富山県民の続けていきたい文化…実施は減少傾向 小学校の立山登山
8月11日は山の日です。
立山登山で雄山山頂を目指す立山町の小学校の子ども達を同行取材しました。
立山登山は、以前は県内の半分以上の小学校で行われていましたが、近年は、実施する学校が減少しています。背景には何があるのか。小丸記者のリポートです。
「めっちゃ急」
「何これ」
「はー」
「疲れた」
梅雨明けが発表された8月1日。青空が広がる中、標高3003メートルの雄山山頂を目指したのは、地元・立山小学校の5・6年生、26人です。
「きついです」
Qこれからもっときつくなるけど行けそう
「多分行けます」
小学校の立山登山は、夏の恒例行事として富山市など多くの小学校で行われてきました。
立山の自然や歴史に触れてもらおうと立山町は町内の小学校の登山について、児童1人あたり、交通費は自己負担が2000円ほどになるように補助しているほか、宿泊費も最大で8000円、補助しています。
2024年、立山町の小学校は6校すべてが登山を行いました。
「2705メートル」
「ここからが急だなあ」
室堂を出発しておよそ1時間。
標高2705メートルの一ノ越に到着すると、遥かなたには富士山の姿が。
「めちゃ遠いのに見えてびっくりした」
ここから雄山山頂までは足場の悪い急斜面が続きます。
この日、子どもたちのガイドを務めたのは、富山県民としては初めてエベレストに登頂した佐伯知彦さんです。
佐伯知彦さん
「ここからが本番だと思ってください」
雄山を目指したのはほとんどの児童が初めて。手も使い、一歩ずつ慎重にあゆみを進めます。
雲を見下ろし、遠くには槍ヶ岳や穂高連峰も見えました。
「神秘的」
5年担任 細川宙希先生
「目標はみんなで登頂すること、それですね、で帰りに関してはけがなく」
頂上が近づくにつれて子どもたちの疲れが増してきました。
休憩中には、6年生が元気のない5年生の背中を摩り、男子が苦しそうな女子のリュックを持って登る姿も。
山頂まではもう一息。
「着いたぞー」
「やったぜー」
室堂を出発して2時間30分。児童26人全員が雄山山頂にたどり着きました。
「簡単かと思っていたけど道が長くてとても大変でした」
「疲れました」
「苦労したかいがありました」
「3000メートルを超えるような高い山に登れて、やっぱり達成感があふれていて、すごく気分がいいです」
6年担任 滝脇裕哉先生
「地元の子どもたちでもあるので、実際に立山に登って、自然とか歴史を肌で感じ取って学習できたらいいなと思います」
佐伯知彦さん
「無事登頂したときの達成感は、こういうのはあまり普段の生活では味わえないような部分かなと思いますので、とても大事なことかなと思いますけども」
一方で、学校登山は子ども達の体力や天候の悪化への備えなど安全面で様々な配慮が必要です。
一般に、準備も含めて教員の負担は大きく、立山町は補助が充実していますが交通費や宿泊費は保護者にとって大きな負担となります。
小学校の立山登山は近年、状況が一変しました。
2016年には県内の小学校188校のうち103校で立山登山が行われていました。
しかし新型コロナウイルスの感染拡大で2020年にはわずか7校にまで激減。
再開する動きは広がっていますが、2022年は22校で、コロナ禍前の4分の1ほどにとどまっています。
立山登山を取り止める理由としては教員の働き方改革が考えられるほか、全員が無理なく活動できる行事に見直したとする学校や、天候に左右されない施設での宿泊学習に変更したとする学校がありました。
佐伯知彦さん
「富山県人にとっては、だいたいどこに住んでいても、立山というのは見えますし、そこに登ったんだという経験は、すごく今後生きてくると思いますので、この多感な小学生の高学年の時に、挑むというのは、非常に意味があると思いますし、できれば続けてきたい文化だなと思います」
立山町の子ども達にとっては地元の大自然の雄大さを知るいい機会だったでしょうね。
その一方で、ひとりひとりの体力や関心に合わせた行事を求める声もあって、各学校で、どんな行事を行っていくか模索が続いています。