能登半島地震から半年 富山湾で“異変” 記録的な不漁続く
エブリィでは今週、発生から半年が経った能登半島地震についてシリーズでお伝えしています。4日は、富山湾の“異変”です。地震から半年が経った今も海の幸の記録的な不漁が続いていて、最盛期を迎えるはずだったシロエビとバイ貝の漁業関係者は不安を募らせています。
透明感のある淡いピンク色。“富山湾の宝石”と呼ばれるシロエビは、毎年7月に漁の最盛期を迎えます。射水市の新湊漁港では例年、たくさんのシロエビが競りにかけられますが…
6月21日、並べられたのは、かご6杯だけ。重さはおよそ150キロでした。
正㐂丸 野口和宏船長
「シロエビ獲ってる者にしてみたら、こんなんじゃ話にならないですね。年上の船頭の方に聞くと、『こんなこと経験したことない』」
新湊でシロエビ漁を続けて17年、正㐂丸の野口和宏船長です。
競りのおよそ2時間半前。野口さんは5人の乗組員と共に、海に出ていました。シロエビが住むのは、富山湾特有の「あいがめ」と呼ばれる谷の中間の層。網を袋状にして沈め、船でゆっくりと引っ張っていく「かけ回し」と呼ばれる漁法でとります。
出港からおよそ2時間。網を引き揚げると…
正㐂丸乗組員 滝和紀さん
「(網にシロエビが)割とおる感じする。下のオレンジ色のがシロエビながよ」
海から姿を現したのは、オレンジ色に膨らんだ網。しかし、引き揚げてみると中には大量のクラゲが…選別していくと、シロエビはあまり入っていませんでした。
正㐂丸乗組員 滝和紀さん
「(カゴに)1杯半ぐらいかね。多い時なら(1日で)15杯とか20杯とかとれるのに」
正㐂丸のこの日の水揚げはカゴに1杯と3分の1。重さにして40キロでした。
正㐂丸乗組員 滝和紀さん
「でも(きょうは)最近にしたらとれとる方」
一方、無線でやりとりしている仲間の船は…
『10キロやっとかっとやぜ』
「10キロ!?」
仲買人が待つ漁港に戻ると、競りがはじまります。漁獲量が少ないため浜値は平常時のおよそ4倍に。競りはわずか1分で終わりました。
正㐂丸 野口和宏船長
「(浜値が)あんまり高ければ、漁師が喜ぶかっていうとまた別問題ですね。適正な値段って言ったら変ですけど、ある程度の値段に落ち着かないと、市場に出ても高いままですからね。それはちょっと、あんまりおもしろくない。見ての通り従業員乗ってるんで。従業員の給料(を支払う)って考えるとやっぱり不安っていうか、心配にはなりますよね」
4月1日に解禁されたシロエビ漁。それから2週間余りで獲れたのは去年の1日の水揚げ量にも満たない2894キロでした。漁協は4月下旬から20日間の休漁を決定し、漁が再開した今でも、過去10年間で最も少ない水準となっています。
記録的な不漁は能登半島地震と関連があるのか。
研究機関も調査に乗り出しています。5月に富山大学などが行った海洋調査では、富山湾の海底で発生した地すべりなどによって、新しい地層が堆積していることがわかりました。泥による濁りはこれまでより数倍高く、酸素の濃度は大きく低下していて、調査した教授らは海底地すべりなどの影響でシロエビなどの生息環境が悪化し、海洋生物が移動した可能性があるとみています。
新湊漁港ではほかに、ベニズワイガニや万葉かれいも記録的な不漁となっています。
富山湾で続く“異変”。その影響は魚津市にも。漁港のそばにある「海の駅蜃気楼」の食堂は、夏に漁の最盛期を迎えるある味覚がとれないため打撃を受けています。
喜見城 河原畑靖店長
「お客様がバイ飯食べに来たのに無いということで、がっかりされた」
名物の「魚津バイ飯」に使われている、バイ貝。元日の地震以降、水揚げが少なくなっていて、1月から6月まではバイ飯の販売も中止していました。
今年1月から5月までの県内のバイ貝の漁獲量は10.4トン。過去10年の平均の3分の1ほどです。
栄進丸 小森富雄船長
「こういうこと今までないもんやからさ」
魚津市の小森富雄さん。この道60年の漁師です。
バイ貝は水深800メートルから1000メートルの海底にエサをつけた専用のカゴを沈めてとります。能登沖で操業していた小森さんは、地震によってロープに付けていたバイかごおよそ400個を失いました。
栄進丸 小森富雄船長
「ロープ見つからんがです。ロープとか“かご”とか、見つからんがいくつもあって」
小森さんは、地震から半年経った今も鉄柱を海底に沈めて引きずって、流された仕掛けを探しています。これまで台風などでロープが切れた時には見つけることができましたが…
栄進丸 小森富雄船長
「どこやってでも引っかからんがやにけね、細かくやっとるんやけど…。埋まっとるんやないかな。それとも転がって、どこか行ってしまったのか…広くやっとるんやけど、なーん反応ないもんやから。商売せんと、探しているもんやから、本当に倒れにかかっています」
そしてバイ貝も、地震による海底地滑りの影響が懸念されています。
栄進丸 小森富雄船長
「このくらい入れば大漁やね。入らんときは1粒2粒しか入らん。今はそれこそ、5~6粒くらいしか入ってない」
魚津漁協の競りです。
「はい1万5000、16、17、はい!18、2万円はヤマサ!」
この日は船3隻で水揚げがありましたが、やはり少なく、高値で取り引きされました。
仲買人
「高かった。値段がえらい高かった。(大きい刺身向け)1万8000円」
Q.普通ならいくら?
「1万円。ハハハ…(細かいバイ飯向け)これで6000円」
Q.いつもなら?
「4000円から5000円の間。2割(高)やちゃね」
ことし1月からバイ飯の販売を中止していた食堂では、6月22日にようやく販売を再開。いまのところ値段は据え置いていますが、数量限定の販売です。
客
「楽しみに待っていました。おいしいです。すごい歯ごたえ」
喜見城 河原畑靖店長
「この後、入ってくるこないは自然状況によって変わってきますので、こっちで太刀打ちできることじゃないですので。だからいつ止まるかという不安はもちろん、常にありますし」
夏はバイ貝の漁の最盛期。小森さんは仕掛けを探しながら操業を続けます。
栄進丸 小森富雄船長
「不安やね、やっぱり漁あってこその漁師やからさ。(仕掛けが)早く見つかってほしいね」
透明感のある淡いピンク色。“富山湾の宝石”と呼ばれるシロエビは、毎年7月に漁の最盛期を迎えます。射水市の新湊漁港では例年、たくさんのシロエビが競りにかけられますが…
6月21日、並べられたのは、かご6杯だけ。重さはおよそ150キロでした。
正㐂丸 野口和宏船長
「シロエビ獲ってる者にしてみたら、こんなんじゃ話にならないですね。年上の船頭の方に聞くと、『こんなこと経験したことない』」
新湊でシロエビ漁を続けて17年、正㐂丸の野口和宏船長です。
競りのおよそ2時間半前。野口さんは5人の乗組員と共に、海に出ていました。シロエビが住むのは、富山湾特有の「あいがめ」と呼ばれる谷の中間の層。網を袋状にして沈め、船でゆっくりと引っ張っていく「かけ回し」と呼ばれる漁法でとります。
出港からおよそ2時間。網を引き揚げると…
正㐂丸乗組員 滝和紀さん
「(網にシロエビが)割とおる感じする。下のオレンジ色のがシロエビながよ」
海から姿を現したのは、オレンジ色に膨らんだ網。しかし、引き揚げてみると中には大量のクラゲが…選別していくと、シロエビはあまり入っていませんでした。
正㐂丸乗組員 滝和紀さん
「(カゴに)1杯半ぐらいかね。多い時なら(1日で)15杯とか20杯とかとれるのに」
正㐂丸のこの日の水揚げはカゴに1杯と3分の1。重さにして40キロでした。
正㐂丸乗組員 滝和紀さん
「でも(きょうは)最近にしたらとれとる方」
一方、無線でやりとりしている仲間の船は…
『10キロやっとかっとやぜ』
「10キロ!?」
仲買人が待つ漁港に戻ると、競りがはじまります。漁獲量が少ないため浜値は平常時のおよそ4倍に。競りはわずか1分で終わりました。
正㐂丸 野口和宏船長
「(浜値が)あんまり高ければ、漁師が喜ぶかっていうとまた別問題ですね。適正な値段って言ったら変ですけど、ある程度の値段に落ち着かないと、市場に出ても高いままですからね。それはちょっと、あんまりおもしろくない。見ての通り従業員乗ってるんで。従業員の給料(を支払う)って考えるとやっぱり不安っていうか、心配にはなりますよね」
4月1日に解禁されたシロエビ漁。それから2週間余りで獲れたのは去年の1日の水揚げ量にも満たない2894キロでした。漁協は4月下旬から20日間の休漁を決定し、漁が再開した今でも、過去10年間で最も少ない水準となっています。
記録的な不漁は能登半島地震と関連があるのか。
研究機関も調査に乗り出しています。5月に富山大学などが行った海洋調査では、富山湾の海底で発生した地すべりなどによって、新しい地層が堆積していることがわかりました。泥による濁りはこれまでより数倍高く、酸素の濃度は大きく低下していて、調査した教授らは海底地すべりなどの影響でシロエビなどの生息環境が悪化し、海洋生物が移動した可能性があるとみています。
新湊漁港ではほかに、ベニズワイガニや万葉かれいも記録的な不漁となっています。
富山湾で続く“異変”。その影響は魚津市にも。漁港のそばにある「海の駅蜃気楼」の食堂は、夏に漁の最盛期を迎えるある味覚がとれないため打撃を受けています。
喜見城 河原畑靖店長
「お客様がバイ飯食べに来たのに無いということで、がっかりされた」
名物の「魚津バイ飯」に使われている、バイ貝。元日の地震以降、水揚げが少なくなっていて、1月から6月まではバイ飯の販売も中止していました。
今年1月から5月までの県内のバイ貝の漁獲量は10.4トン。過去10年の平均の3分の1ほどです。
栄進丸 小森富雄船長
「こういうこと今までないもんやからさ」
魚津市の小森富雄さん。この道60年の漁師です。
バイ貝は水深800メートルから1000メートルの海底にエサをつけた専用のカゴを沈めてとります。能登沖で操業していた小森さんは、地震によってロープに付けていたバイかごおよそ400個を失いました。
栄進丸 小森富雄船長
「ロープ見つからんがです。ロープとか“かご”とか、見つからんがいくつもあって」
小森さんは、地震から半年経った今も鉄柱を海底に沈めて引きずって、流された仕掛けを探しています。これまで台風などでロープが切れた時には見つけることができましたが…
栄進丸 小森富雄船長
「どこやってでも引っかからんがやにけね、細かくやっとるんやけど…。埋まっとるんやないかな。それとも転がって、どこか行ってしまったのか…広くやっとるんやけど、なーん反応ないもんやから。商売せんと、探しているもんやから、本当に倒れにかかっています」
そしてバイ貝も、地震による海底地滑りの影響が懸念されています。
栄進丸 小森富雄船長
「このくらい入れば大漁やね。入らんときは1粒2粒しか入らん。今はそれこそ、5~6粒くらいしか入ってない」
魚津漁協の競りです。
「はい1万5000、16、17、はい!18、2万円はヤマサ!」
この日は船3隻で水揚げがありましたが、やはり少なく、高値で取り引きされました。
仲買人
「高かった。値段がえらい高かった。(大きい刺身向け)1万8000円」
Q.普通ならいくら?
「1万円。ハハハ…(細かいバイ飯向け)これで6000円」
Q.いつもなら?
「4000円から5000円の間。2割(高)やちゃね」
ことし1月からバイ飯の販売を中止していた食堂では、6月22日にようやく販売を再開。いまのところ値段は据え置いていますが、数量限定の販売です。
客
「楽しみに待っていました。おいしいです。すごい歯ごたえ」
喜見城 河原畑靖店長
「この後、入ってくるこないは自然状況によって変わってきますので、こっちで太刀打ちできることじゃないですので。だからいつ止まるかという不安はもちろん、常にありますし」
夏はバイ貝の漁の最盛期。小森さんは仕掛けを探しながら操業を続けます。
栄進丸 小森富雄船長
「不安やね、やっぱり漁あってこその漁師やからさ。(仕掛けが)早く見つかってほしいね」