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黒部峡谷鉄道全通とキャニオンルート一般開放を今年は断念 地震による落石被害のため

2024年5月27日 20:18
黒部峡谷鉄道全通とキャニオンルート一般開放を今年は断念 地震による落石被害のため
黒部峡谷トロッコ電車の今シーズンの全線開通断念を、27日、黒部峡谷鉄道が正式に発表しました。開業以来初めてのことです。

能登半島地震による落石被害が想定以上に大きいためで、全線での運行再開のめどは立っていません。

これを受け富山県は、準備を進めていた「黒部宇奈月キャニオンルート」の今年の一般開放を見送りました。

黒部峡谷鉄道 青島郁男取締役総務部長 「落石対策に、当初見込み以上の時間を要することとなり、2024年シーズンは全線開通ができない状況となりました」

トロッコ電車の愛称で知られる黒部峡谷鉄道は、能登半島地震で宇奈月駅からおよそ14キロ上流にある鐘釣橋が落石の被害を受けました。

当初会社は今年10月1日ごろの全線開通を目指していましたが、今年の全線開通を断念すると27日に発表しました。

地震による揺れで、橋周辺の山の斜面などの損傷が想定以上だったことが理由です。

落石は、鐘釣橋から300メートルほどの高さの山の斜面で発生したもので、当初は山頂付近に見つかった2つの亀裂を接着して固定する工事を行う予定でした。

しかし4月の調査で、亀裂に挟まれる形で高さ12メートル、重さおよそ250トンの岩の塊がずれていることが新たにわかりました。

亀裂をつなぐには岩の塊を火薬で破壊して谷に落とす作業などが新たに必要で、当初の見込み以上に時間がかかると判断したということです。

関西電力再生可能エネルギー事業本部 黒部川水力センター 水田潤一さん「そのまま岩盤に接着することができませんので、これを除去するという工事が1つ増えた」

トロッコ電車がシーズンを通して全線開通できないのは初めてで、会社は来年の見通しも現時点では「わからない」としています。

これに伴い県は、新たな観光の目玉に位置付けていた「黒部宇奈月キャニオンルート」も今年の一般開放を見送りました。

キャニオンルートは黒部峡谷トロッコ電車の終点・欅平駅と黒部ダムを結び、工事用のルートを観光用に整備するものです。

地下トンネルや竪坑エレベーターなどを通じて黒部峡谷の電源開発の歴史を知ることができ、当初は今年6月に一般開放される予定でした。

新田知事「期待された皆さんにとても申し訳なく思っています。我々も残念に思っています」

県庁で取材に応じた新田知事は、関西電力の関係者から5月21日に状況説明を受けたと明らかにしました。

県によりますと、キャニオンルート一般開放中止による今シーズンの経済損失はおよそ10億円と試算されます。

新田知事は、今後の運行開始時期は見通せないとする一方、「時間ができるので土産の充実やガイドの育成に磨きをかけたい」と説明しました。
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