「目先の医療費じゃなく根本的な政治決着を」被爆体験者らが国の控訴方針に憤り《長崎》

原告の一部を被爆者と認めた被爆体験者訴訟の長崎地裁の判決について岸田総理は、21日、控訴する考えを示しました。

原告側も控訴する方針で、国の判断に憤りをあらわにしました。

控訴期限を24日に控える中、記者団の取材に応じた岸田総理。

(岸田首相)
「司法判断の根拠に対する考え方が、最高裁で確定した先行訴訟と今回の判決で異なっている。控訴せざるを得ない」

国が定める被爆地域の外で原爆にあった「被爆体験者」ら44人が被爆者健康手帳の交付を求めた裁判では、長崎地裁が9日、一部の地域にいた原告15人を被爆者と認めました。

しかし、国は、2019年までに被爆体験者の敗訴が確定した最高裁判決と「判断が異なる」として「控訴せざるを得ない」と表明。

一方で、被爆体験者への医療費の助成の対象を裁判の原告かにかかわりなく「全員」に拡大し、内容も被爆者と同等にすると明らかにしました。

精神疾患の発症という要件を撤廃し、すべての がんや心臓病、高血圧など幅広い病気について助成の対象とする方針です。

岸田総理に控訴断念を要請していた大石知事、鈴木長崎市長は「苦渋の決断」としつつも国の判断を受け控訴する方針を示しました。

（大石知事）
「控訴断念という結果に至らなかったことについて、心から申し訳なく思っている」

知事、市長は24日、今回の判断に至った経緯や考えについて、原告らに説明する予定です。

「被爆者として認めてほしい」その一心で裁判を戦ってきた原告は…。

（原告団長 岩永 千代子さん）
「お金（の問題）じゃなくて、自分の疾病が原爆のせいだったんだなと、こんなにがんが家族に多いとか白血病とか。それを控訴のは全く不可解」

憤りをあらわにしました。

（原告 山内 武さん）
「（爆心地から）12キロ圏内にいて放射能の影響を受けるようなところにいた。これだけで被爆者じゃないでしょうか」

原告 橋本 募さん（79）
「目先の医療費だけじゃなくて根本的に（法に基づく）『3号被爆者』として認定がほしい。これをもって初めて政治的決着になる」

原告側も敗訴した原告について24日に控訴する方針で今後は、福岡高裁で被爆者認定を巡る裁判が続くことになります。