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踊町も見物客も熱気を帯びたフィナーレ「長崎くんち」 “龍踊”奉納 五嶋町の7か月に密着《長崎》

2024年10月11日 6:45
踊町も見物客も熱気を帯びたフィナーレ「長崎くんち」 “龍踊”奉納 五嶋町の7か月に密着《長崎》

激しい動きと息をのむような静寂で、辰年の諏訪の杜を魅了した五嶋町の『龍踊』。

龍衆、囃子方、総勢110人を超える大所帯で臨んだ 10年ぶりの大舞台。

厳しい稽古に励んできた7か月間です。

(龍衆)
「今までの皆さんの人生の中で、65年間、19年間と、それぞれだと思いますけど、一番濃い5か月にしていきましょう。今から最高の龍踊作り上げるぞ!五島町、おーっ!」

トレーニングが始まったのは、今年3月。

腕立て伏せに、ランニング。当初は苦難の連続でした。

(馬場 祐輔 龍監督)
「お疲れ様でした。えー…うーん…(言葉に詰まる)」

重さ120キロを超える “龍” と向き合う日々。

(指導)
「フラフラするな!」

龍衆は、19歳から65歳までの 総勢62人。

このうち半数以上は新人、34人を迎え入れました。

(山口 俊介 龍衆キャプテン)
「最後縦振りとか、みんな 内、外を、全然意識していない。振るのに精いっぱいで」

(井出 和宏 総監督)
「すべてが 重要なポジション。楽とか簡単なところは ひとつもない」

生きた龍のうねりを表現するために重要なのが「番手」と言われる “ポジション” に合わせた体の使い方。

多くの視線を集める龍踊の顔「龍頭」に、胴くぐりの門の高さを合わせる「七番衆」「八番衆」など、全く違う動きが求められます。

(六番衆 中村 尊さん)
「六番衆は、サポートで少し高くしたほうがいいのか」

ひとつのポジションに割り当てられた5人から8人の番手の絆は、日を追うごとに強くなりました。

近い番手同士で 稽古後に集まり、秘密の特訓も…。

本番直前には、囃子方にすら完全非公開の新しい技にも挑戦。

“心を一つに” 五嶋町の龍踊を進化させます。

7日、諏訪神社にあがった号砲。本番初日の朝は小雨混じりでしたが、予定通り『長崎くんち』が開幕しました。

7つの踊町、すべてが演し物を奉納するそろい踏みの今年。

諏訪の踊り馬場は、熱気に包まれていました。

五嶋町は、朝の奉納でトリを飾ります。

緊張する龍衆たちに贈られたのは『龍のウロコのお守り』。

龍監督の馬場祐輔さんが全員分を手作りしました。

そのお守りを忍ばせ 諏訪の大舞台に臨みます。

(見物客)
「モッテコーイ」

待ちに待った2体の龍の躍動に、長坂から上がる大歓声。

そして、いよいよ大技の登場です。

青龍と白龍が何度も互いをくぐりあう “五嶋町スペシャルG2”。

その名の通り、五嶋町らしいグレートな演技で見事 成功です。

(馬場 祐輔 龍監督)
「さすが!うちの五嶋町龍衆。最高。涙が出そうになった。あと2日もあるのに…」

(井出 和宏 総監督)
「最高。今までで一番いい出来。(G2も)一番上手にできた。やっぱり気持ちが違うのかな。最後まで気を抜かずに一生懸命やるだけ」

8日午前7時半、中日の出発前。

(まちのひと)
「いってらっしゃい、おはよう」

(六番衆 山下 諒将さん)
「声をかけてくれてとても力になった」

新人で六番衆の 山下諒将さん。

普段は、長崎市内の小学校で、3年生の担任を務めています。

自分の姿を通して子どもたちに “元気と憧れ” を届ける龍衆を志しました。

(六番衆 山下 諒将さん)
「あきらめない姿勢とか、(子どもたちが)いろいろなことに挑戦する思いに伝播していけたらいい」

龍の真ん中で、円になった形を保つ要となる六番衆。

“任された番手でなくてはならない龍衆に” と稽古を重ねてきました。

くんち後日には、子どもたちが待つ 小学校に庭先回りへ。

(子どもたち)
「きゃー、やばい」

学校での入場の時、六番衆の山下さんに任されたのは…なんと “龍頭”。

子どもたちから良く見える先頭にと、龍衆たちからの粋な計らいです。

(六番衆 山下 諒将さん)
「(龍頭を)持たせてもらえるとは思わなかったので、びっくりした。すごくうれしい」

(子どもたち)
「やまぴー(先生) がんばれ!」

(子どもたち)
「モッテコーイ、モッテコイ」

(六番衆 山下 諒将さん)
「普段は教壇に立って言葉で伝えているけど、今回は姿でいろいろなことを示せた。子どもたちが一番いい顔をしていたので、自分にできることはできたんじゃないか」

(子どもたち)
「山下先生、ヨイヤー」

前日は雨の中、舞い続け龍には傷みが…。ハードな3日間で龍衆と囃子方たちも満身創痍です。

その疲れを見せず、たくさんの人に笑顔と福を与えました。

(見物客)
「ありがとうございます。うれしい、すごい」

そして、一から五島町公園へ。

10年ぶりの大役を務めあげた出演者たちが、まちに帰ってきました。

(掛け声)
「招宝(チャーパア)、招宝(チャーパア)、招宝(チャーパア)」

最後まで、高く、速く。大観衆の声に応え続け…、

ついに今回のくんちの終わりの時を迎えます。

お互いを称え、疲れ切った身体で抱き合う龍衆。

(井出 和宏 総監督)
「きょうはちょっと、声がきついので、これだけしか言えません。ありがとう」

(馬場 祐輔 龍監督)
「龍衆!子どもたち!よく頑張った」

(山口 俊介 龍衆キャプテン)
「濃い数か月を みんな過ごしたうえでの涙。120点。みんな、よくやった」

(馬場 祐輔 龍監督)
「(10年前の) 足元にも及ばないかなと思っていたけど、急に化けた。すごいよ。高く、速く、荒ぶる龍だった」

龍が次に目を覚ますのは、7年後。

再び月を探すその時まで、眠りにつきます。

(馬場 祐輔 龍監督)
「7年後会うぞ。また」

辰年の長崎くんちを彩った五嶋町の龍踊。

新たな進化を まちの歴史に刻みました。