【特集】東北大学が“闇バイト”描く模擬裁判「人生はたった一回の検索から狂い始めるかもしれない」
仙台市青葉区にある東北大学川内キャンパス。
日も落ちて冷え込む中、発声練習をしていたのは法学部の学生。
2か月間かけて準備をしてきた模擬裁判の公演が今週末に迫っていた。
東北大学法学部 模擬裁判実行委員長 辻奈々葉さん
「裁判傍聴に行ったり、弁護士から話を聞いて、法律の知識や裁判の様子を再現できるように習得している」
東北大学法学部の模擬裁判は今年で73回目。
歴代、法学部の学生たちは社会的影響の大きい事件をテーマとしてきた。
ここ10年だけを見ても児童虐待、過労死、少年事件介護殺人、いじめ、医療訴訟、違法捜査、障がい者雇用と多岐にわたる。
そして今年は闇バイトをテーマに選んだ。
演目のタイトルは「上澄」学生を喰らう犯罪。
上澄みとは犯罪の実行役だ。
実行役ばかりが逮捕され根本から解決することが難しい「闇バイト」の実態を表した。
「それでは、開廷します。氏名と生年月日を教えてください。」
犯罪の実行者を募る闇バイトの危険性を学生たちも身近に感じている。
東北大学法学部 模擬裁判実行委員長辻奈々葉さん
「1日何十万とか、仕事内容が『~を探すだけ』『~を運ぶだけ』という文言があるのが多い」
実際に事件は身近なところで起こった。
今月、仙台市内を拠点に特殊詐欺を行っていた疑いで20代から40代の男女30人のグループが逮捕。
メンバーの一部は「闇バイト」で集められたと見られている。
法学部の学生たちは模擬裁判を通してその危険性をリアルに伝えたいと練習に取り組んでいる。
「何だっていいでしょあなたに話す筋合いないから」
主人公は1人暮らしをしている女子大学生の設定だ。
主人公を演じる 杉田美希さん
「誰でも手を染めちゃう怖さとか、伝えられたらと思う」
洋服や美容にかけるお金を手に入れたい。
「闇バイト」で依頼されたのはキャッシュカードのすり替え窃盗。
脚本担当 佐野陽祐さん
「闇バイトをしている人は、外から見えなくてやっているかがわからないから孤立してしまう。会話では自然だけど動きでそういう素振りが見えるとかで人が孤立していって仕方ない状況に陥ってしまうようにしたく」
学生たちが模擬裁判を通して伝えたい。
人生はたった一回の検索から狂い始めるかもしれない。
上澄みの人間ばかりつかまる闇バイトという社会問題に対し司法がどう向き合うべきなのかだと言う。
顔も名前も知らぬ何者かの指示に彼女はただ従った。
法学部の学生たちが演じる模擬裁判は、今週末、開廷だ。
「判決を言い渡します。主文…」