【解説】田畑議員への自民党県連の対応 理由と背景は
神林記者)厳しい処分を求める意見が相次ぎました。しかし田畑議員は議員辞職や自ら離党する意思は示さなかったということです。
■現職優先のルールに地元から「待った」かける 自民党富山県連の対応の背景
自民党の国会議員に対する処分は、除名が最も重い処分で、離党勧告、党員資格停止、選挙における非公認、など8段階あります。しかし、これらの処分は自民党本部の党紀委員会が決めるもので、県連では決定できません。
県連の宮本幹事長は今月8日、党本部で森山幹事長と面会しましたが、党本部は、今回の無断・架空党員登録問題は党紀委員会に諮るような重大事案でも、刑事事案でもないという見解を示したということです。
党本部は田畑議員の処分に前向きではなく、森山幹事長は「県連として対応してもらいたい」としていました。
上野)つまり、県連は事態を重く見ている一方、自民党本部は地元の問題は地元で対応してほしいと県連にゆだねる姿勢だったということですね。
神林)田畑議員は今回の党員登録問題だけでなく、これまで、いわゆる統一教会との関わりや、派閥の政治資金パーティーの裏金事件、さらには自らの政治資金パーティーの案内状に「入金のみ」と記載していた問題など、様々な疑惑が相次ぎました。
きょうの決定の背景には、疑惑の絶えない田畑議員に対し、不信感が日に日に膨れ上がっていったことがあります。
県連は直接、処分を決めることはできないものの、1区の支部長を空席のままとし、地元で選ぶことを、党本部に承諾してもらうという「落としどころ」を見出したと言えます。
県連は、党員や有権者の不信感を重く受け止めており、次の衆院選の候補者が田畑議員のままでは勝てない恐れがあるとみて「現職優先」という党のルールに、地元として待ったをかけた形です。
■選挙区支部長に不選任 今後どんな影響が
上野)選挙区支部長に選ばれないと、どのような影響が今後あるのでしょうか。
神林)まず、自民党は各選挙区の支部長を公認候補とするルールですので、支部長に選ばれなければ次の衆議院選挙で党の公認が得られません。
さらに政党支部として受け取っていた党からの政党交付金や企業献金にも影響が出ます。政治資金収支報告書によると、去年は1区支部の政党交付金は1200万円、企業献金はおよそ1800万円の収入があったとされていますが、これを田畑議員が支部長として使うことはできなくなります。
また田畑議員は、きょう付けで県連の常任顧問を解任されました。富山市連の常任顧問も、あさっての会合で外れる見通しです。
これで党の決定機関や公式行事にも出席できなくなるため「離党に等しい重い処分」と言えます。
上野)次の衆議院選挙はどうなりますか。
神林)衆院選の候補者は「現職優先」というルールにとらわれず、県連や市連は新たな候補者選びに動き出すことになります。
田畑議員は今後、地元の同意が得られない限り、自民党からの出馬ができません。そして県連は、支部長の選考に田畑議員が含まれるかどうかは「有権者や党員に対して説明責任をどういう形で尽くすのか次第」だとしました。
また、今年10月の衆院選で田畑議員を候補者として擁立した市連や県連の責任を問う声もあがっています。
KNBを含む県内報道機関は田畑議員に対し、再度会見を開くよう要請していますが、回答期限を過ぎても未だに回答はありません。田畑議員には、県民の納得できる説明をしっかり尽くすことが、政治家としてまずは必要な責任だと思います。