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【解説】石川県の最低賃金 過去最大上げ幅が選挙の争点… 野口さんの目からウロコ

2024年10月15日 19:18
【解説】石川県の最低賃金 過去最大上げ幅が選挙の争点… 野口さんの目からウロコ
北國新聞論説委員・野口強さん:
選挙戦、初日からボルテージが上がっていますね。上がると言えば10月に入って、物の値段も一段と上がりました。
それに対応する形で5日から、労働者を対象とする最低賃金が引き上げられました。
石川県では、時給で51円増えて984円と過去最大の上げ幅です。更なるアップを求める声は大きく、選挙でも重要な争点になっています。

きょうのテーマは、こちら。
「時給51円アップ負担は軽くなるか」

市川 栞キャスター:
最低賃金は、アルバイトやパートも含めて、全ての労働者に適用される時給の最低減の額ですよね。

野口さん:
国の審議会で決めた目安額をもとに、都道府県ごとの審議会で話し合い、金額を決める。経済情勢などを考慮して1年ごとに改定されます。

市川キャスター:
ことしは全国平均の時給は、前の年度の1004円から1055円にアップしました。

野口さん:
上げ幅は過去最大で、時給としても過去最高です。
自分のことを言いますが、ウン十年前の学生時代のアルバイトの時給が500円ぐらいでしたから、それから見るとうらやましいほどの高さで、時の流れを感じてしまいます。
同僚の息子さんが、いま東京で学生生活を送っていて、アルバイトが時給1200円で「ちょっと少ない」と言っているそうです。
ちなみに8月の石川県のアルバイト・パートの平均時給は1109円だったので、やはり大都市圏は高いと言えそうですね。

市川さんは、学生時代、アルバイトの時給はどれくらいでしたか?

市川キャスター:
愛知県でアルバイトしていましたが、8年ほど前は繁華街では1200円ほどで近所の田舎のバイト先より300円ほど高かったので、同じ県内でも差があるなと感じていました。

野口さん:
そこで1つ目の、目からウロコです。
「隣より1円でも多く地方間競争し烈」

野口さん:
10月になっても食品などの値上げが続いていますが、今回は、物価高の中で労働者の処遇の改善が強く求められる中での最低賃金の改定。
賃金の多い・少ないが、働き手の確保に影響するため、地方にとっては、よその県より低いと、若者が流出するという心配もあって、各県が競うように金額を上げたという印象があります。
北陸を見ると、大企業が多いと言われる富山県は50円アップの998円。
福井県は、去年は石川より2円低かったんですが、53円上げて、石川と同じ984円に持ってきました。

全国では、都道府県で去年2番目に低い水準だった徳島県は知事の強い意向で、今回84円アップの980円にしたのが目立ちます。
中小企業の多い地方で大幅な賃上げは簡単ではないので、徳島県は中小の事業者に、社員1人に5万円という異例の一時金を出す。

市川キャスター:
それだけ人材獲得に必死なんですね。

野口さん:
県内はどうかというと、賃金を引き上げる企業が事業を拡大するために設備投資をする場合に、国がその費用を補助しているんですが、石川県も国に上乗せして、企業の負担を軽くする支援を始めるそうです。
特に、能登を中心に地震や豪雨で被災して経営が苦しい企業に対しても、立て直す力になるように手厚くフォローしてほしいですね。

そこで2つ目の、目からウロコです。
「1500円の大台ハードル高いが…」

野口さん:
石破総理は、最低賃金の全国平均を2020年代に1500円に引き上げる目標にも意欲を示しています。

市川キャスター:
前の岸田政権では、2030年代の半ばまでに1500円にという目標を掲げていましたが、石破さんは更に短縮して、あと5年ほどで年平均89円引き上げるとしていますね。

野口さん:
実現は非常に厳しいという見方が出ていますが、引き上げを急ぐなら、出す側に対しても異例の支えが必要です。
一方の野党も、大幅な引き上げを唱えていますが、どう実現するのか。
この選挙戦、政治とカネに注目が集まっていますが、同じカネでも、働く人の収入を安定的に増やしていくことも最重要課題です。
賃金を上げるのは民間です。それができる環境を整えるのが政治の役割です。
その覚悟と実行力があるのかどうか。与野党ともに、この選挙戦で示してほしいですね。

市川キャスター:
ありがとうございました。野口さんの目からウロコでした。