ホタルの生息地減少 住む環境を守るには?「ホタルの光を後世に」 保全活動続ける人々《長崎》
初夏の風物詩「ホタル」。
環境や生態系の変化で生息数が減る地域もあるなかその幻想的な光を後世に残そうと活動する人たちがいます。
暗闇に浮かび上がる淡い光。やさしくゆっくりと 光ります。
今年も“ホタル”が舞う季節がやってきました。
▼ “種ボタル” を飼育し放流 ホタルを守る男性
(ながさきホタルの会 髙田勝行さん)
「向こう。あそこ光っているでしょ」
ながさきホタルの会 理事の髙田 勝行さん 79歳。
自宅近くの宮崎川では、4月下旬からホタルが飛び始めました。
(ながさきホタルの会 髙田勝行さん)
「やはり癒し。また忙しくなったな。種ボタルとって飼育して」
会に入りホタルの保全活動を始めて20年。毎年、この時期は…
(ながさきホタルの会 髙田勝行さん)
「この黄色いやつが卵」
自宅の一角で、“ホタルの飼育”を始めます。
(ながさきホタルの会 髙田勝行さん)
「これがふ化する時は黒くなって、この中に落ちる。ちょうどこれで15日くらい」
5月の初めに宮崎川から “種ボタル” を採取。
その後、卵がふ化してサナギになる次の春まで、飼育します。
一年間のほとんどをホタルとともに過ごす日々は、15年近くになりました。
所属する「ながさきホタルの会」は、長崎市内各地の川で、定期的に清掃活動を行います。
また 市のイベントにも出展。見て、触れて、知ってもらうことで、ホタルの “住む環境” や “生き物の命” を大切にしてもらおうと取り組んでいます。
▼子どもたちと支援に向き合い、未来につなぐ
こうした「ホタルを守る活動」は、県内のほかの場所でも。
(佐々町ホタルを守り育てる会 濵野 亙 代表)
「このままだと大雨の時に流れていくから」
市瀬川が流れる佐々町の皿山公園。
濵野 亙さんもホタルの保全活動を続けています。
この日は、佐々小学校の子どもたちと川をきれいに。
ゴミなどを集め、ホタルのエサとなるカワニナやタニシのことなどを伝えながら、一緒に放流します。
(佐々町ホタルを守り育てる会 濵野 亙 代表)
「5年生の子どもに手伝ってもらって今3回目だがやってもらっている。これがずっと続いていってくれれば、子どもたちが大人になった時に子どもにもいろいろ教えてくれるのでは。たくさん増やすのは難しいが減らない努力はしていきたい」
ホタルを専門的に調べる研究者も-。
長崎大学 教育学部の大庭 伸也 准教授は、県の内外を回り、ホタルの光り方=「明滅」について研究しています。
(長崎大学教育学部 大庭伸也 准教授)
「五島の福江島で2016年5月にゲンジボタルを見た時に特殊な光り方をしていると気づいて、具体的に言うと明滅が早い。それをすごく不思議に思って調査を始めたのがきっかけ」
実際に比較してみると、長崎が2秒に1回光る「西日本型」であるのに対し、五島のホタルは1秒に1回「明滅」していることを発見。
全国で唯一の「明滅」だとして「五島列島型」と名付けました。
大庭准教授はこうした地域特有のホタルを大切にしてほしいと話します。
(長崎大学教育学部 大庭伸也 准教授)
「長崎ではないがそこの固有の遺伝子型ではないものが見つかってきている。別の地域のものを持ってきて離すのがよくない。その場所特有のものがいなくなっちゃう」
この日は、調査のため西海市大瀬戸町へ。
ホタルを見たことがないという研究室の生徒も一緒です。
(長崎大学教育学部 大庭伸也 准教授)
「出ると期待しているがちょっと気温が低いのが気になる」
ホタルは20度前後を好むそうで、気温をチェックしてその時を待ちます。
(長崎大学教育学部 大庭伸也 准教授)
「光った。気のせいかなと思ったが、また一瞬光った」
光り方を動画で撮影し、調査のために網で捕獲。
(長崎大学教育学部 大庭伸也 准教授)
「ゲンジボタルのオス。節が2つ光っている。一匹だとどれくらいばらつきがあるかわからないので。なるべく複数、確保するようにしている」
ホタル数匹、捕獲しました。
(長崎大学教育学部 大庭伸也 准教授)
「これがそのホタル。足を一本もらって遺伝子を調べる」
持ち帰ったホタルは遺伝子を抽出し、どの型に当てはまるのかデータをとっていきます。
(長崎大学教育学部 大庭伸也 准教授)
「その地域のものではないゲンジボタルを離してしまうと、その場所特有のものがいなくなっちゃう。こういうものがいるという環境が大事だと思ってほしい」
▼癒やしの光が絶えないように
ながさきホタルの会の髙田さん、自宅から大きな箱を運んできました。
中には卵からふ化したホタルが。
(ながさきホタルの会 髙田勝行さん)
「幼虫になって初めての旅立ち」
(ながさきホタルの会 髙田 勝行さん)
「おはようございます」
向かったのは長崎市立川原小学校。
毎年 3、4年生を対象にホタルの学習を行っていて、今年3回目の授業です。
(ながさきホタルの会 髙田 勝行さん)
「ほら、ブツブツしているこの幼虫が水の中で生活する」
地域のホタルを守りたい。
髙田さんの思いは子どもたちにも伝わっています。
(児童)
「お菓子のゴミをちゃんと持って帰ろうと思った」
(児童)
「ホタルが元気に過ごせるように育てていきたい」
来年も、その先も癒やしの光が絶えないように。
(ながさきホタルの会 髙田勝行さん)
「今年はおらんダメやったばいとは言えない。だから残してやりたい。できればできる間は(活動を)しようかなと」
それぞれの活動が続いています。
髙田さんは、育てたホタルの幼虫を川に還す活動を毎年行っていて、今、飼育しているホタルは、来年2月ごろに子どもたちと一緒に放流するということです。