしていこうと思っている」

【スタジオ】
(緒方キャスター)
こちらが、菊陽町が計画している「知の集積」エリアです。改めて見ると、TSMCの工場やセミコンテクノパークからも近く、JR豊肥線の沿線ということでアクセスも良い地域だと感じます。こうした場所に大学や企業の研究機関を集積することについて黒田理事長はどう考えますか?

(黒田理事長)
半導体は先端技術です。研究開発を継続することが極めて重要です。研究は学術の積み重ねですから、学術を創出し、蓄積する大学がなくてはなりません。また半導体の技術は多様です。技術は人に宿りますから、多様な人材が必要です。人材を育成するのは大学ですから、この観点でも大学の存在は欠かせません。世界の半導体拠点には必ず優れた大学が存在します。菊陽町に大学サテライト施設を集積することは、くまもと新時代の継続的な発展に欠かせません。

(畑中香保里キャスター)
今、黒田理事長から多様な人材が必要だというお話がありました。熊本大学では、半導体関連の人材育成につなげようと、来年度から新たに大学院に「自然科学教育部半導体・情報数理専攻」を設置すると発表しました。熊本大学をはじめ、県内の大学や高校で活発化する人材育成の動きについて、黒田理事長はどのようにお考えですか?

(黒田理事長)
人材を奪いあうのではなく、人材を増やす努力を、九州が一体となって行う体制が重要です。熊本はトップランナーですから、全国との連携も重要です。熊本県は東京大学と地域連携協定を締結しました。私はこの取り組みを両サイドから支援したいと思います。さらに視野を広げれば、熊本から1500km圏内にアジアのハイテク産業の主力拠点が全て収まります。熊本は東アジアのハイテク産業地図の中心に位置します。世界の頭脳を熊本に惹きつけること。そのためには、人々を惹きつける魅力ある都市づくりが重要です。半導体人材への投資は、結局、都市づくりに帰着します。

(緒方キャスター)
最後に黒田理事長、TSMCの第3工場の進出について、その場所はどこになるのか。そして海外からのさらなる進出の可能性はいかがでしょうか。

(黒田理事長)
第2工場がどういうパフォーマンスを出すか次第だと思います。
みなさん大いに期待していいんじゃないでしょうか。
TSMCを中心として世界中の優れた企業が熊本を目指して集まってくる。
私たちはそれをどう受け止めるかというのが大切だと思います。

(緒方キャスター)
熊本県立大学の黒田理事長とお伝えしました。お忙しい中ありがとうございました。